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シャイニング・ガール   作者: 花奈よりこ
19/59

『ラブ』と『ライク』


「好きだよ。でも、みんなが思っている『好き』ではないのっ」


「なんだよ、それ。つまり、よく言う『ラブ』と『ライク』の違いってヤツか?」


「そう、それだよ、それ!つまり、友達としての好き、『ライク』的なヤツだよ。桜庭だってきっと同じだよ。あたしのこと、そのくらいにしか思ってないから」


「ふーん。なるほどな」


「そういうこと」


キレイになった黒板消しを持って教室に戻る途中、健太があたしの顔を覗き込んできた。


「ところでさ。おまえ、もう大丈夫なのかよ。昨日ハデにぶっ倒れたみたいだけど……」


「ああ、もう全然平気。昨日も目が覚めた時からなんともなかったもん。楽屋でしばらく寝てるうちにすぐ復活したみたい。寝不足だったのかもな」


あたしが笑って言うと、健太がちょっと考えたように言った。


「ひかるのこと楽屋に運んだのって。やっぱ桜庭かな」


「え?」


そういえば。


あたしを運んでくれたのって、誰?


もしかして、桜庭……?


他に誰かいるだろうか。


いや、あの状況からするとーーー。


楽屋に運んでくれたのは、やっぱり桜庭?



しまった、そんなこと全く考えもしなかったぜ。


おそらく、倒れたあたしは端っこの方で寝かされてて。


それで、桜庭達の出番が終わってからあたしを楽屋まで運んでくれたんだろうな……。


っていうか、どうやって?


え、もしかして……お姫様抱っこ?


ボワッ。


一気に顔が熱くなった。


あたし、桜庭にお姫様抱っこされたのっ?


は、恥ずかしい!


しかも、絶対重いし!


でもそれよりもなによりも、あたし、昨日ちゃんと桜庭にお礼言ってなくないか?


倒れたあたしを楽屋まで運んでくれた上に、他のバンドのライブも見ずに、ずっとあたしについててくれたのに。


あたしとしたことが、なんたる失態。


よし!後でしっかりお礼を言おう!


あたしがひとり大きくうなずいていると。


「しっかしよー。フツウぶっ倒れるほど興奮するかよ。バーカ」


健太が呆れ顔で言ってきた。


「悪かったな、バカで。でも、しょうがないじゃん。体が勝手に倒れちゃったんだから。でもさ、あたし、昨日生まれて初めて〝倒れる〟というのを体験したよ!よくドラマや映画倒のシーンとかあでるじゃん?あれ見ながら、気を失うのってどんなカンジなのかなぁって、何気にずっと思ってたんだけど。ホント、すーっと力が抜けてくカンジなんだな。で、そっからはなんにも覚えてないんだよ」


しみじみ感心していたら。


「……そんなに」


「え?」


「そんなに衝撃だったわけ?桜庭がステージに立ってたの」


ドキ。


ん?〝ドキ〟?


なぜ、胸が鳴る?





