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シャイニング・ガール   作者: 花奈よりこ
35/59

特別……?


メンバーの人達とも初めてまともにしゃべったんだけど、思ったとおりみんないいヤツら。


そして、なんかみんなイキイキしてるんんだ。


好きなことに夢中になってる姿はやっぱカッコイイよな。


それぞれ個性はバラバラなんだけど、目指すところがみんな一緒だから、ちゃんとひとつにまとまって団結してるってカンジがすごく伝わって。


ひとたび演奏が始まるとビシッときまるんだ。


その音楽が本当に最高で。


ああ、このバンドいいな。


好きだなぁって。


改めて彼らの音楽を目の前で聴いたあたしは、心の底からそう思ったんだ。


で、このバンド。


どんなメンツかというとーーーーー。



まずは、ボーカルをやってるB組の大谷おおたに


一見、なんかガラ悪そうなコワモテなカンジなんだけど、実は優しくて機転のきくいいヤツ。


顔も整った顔立ちで、なかなか男前だと思うよ。


さとみ達が騒いだり、ライブでキャーキャー言われてるのも納得。


そして、ドラムの幹太かんた。D組。


ちょっとガタイのいい体型で、なんか常にニコニコしているカワイイ大きなクマさんみたい。


でも、ひとたびスティックを握ると、見た目とは打って変わってキレのある軽やかなパフォーマンスで観客を魅了するナイスドラマー。


で、ベースを担当してるのがA組の佐々木くん。


黒ぶちのオシャレ眼鏡が、妙に頭脳派くんに見える彼。


なので、みんなは『佐々木』と呼んでるんだけど、あたしはあえて『佐々木くん』と呼ばせていただくよ。


実際、パソコンとかのコンピュータ関係にめちゃめちゃ強いらしい。


それから、桜庭と一緒にギターを担当している、つよぽん。佐々木くんと同じA組。


どことなくふんわりした雰囲気なんだけど、ギターを持つと、スイッチオンで人が変わったようにキリッと凛々しくなるつよぽん。


名前は『つよし』なんだけど、たまにふざけてみんなが『つよぽん』って呼ぶんだって。


なんか性格もふわっとしたカンジだから、あたし的には『つよぽん』の方がなんかしっくりだな。


そして、もう1人のギター。


桜庭亮平ーーーーー。


そんなメンバーで構成されているこのバンド。



バンド名は、〝from here〟。



ここからーーーっていう意味で。


ここから、始まる。


ここから、自分達の音楽を生み出す。


このメンバーで、この瞬間から。


いつまでも、ここからスタートした音楽への夢、想いを忘れることなく、気持ちはいつも、



ここからーーーー。



そんな想いを込めてみんなでつけたんだって。


めちゃくちゃいい名前だ。


あたしは好きだぜ。


そんなカンジで、みんなからいろいろ教えてもらって、たくさんおしゃべりして。


あたしはこのfrom hereのメンバーとすっかり仲良しになったんだ。


みんな気さくですごくいい人達。


楽しい仲間が増えて嬉しい限りだ。


今日ここに来れてホントによかったなぁーなんて思いながら、ふと見ると。



モグモグ。


桜庭がサンドイッチを頬ばっていた。


食べた!


美味しい?美味しい?


他のみんなはうまいって言ってくれたけど、肝心の桜庭からはまだ『うまい』の言葉を聞いていないのだ


ドキドキドキドキ。


あたしが密かに緊張しながらこそっと桜庭を見ていると。


「ーーーうまい」


桜庭がちょっとビックリしたようにボソッと言った。



ぱぁぁ。


あたしの頭上に花が咲いた。



やったぁーーー!



大成功!


桜庭が、あたしの作ったサンドイッチを食べて『うまい』って言ってくれた!


嬉しいっ!


