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シャイニング・ガール   作者: 花奈よりこ
32/59

コール。


「しっかし、ホントよかったよぉー。一時はひかる、どうなっちゃうのかと思ったもん」




次の日の休み時間。


みんなで集まってる中、さとみがあたしの顔を見ながらしみじみ言った。


「なにが?」


「なにが?って。桜庭と席が離れたもんだから。ブルーもブルー、ちょーブルーになってどん底に落ちてたのはどこの誰よ」


有理絵がふざけてポーンと頭を叩いてきた。


「ひかるはホントわかりやすいよねー」


「でも、元気になってよかったよかった」


景子もマヤも笑ってる。


「いやぁ、どうもどうも」


頭をポリポリ。


みんなに心配かけちまったが、もう大丈夫。


アイツ……ミカも本音で話してくれて謝ってくれたし。


あたしのことを本気で応援してくれたし。


そして、桜庭のバンドの練習もあるし!


桜庭のギター姿も久々に見れるし。


美味しい差し入れも持って行けるし。


もう今から楽しみでしょうがないよ。



「でもさ。あの女の言うこと、ホントに信用して大丈夫なわけ?」


さとみが不審そうにあたしを見る。


この前あんなことがあっただけに、みんなやっぱりちょっと心配そうな顔。


「大丈夫!アイツ、ウソ言ってる目じゃなかったもん。確かにひどいことされたけど。それもちゃんと謝ってくれたし。あたしのことも応援してくれたし。ホントはすごくいいヤツなんだと思う」


あたしがうなずきながら言うと。


「ひかるもホントお人好しだよねぇ。あんなことされたのに、『ホントはすごくいいヤツなんだと思う』なんて言えちゃうんだもん」


軽くため息をつくさとみ。


「ホント。まぁ、和解したみたいでよかったけど。でもさ、一応桜庭に確かめた方がいいよ」


そう言うマヤに景子も続く。


「そうだよ。確かめた方がいい!桜庭と話せるチャンスだし、聞いてきな聞いてきなっ」


みんなが端っこのいちばん前の席にいる桜庭の方を見てはやし立てる。



ちら。


桜庭の方を見る。


あ、健太のヤツなんか話しかけてる。


いいなぁ、なに話してんのかなぁ。


あ、後ろ向いた。


こっちを見たわけじゃないのに、なぜかドキンと胸が鳴る。


そして、なんかちょっと眠そうだな。


ほら、あくびした。


ふふふ。


思わず小さく笑う。


そんなあたしの顔を、有理絵が覗き込んできた。


「なんか、すっごい嬉しそうな顔してるんだけど」


ニヤニヤ。


「えっ?そ、そんなことないよっ」


ひええ、そんなに嬉しそうなしまりのない顔をしてたか?


気をつけなきゃ。


「とにかく!今回はホントに間違いないよ。だから桜庭に聞かなくても大丈夫」


あたしはミカのことを信じるよ。


「そっか。ーーーうん。そうだね」


有理絵もみんなも納得した様子でうなずいた。


「だからさ。今度こそ桜庭に内緒で行ってビックリさせてやろうかと思ってさ」


イヒヒヒ。


「いや、わかんないわよ。もしかしたら、桜庭の方から言ってくるかも!『練習、見に来いよ』とかってさ!」


マヤの弾む声。


「キャー!いいな、いいな。そういうの!あ、でもさ。桜庭って、自分から『来て』って言うのとかちょっと苦手そうなカンジもしない?」


さとみの言葉に有理絵もうなずいた。


「わかる。ホントは来てほしいいんだけど、面と向かってはちょっと照れ臭くてて言えない、みたいなさー」



なるほど。


確かに、桜庭ってそういうタイプっぽいなー。


席も離れちゃたし。


差し入れ持って行く約束はしたけど、ちょっと遠慮とかして自分からはなにも言ってこなさそうなカンジ。


席も離れちゃってなかなか話すタイミングもないから尚のことかも。


だけど、ひょっとして。


『今度の日曜、バンドの練習あるから来れたら遊びに来いよ』って言ってきたりして!


ビックリさせて喜ばすのも楽しみだけど、それはそれで、嬉しいかも。


ポポポ。


ほっぺがほんわりあったかくなる。


まぁ、とりあえずはなにも言われてないから。


このままサプライズな方向でいくか。


ああ、楽しみ。


とにかく、早く日曜日になぁれ!