「ひかるーーーーっ」


向こうから有理絵が走り寄ってきた。



「捜してたよーん!旦那が!」


「旦那⁉︎なんだよそれ」


「んもう。桜庭に決まってんじゃない」


有理絵がふざけてペシっと叩いてくる。


「あー。はいはい。今日からなんだ、勉強教えてもらうの。っつーか、旦那じゃないし」


「勉強?」


健太が聞き返す。


「そうなんだよ。というわけで。健太、悪いけど先行くねっ」


「お、おう」


あたしは、その場に2人を残してダッシュで駆け出した。




ガラッ。


勢いよく教室に駆け込むと、桜庭がポツンと机の上に座っていた。



「ごめん、今日日直でさー。わっ⁉︎」


急いで黒板消しを戻そうとしたら、机の脚にけっつまずいて。


どべちゃっ。


あたしは見事にぶっ転んでしまった。


「いったぁぁい」


半べそで立ち上がろうとしたら。


「ぶははは」


桜庭のヤツ、爆笑してやがんの。


「ちょっとっ。なに笑ってんだよっ。痛かったんだぞ!あたしは」


「だって。立花おもしれーんだもん」


お腹抱えてヒーヒー言ってる。


「おい。そんなに笑い過ぎだ」


あたしがじと目で見ると。


「悪い悪い。大丈夫か?」


「大丈夫だけどっ」


「いやぁ、笑わせてもらった。さ、行くぞ」


そう言って、さっさと歩き出す桜庭。


「あ、ちょっと待ってよっ」


あたしは、カバンを持って慌ててアイツの背中を追いかけた。




ーーーーーーーーーーーーー




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




ここは、図書館。


館内に入って、あたしは目を丸くした。


うわぁ、みんな勉強してるよぉ。


図書館に来たことはあるけど、勉強にしにきたのは初めてだー。


みんなすっごいなぁ。


なんか、誰もかれもが頭良さそうに見えるぞ。


キョロキョロしているあたしの前を、桜庭はすいすい歩いていく。


奥の方の誰もいあに机。


あたしと桜庭は並んで座った。


「よし」


桜庭がドサッと教科書を机の上に乗せると。


「まずはこれからやってみろ。今回のテスト範囲だ」


隣に座っているあたしに、数学の問題集を差し出した。


げ。


「これ、やるの?」


「やる。わかんないとこあったら言えよ。教えるから」


って言っても……。


なんか、さっそくわかんないんですけど。


ちろ。


桜庭の方を見たら、ダラッとゆるいカッコで英語の教科書を見ている。


あたしも、もう一度問題集とにらめっこしてみたんだけど。


やっぱり、サッパリわからん。


「ねぇ」


小声で呼んだ。


「わかんないんだけど」


桜庭が覗き込んできた。


「どこ」


「全部」


ぶにっ。


「いったぁ!」


いきなり人の鼻つまむなっ。


鼻をさすっていたら。


じろーーーー。


あれ、なんかみんながこっちを見てる。


キョトンとしてたら。


「バカッ。でけー声出すなって」


あ、そっか。


OK、OK。


指で合図送ったんだけど。




「ああ⁉︎おまえ、なんだよ、この計算っ」


じろーーーーー。


周りの冷ややかな視線。


今のはあたしじゃないぜ、桜庭だもんね。


桜庭ってば『しまった』って顔して、慌てて口押さえてる。


ぷぷぷ。


それが妙におかしくて、あたしはふざけて小声で言ったんだ。


「バカッ。でけー声出すなって」


そしたらね、ちょっと赤い顔して。


「休憩だ」


そう言って立ち上がると、桜庭はあたしの腕をつかんでそのままずかずかロビーへと歩いて行ったんだ。




「あー。おもしろかったね」


あたしは笑いながらペットボトルのお茶を開けた。


やっとフツウの声でしゃべれるぜ。


それに、図書館のロビーのイスってけっこう座り心地いいんだよねー。


らくちん、らくちん。


そんなくつろいでるあたしの隣に、桜庭が缶コーヒーを開けながらドカッと座った。


「おまえのせいだぞ」


「なんでだよ。桜庭だってデッカい声出してたじゃん。あいこだもんねー」


「いいや。おまえが悪い。なんだあの計算。足し算、引き算、かけ算くらい間違えるなっ」


「ちょっと間違えただけじゃん」


べーだ。


それにしても、図書館来てこんなに真面目に勉強なんかしちゃって、あたしってばえらいじゃーん。


「なぁなぁ。もう1時間は勉強したよな?あたし」


ワクワクしながら桜庭に聞いてみたら。


「アホ言え。まだ30分も経ってねーよ」


「えっ?まだそんだけっ?」


げげげ。


あたしにはひどく長い時間が経ったように感じたが、たったの30分弱?


これからテストまでの間、しばらくずっとこんなカンジなのぉ?



「もぉ、イヤだぁー。帰りたーい」



「え?」


「と、でも思ってるんだろ」


ギク。


「ぜ、全然?そんなこと思ってないし」


「ウソつけ。思いっ切り顔に書いてあるぜ」


そう言って、桜庭がふっと笑った。







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