「だろだろっ⁉︎スープも飲んでみてくれよ。コーンのペーストから作ったんだ」


紙コップについだ熱々のコーンスープを、桜庭が飲む。


「うん、これもうまい。立花って意外とちゃんと作れるんだな」


「ちょっと。意外ってなんだよ、意外って」


あたしがじと目で言うと。


「気にすんな。とにかくマジでうまい」


そう言いながら、大きな口でサンドイッチをぱくぱく食べる桜庭。


そんな桜庭の姿が、妙に嬉しい。


いや、とても嬉しい。


あたしの顔も自然とほころぶ。


そんな満ち足りた気持ちででニコニコしていると、ドラムの幹太が言った。



「いいなぁ、桜庭は。こんなカワイイ彼女がいてさぁ。おまけにこんな美味しい手料理の差し入れまで持って来てくれるんだもんなぁ。羨ましい限りだぜ」


カ、カワイイ彼女っ⁉︎


ぼっと火がついたように一気に顔が熱くなった。


あたしってば一気に耳まで熱くなってしまった。


「ち、違うよ!別に彼女ってわけじゃっ……」


あたしが慌てて手を振ると。


「えー?桜庭とひかるちゃんって、つき合ってるんでしょ?」


幹太がキョトンとした顔であたし達を見る。


幹太は知らないのか?


あたしと桜庭のこれまでのいろんな噂。


いや、つき合ってると思ってるってことは当初の噂は知ってるってことだよな。


実はつき合っていないという最新の噂は耳に入っていないのか?


おっとりゆったりした見た目どおり、時間の流れものんびりだな、幹太。


「いや、あのね。それにはいろいろ誤解っていうか……ちょっといろいろあって……」


タジタジしながら、ちらっと桜庭を見ると、桜庭ってば、しらっとした顔でサンドイッチ頬ばっている。


おい、なにひとりでしらっとしてんだよ。


と思わず心の中でツッコむ。


「でも。まぁ、立花さえイヤじゃなかったら、そんなようなもんだよな。桜庭がしゃべる女って、立花くらいだし」


大谷がニヤッとしながら桜庭の背中をバシッと叩いた。


その拍子に、コーンスープを飲んでいた桜庭が、ぶっと吹き出した。


「きったねーなっ。おまえっ」


「飲んでんのに、おまえがいきなり後ろからどつくからだろ!」


「ティッシュ、ティッシュ!」


その一瞬で、やんややんやと大笑いになり。


あたしと桜庭がつき合ってる、つき合ってないという話はいつの間にかお流れになった。



でも、あたしの胸は密かにドキドキ高鳴っていた。


大谷が桜庭に言っていた、あの言葉。


〝桜庭が自分から声かける女子なんて、立花くらいだし〟


確かに。


教室で見る限り、桜庭が自分からクラスの女子に話しかけたりしてる様子はあまり見たことがない。


女子達が桜庭にキャピキャピ話しかけてるのはたまに見かけるけど、でもそれに対しても桜庭はあくまでニュートラルなカンジで、これと言って盛り上がって楽しそうに会話してるってカンジでもないし。


と、すると。


あたしは桜庭にとって、ちょっとだけ〝特別〟とかだったりして……?


ひょーーーっ。


そんなこと!


ぶるぶるっ。


慌てて頭を振る。



あたし……今はこのままでいいって、思ってたけど。


桜庭としゃべったり、一緒にいられるだけでいいって、そう思ってたけど。


やっぱりちょっと望んでいるのかな……。


桜庭にとって、あたしが〝特別〟であってほしいってーーー。


心のどこかで、望んでるのかな。


だって、だって、もしホントにそうだったら。


もし、桜庭があたしのことをちょっとでも特別に思ってくれてるとしたら。


あたし、嬉しくて空を飛んでっちゃうよ。






そして、その日の帰り道。


他のメンバーと別れたあと、途中まで送ると言ってくれた桜庭。


夕暮れの道を2人で並んで歩き出した。


言うまでもなく嬉しいあたし。


ちら。


隣の桜庭を見る。


今日の桜庭のカッコは、膝がほどよく擦り切れていい具合に色落ちしてるジーンズにシンプルな黒のTシャツ。


なんか今日のあたし達のカッコ似てるかも。


そんなささやかなことも嬉しい。


しかし、こうやって改めて並んで歩いてみると、けっこう身長差があるな。


背、高いな。


それに、いつもは制服だから、たまに私服を見るとなんか新鮮でちょっとドキドキしちゃうぜ。



「今日は、差し入れサンキューな。ホントうまかったよ。腹減ってたから、みんなすげー勢いで食ってたな」


ギターをかついだ桜庭が、笑いながらあたしの方を見た。


「みんな喜んで食べてくれてあたしも嬉しかったよ。それにしても、ホント楽しかったー。みんなとも仲良くなれたし」


最高の1日だったなぁー。



また、行きたいなぁ。







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