復活!!
ドドンッ。
あたしは、大きな一歩で教室に踏み込んだ。
悪いけど、今日のあたしは昨日までのあたしとは違うから。
立花ひかる、復活!!
「おすっ」
あたしがまだひと気の少ない教室に姿を現わすと、既に来ていた有理絵達が駆け寄ってきた。
「ひかる!」
「おはようっ。ひかる……元気になった?」
「えらいよ、ひかる!もしかしたら、今日休むかな……ってちょっと思ってたんだけど……」
心配そうな顔で見るみんなに、あたしは元気に言った。
「ご心配おかけしやした。立花ひかる、ひと晩寝ればパワー全開。完全復活でございます」
にししと笑ってピースした。
「ああ、よかったぁ。元気になって。やっぱひかるはそうでなきゃダメよね」
「そうそう」
「ひかるって普段静かな日がないだけに、ちょっと元気がないとフツウの人の倍心配になるんだから」
有理絵がそう言いながら、ぎゅっと抱きついてきた。
「いやいや、めんぼくない。昨日はホントにありがとう。みんなに心配かけちゃったけど、大丈夫。今日、アイツらときっちりケリつけてくるよ」
あんなことされて、このまま引っ込んでるわけにはいかないもん。
だって。
あたしだって、あたしだって。
桜庭のことが好きだからーーーーー。
ようやく、そのことに気がついたから。
「アイツらになんて言うの?」
「それは、その……。実はあたし、ようやく自分で気がついたんだけど……。その、あの、つまり……。
あたしねーーー」
じわじわと赤くなっていく顔を隠しながら、あたしがしどろもどろになっていると。
有理絵が優しい顔で、小さく笑った。
「いいよ。言わなくてもわかってるから」
「え」
さとみもマヤも景子も、あたしを見守るような優しい笑顔。
そして。
「好きなんでしょ?桜庭のこと」
その言葉に、胸がドキンと鳴った。
みんなはわかってたんだ、ずっと前から。
なんか恥ずかしいな。
当の本人は、やっと自分の気持ちに気づいたっていうのに。
だけど……きっと最初から。
アイツに対するあたしの気持ちは、ちょっと特別だったかもしれない。
女の子にしかモテない男の子っぽい自分……というレッテルが、知らないうちにあたしの中でコンプレックスみたくなっていて。
自分のホントの気持ちにも、素直になれなくさせていたのかもしれない。
だけど、今はこんなに堂々と言えるよ。
やわらかい朝の光が差し込む、静かな教室で。
あたしは、ちょっと照れながらも笑顔で言ったんだ。
「好き」ーーーーーって。
とたんにみんなの顔がパァッと明るくなって、有理絵がぎゅうっとあたしを抱きしめた。
「やーっと白状したわねー。ひかる」
「ま、まぁな」
あたしは、恥ずかしくて頭をポリポリ。
でも、なんだかすごく嬉しい。
みんなにさんざんこづかれた後、さとみがギュッと手を握ってきた。
「今度こそ本当のカップル誕生だ。おめでとう!」
「な、なに言ってんだよ。桜庭の方は別にあたしのことなんてなんとも思っちゃいないんだから」
「バカねー。桜庭だってひかるのこと好きに決まってるじゃん。見てればわかるよ」
え⁉︎
さとみがそう言うと、有理絵がニヤッとしながら体を寄せてきた。
「そうそう。大体、好きでもなんでもない子にわざわざマンツーマンで勉強教えたりしないから」
な、なにを言い出すんだよ!
