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シャイニング・ガール   作者: 花奈よりこ
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何度も……


ふん、図星じゃんか。


「うざいんだよっ。アンタは一生女にモテてりゃいーんだよ。ラブレターとかもらってさぁ。しまいには直接告られたりしてさぁ」


イヤなあざ笑いがビルの中に響き渡った。


「……最低だな。おまえら」


あたしが静かに睨むと。


「コワーイ。男らしい〜。だから女にモテるのかぁー。ラブレター、いっぱいもらってたもんねぇー。下駄箱からバサバサ落ちるくらい。あたし見ちゃったんだよねー。ねぇねぇ、なんて書いてあったのー?」


「やっぱり『好きです!!』じゃない?」


「『つき合って下さい!!』とか!」


「きゃー。立花さん、いろいろ大変だねぇー。お気の毒ぅ」


けっ。


言いたいことはそれだけか。


「なんとでも言いなよ。だけど、お気の毒なのはアンタ達の方だよ」


あたしはアイツらに歩み寄った。


「ひとりじゃなにもできない。仲間集めて、こんな風にたったひとりに詰め寄ってさ。そんなことしかできなくて、ホントにお気の毒だよ。仲間ってのはさ、そんなことするために集まるもんじゃないんだよ」


性悪アイドルが、悔しそうにあたしを睨みつけた。


そして、いきなり西崎があたしのトートバッグを奪い取ったんだ。


「おいっ。返せよ!」


取り返そうと手を伸ばしたら、他のヤツらが後ろからあたしの体を押さえつけてきた。


「放せよっ」


あたしが必死にもがいている隙に、西崎がバッグの中に手を突っ込みサンドイッチが入っているタッパを取り出した。


そして、そのフタを開けたんだ。


「おいっ!やめろっ!さわるなっ!!」


それは、あたしが一生懸命作ったサンドイッチなんだぞっ。


桜庭のために作ったサンドイッチなんだぞっ。


おまえらなんかのために作ったんじゃないっ。


さわるな!!



「へぇー。これが噂のスペシャルサンドイッチだー。美味しそうじゃん」


ニヤッと笑ったその瞬間。



ボト、ボト、ボトッ。



あーーーーーー!!



あたしは、一瞬息が止まった。


なんと。


西崎が、サンドイッチの入ったタッパを宙でひっくり返したんだ。


サンドイッチが、バラバラとホコリまみれの汚い床へと落ちていった。


ウ……ソ。


「あ。ごめーん。落としちゃたぁ」


そして、次にコーンスープの入ってる保温の水筒を出してフタを開け。


「あー。スープだぁ。あったかーい。湯気出てるぅー」


と、言いながら。


落ちたサンドイッチの上に、ジョボジョボとかけたんだ。


「……………!!」



声が出なくて。


目の奥だけが、どんどん熱くなっていく。



「つき合ってもいないくせに。調子こいてんじゃねーよ。おまえなんかを桜庭が本気で相手にするわけないじゃん。なのに勘違いして、こんなのまで作って。いかにも『彼女でーす』みたいな顔してんじゃねーよ」


「転校生のくせに生意気なんだよ。ホントちょーうざいんだよねぇ」


「ちょっと騒がれてるからって、勘違いしていい気になってんじゃねーよ」


ガシャーーーン・・・・・



空になったステンレスの水筒が投げ捨てられ。


激しい音を立てて床に落ちた。



「行こ」


性悪アイドルが言うと、あたしを押さえつけていたヤツらがパッと離れた。


そして、ヒールのブーツのかかとを重くならしながら、ビルを出て行ったんだ。



ザァーーー・・・・・



ひとり残ったあたしの耳には。


静かに響く、冷たい雨の音しか聞こえなかった。


ただ、悔しくて、悔しくて。


悲しくてーーーーーー。



目の前でたってるコーンスープの湯気が、涙で揺らめいていた。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーー







どれくらい経っただろう。


雨の音だけが響くこのビルの中で、あたしは汚れた冷たい床にへたり込んでいた。


コーンスープの湯気も消えて、目の前の無惨なサンドイッチの姿が、あたしを切なくさせた。


ホントなら……。


このサンドイッチ、桜庭に食べてもらうハズだったのに。


桜庭に食べてもらいたかったのに。


『うまい』っていうアイツの笑顔が。


見たかったのにーーー。



桜庭ーーーーーー・・・。



知らず知らずのうちに、あたしはアイツの名前を呼んでいた。


心の中で。


何度も、何度も、何度も。


桜庭は、あたしがピンチの時いつも助けてくれたよね。


小林ゆきちゃんに告白されて困ってた時も、あたし達のことが噂になって騒がれた時も。


あたしがライブハウスで倒れた時も。


ずっとそばにいてくれたよね。


勉強も、懲りずにずっと教えてくれたよね。


あんな苦手だった勉強をがんばれたのも、桜庭がいたからだよ。


桜庭と一緒だったからだよ。


一緒にいて、すごく楽しかったからだよ。



桜庭ーーーーーー。



会いたいよ。


なんだかすごく、会いたいよ。


そして、もう一度あたしを助けて。


早くここから連れ出して………。


涙がつーっと頬を伝ったその時。



バンッ。


薄暗闇の中で、ビルのドアが開く音がしたんだ。


そして、すぐに聴き慣れているいつもの声が飛んできたの。



「ひかるっ!」



え……?


有理絵……?



そして、バタバタと足音が続き。


「ひかるっ」


「おい、ひかるっ」


へたり込んでいるあたしの目の前に、息を切らしたみんなが立っていたんだ。


みんなーーー。


どうして………?


ビックリして涙も止まってしまったけど。


「ひかる、大丈夫?」


しゃがみ込んで、あたしの肩をつかんだ有理絵を見たとたん。


今まで堪えていたものが、わっと込み上げてきて。


「う……うわぁーーーん」


あたしは、有理絵の肩に抱きついて大声で泣いたんだ。






「ハイ、お待ち。塩3つに、味噌2つ。醤油は今上がるから」


ゴトン、ゴトン。


目の前に、熱々のどんぶりが並ぶ。



ここは、近くのラーメン屋。


とりあえずあったかいモノでも……ってことで、ここにやって来たの。


あたしは、あのビルにへたり込んでてすっかり体が冷え切ってたみたいで、あたしの手の冷たさに、みんなビックリしちゃって。


しかも、みんなが来てくれた頃には、もう夕方5時近かったらしくて、慌てて『あったかい場所に』って駆け込んだの。


健太に腕引っ張られてさ。


でも、ホントに救われたよ。


みんなが来てくれたおかげで。



「ごめんね、みんな……。ありがとね」


「いいから食え。おまえの好きな塩ラーメン、のびるぞ」


健太がパキッと割った割り箸を私に渡してくれた。


そんな健太と卓は制服姿で、バスケ部のデッカいスポーツバッグを持っていた。


どうやら部活からの帰りだったみたい。


でも、どうしてみんなが慌てて来てくれたんだろう……ってビックリしてたんだけど。


ビルの中であたしがひとしきり大泣きしたあと、有理絵が話してくれたんだ。









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