そしてーーーー。



結局、桜庭からはなにも言われないまま、日曜の朝がやってきた。


ちぇ。


桜庭のヤツ、やっぱりなんにも言ってこなかったぜ。


内心、ちょっぴりガッカリ。


まぁ、アイツもけっこうクールなシャイボーイっぽいからな。


こうなったら、桜庭のこと驚かせてうんと喜ばせてやる!


へっへっへ。


じゃじゃん!


既に差し入れに持って行くサンドイッチもスープも完成しているのだ。


ホントはさ、なんか別のモノにしようかとも思ったんだけど、せっかく有理絵達に協力してもらって美味しく作れるようになったサンドイッチとコーンスープだから。


やっぱこれにしよう!って思ってさ。


今回もバッチリ上手にできたぜ。


満足感と達成感いっぱいの中、キッチンで大きなタッパにサンドイッチを詰めていると、ニコニコしながらお母さんがやってきた。



「やっぱりひかるも女の子だったのねぇ。今まで料理なんて全く興味もなかったのに。大好きなボーイフレンドのために、手作りの差し入れを持って行ってあげるなんて。お母さん、嬉しいわぁ」


ボワッ。


あたしの顔が一気に熱くなった。


「べ、べ、別に、ただのクラスメートだよっ」


ホントは好きだけど。


「あー。照れてる、ひかるぅ」


「うるさいなぁ!」


もー!お母さんが変なこと言うから、変な汗かいてきちゃったじゃんかっ。


「これは。交換条件っていうか、お礼っていうか。とにかくそういうことなのっ。今回のテストであたしが1コも赤点取らないで済んだのは、桜庭が勉強を教えてくれたおかげなんだよ?お母さんだって、赤点常連組の娘が珍しくまともな点数取って、赤らなかったんだから嬉しいでしょ?しかも全教自己ベストだぜ?だから、その感謝の気持ちを込めての〝これ〟ってわけだよ」


「あらっ。そうなの?それは桜庭くんって子にちゃんとお礼しないと!」


お母さんってば、ころっと真顔になって。


「ひかる、これも持って行きなさい。お母さんが昨日作っておいたガトーショコラ。今日のおやつにでも、と思ってたんだけど。桜庭くん達に持って行ってあげなさい」


「えー。それ、あたしも食べたかったのにー」


「ダメ!桜庭くんにあげなさいっ。アンタ、誰のおかげで赤点取らずに済んだと思ってるの?これからも、是非ひかるの赤点防止のために勉強みてもらって仲良くしてもらいたいわぁ。お母さん、またいつ学校に呼び出されるかってハラハラしてるんだから。今日行ったらさ、桜庭くんに好きな食べ物とか聞いといて。男を掴むなら胃袋をつかめ!よ」


ズコッ。


そういう理由でガトーショコラかよ。


「まぁ、みんなも喜ぶだろうからもらっていくよ」


「ええ。それにしても、ひかるにステキなボーイフレンドができて、お母さんも安心だわ。桜庭くんにくれぐれもよろしく伝えといてね」


「へいへい」


娘に勉強を教えてくれる友人というのは、親にとってとても喜ばしく貴重な存在なんだな。


まぁ、お礼したいというあたしの気持ちを汲んでくれて一緒になって張り切ってくれるのは助かるよ。


ガトーショコラを楽しみにしていたお父さんには、ちょっと申し訳ないけどね。


あたしもなんだけど、実はお父さんもお母さんが作るガトーショコラが大好物で。


今日は明け方から友達と釣りに出かけていないんだけど、昨日の夜、冷蔵庫開けて『お、ガトーショコラ!』って、食べるの楽しみにしてたからね。


でもまぁ、カワイイ娘のためだと思って、今回は我慢してくれよ。


「あ、そうそう!ちょうどこの前、このサイズのケーキが入るカワイイ箱を買ってきたのよ。えっと……。確か2階の部屋にあったハズ。ちょっと待ってて」


お母さんが楽しそうにキッチンを出て行った。


なんか、お母さんの方がウキウキしてないか?


協力してくれるのはありがたいからいいんだけど。



ところで、今は何時だ?


キッチンの時計を見ると、もうすぐ午前10時。


練習は11時からだって言ってたよね。


あの辺なら大体場所もわかるし、30分くらいで着くと思うから。


これ終わってもうちょっとしたら服着替えようかな。


と、思っていたその時。



プルルルルーーーーー。



キッチンのカウンターに置いてあるコードレスが鳴ったんだ。








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