顔が熱いじゃないかっ。
「それに。ひかる、知らない間になんかずいぶん女の子らしくカワイくなったよ。前よりもずっと」
マヤもポンポンとあたしの肩を叩く。
「な、なんだよっ。なにみんなしてバカなこと言ってんだよ。さっきから」
「まぁ。言葉遣いは相変わらずだけどねー」
有理絵がちょっと苦笑い。
「でも。『女の子らしいステキ女子になる!』っていうひかるの目標は、けっこう達成されてると思うよ。うん」
やめろやめろ。
みんなして変なことばっか言うから、汗かいてきちゃったじゃないか。
「とにかく、ひかるは自信持って大丈夫。アイツらにもガツンと言ってやんなよねっ」
そうだな。
「うん。ありがとう。あたしがんばる!」
「ただし、ケンカはダメだよ」
「そうそう!間違ってもグーでパンチとかなしだからね。そこはおさえて」
「それ!ひかるならいいの決めれちゃいそうだよね。っていうか、決めてやりたいよね!わかるよ、わかるっ。あたしだって一発かましてやりたいもん。でも、ぐっと我慢だよっ」
ちょいとちょいと、キミ達。
「あのなー。あたしは〝レディ〟なんだぞ。そんなことするわけないだろ。グーでパンチなんてしたことないっつーの」
やれやれと首を横に振っていたら。
「おう」
後ろから声。
ドッキン。
この声は………。
振り返ると。
「さ、桜庭っ!」
噂をすれば影とはこのことだぁ!
カバンを肩にかついで教室に入ってきた桜庭の姿に、あたしの胸は大きく鳴った。
む、胸がドキドキいってる。
いつも一緒にいたヤツなのに、気持ちの変化でこうも感じが変わるもんなのか。
ドキドキドキ。
思わず、有理絵の陰からこそっと桜庭のことを見ていたら。
「なんだよ」
げげげ。
「あ、いや。そのっ。お、おはよう!いい天気だなっ」
なに言ってんだ、あたし。
しかも絶対顔赤くなってる。
ひゃー。
と、ドギマギしているあたしに。
コツン。
「おはよう、レディさん。うん、いい天気」
桜庭が、あたしのおでこに軽くデコピンして通り過ぎて行った。
デコピン、しやがった。
さすさす。
ちょっとくすぐったいおでこをなでてたら。
「いい。なんかすごくいい!!」
有理絵達のキラキラした目。
な、なに?
「あたしもデコピンされたいなぁー」
「さとみ、残念ながら無理だわ。桜庭はひかるにしかちょっかい出さないもんねー」
にやにやしながら言う景子。
「そ、そんなことないしっ」
「やっぱお似合いだよねぇー。ひかる、この恋に突き進め!」
「いや、だから……」
おいおい、誰もあたしの言うことなんか聞いちゃいないぜ。
だけど、嬉しいよ。
みんなこんなに応援してくれて。
でもーーー。
今のあたしは、桜庭とどうこうなりたいとか、そういうことは考えてないんだ。
あたしは、桜庭が好き。
ホントにただそれだけなの。
こうしてアイツの笑顔を見れるだけで、それだけで嬉しい。
それだけで胸がときめく。
だから、アイツらにもハッキリ言ってやりたいんだ。
あたしだって。
桜庭のことが好きなんだってーーーーー。
そして、その日の放課後。
あたしは『話がある』と言って、アイツらを屋上に呼び出した。
やってきたのは、性悪アイドルと西崎ともうひとりの3人。
昨日の雨とは打って変わっての晴天の中、性悪アイドルがあたしを睨みつけながら口を開いた。
「なによ。話って」
ひとり対3人。
向こうからは、3人分のイヤな空気がビシビシ流れてくる。
だけど、もう負けない。
ドンッ。
あたしは大きく一歩を踏み出した。
「ハッキリ言って、あたしは許せないよ。アンタ達のこと」
腕組みをして仁王立ちしながら、あたしは3人を真っ直ぐ見た。
「ぶ」
また、あの西崎のイヤな笑い声が聞こえてきた。
「なにこの人。なんかさぁ、自分はいかにも正義のヒロインですぅーみたいなー。こんなとこに呼び出したりしちゃって。青春ドラマの見過ぎ?」
ゲラゲラ、イヤミなあざ笑い。
ホントに最悪だぜ、コイツら。
あたしは、バカ笑いしてる3人にとうとうキレて、ガツンとかましてやったんだ。
「るっせーんだよっ!ボケ!!」




