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シャイニング・ガール   作者: 花奈よりこ
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楽屋の2人


「ギターが好きで。楽しくて。いつからか音楽の道を考えるようになった。けっこうマジで。だから、やるなら、コピーじゃなくて、絶対オリジナルでやりたいって思ってたし。やるからには真剣にとことんやりたかったからさ。そしたら、アイツらもオレと同じような気持ちでいたいみたいで。じゃあ、本腰入れて、本格的にゼロからやろうってことになってさ」



桜庭ーーーーーーー。



いいヤツだっていうのはもうわかってたけど。


こんな骨のある男だったなんて。


あたしは感動したぜ!


「桜庭っ」


あたしは勢いよく立ち上がった。



「絶対なれるよっ。プロ!!桜庭ならきっと!あたし、応援するっ!!」



ちょっと驚いた様子の桜庭だったけど、すぐに笑顔になって言った。


「サンキュー」




うわぁ。


なんかあたしの方がドキドキしてきたぜ。


桜庭の夢。


〝夢〟って、ちょっと遠くに聞こえる言葉のように思える時もあるけど。


桜庭が言うと、そんなに遠くないような気がするよ。


ホントに届きそうな、ホントに叶いそうな。


そんな気がするよ。


あたし、絶対応援する!


「そうだ!まず、桜庭のバンドのことをみんなに知ってもらわなきゃっ。よーしっ。こうなったら、思いっ切り目立つポスターとか作っちゃおうよ!それで、それで、学校や街中に貼りまくって……」


「立花、たんま」


「え?」


「立花の気持ちは嬉しいけど、プロになりたいっつーのはまだヒミツ」


「ヒミツ?なんで?」


「今、学校とかにそのこと知られたらさ。なにかとうるせーじゃん。オレら高3だしさ。親も教師も、たぶん進学して大学あたりにでも行くんだろうくらいに思ってるだろうし。仮に進学しないとしても、当然就職するものだと決め込んでるだろうし」


ああ、そっかぁ……。


桜庭、頭いいから。


周りはみんな当然のように大学進学を期待しているのか。


でも。


「ってことは。桜庭は大学も行かないし、就職もしないってこと?」


「卒業したら、バイトでもしながら本格的にこっちの方やるつもり」


「へぇ。そうなんだぁ」


もう、ちゃんと考えてるんだぁ。


「勉強は、オレはもう高校だけで十分だ」


桜庭が笑った。


およっ。


「意外な発言だな」


「意外じゃねーぞ?だってオレ、勉強そんな好きじゃねーもん」


「とか言いながら。桜庭勉強できるじゃん。好きでもないのにできちゃうその頭がうらやましい限りだぜ。あたしは勉強ダメダメで、それこそもうこりごりだよ」


「もうこりごりか。でも、卒業するためには、とりあえずテストクリアしとかないとな」


桜庭が笑いながら言った。


「それなんだよなぁー」


実にそのとおりなんだよ。


あ、そういえば。


もうすぐ恐怖の中間テストの時期ではないか?


げげげ。


「なぁ、もうすぐ中間だよな?」


「ああ、だな」


「……どんなカンジだ?ガリ勉必須か?」


「さぁー。みんなそれなりにやってんじゃね?オレが見る限りでは、まぁ最低でも10日切ったらみんな必死こいてるな」


え、10日前っ?


早くないか⁉︎


あたしなんて、危機を覚えて慌てて勉強し出すのなんて、毎回3、4日前からだったけど。


もちろん結果は最低だが。


ひょっとして、そんなあたしのやり方じゃ通用しないってこと?(いや、前の学校でも既に通用はしてないが)


それほどまでに難題なテストなのか⁉︎


「もしかして。健太とかもちゃんと勉強やってんの?

そこそこいい点とか取ってんの??」


あの、あたしと一緒の赤点組の健太まで?


「健太?知らねーけど、やってんじゃねーの?2年の最初あたりは補習受けてた科目もあった気はするけど。後半あたりからはほとんど赤ってなかったハズだぜ」


ガーーーン。


「あの健太が赤ってないなんて……!ど、どうしようっ」


ムンクの叫びみたいな顔になっていると。


「さては、おまえ。いつも補習と追試で泣き見るパターンのヤツだな」


桜庭がニヤッと笑って。


「まぁ、がんばれよ。うちの学校の補習も追試もけっこうキツイみたいだぜ」


ポン。


なんて肩を叩いてきやがる。



「イヤだ!補習も追試も絶対したくない!どうしようっ。桜庭ぁー」


あたしが桜庭の肩をつかんで揺さぶると。


「わめくなっ。おまえが授業中、ボーッとしてたり寝てたりするからだろ。自業自得だ」


しらっとした口調の桜庭。


あ、そういう先生みたいなこと言うわけ?


「なにさっ。人のこと言えないじゃん。桜庭だって授業中しょっちゅう寝てるくせにっ」


「オレはいいんだよ、オレは。だって赤点取らねーもん」


「うっ……」



キーーーッ。


なんか悔しいっ。


でも、ごもっとも過ぎて言い返す言葉が見当たらない。


こんなあたしで、よく転入試験受かったなぁ。


今ではもう、授業中もノートなんて全然取ってないし、もう既にチンプンカンプンだよ。


はぁ。


あたしはガックリ肩を落としながら、とぼとぼとゴミ箱にココアの空き缶を捨てに行った。




ああ、なんて可哀想なあたし。


右も左もわからない学校で(←ウソ)


小心者のあたしが(←ウソ)


ひとり寂しく受けたこともないハードな補習と追試!(←前の学校では常連だったけど)


今から勉強するったって、既に中身はチンプンカンプン。


あーどうしよう。


あたしのワンピは赤だけど。


あたしの心は今ブルー。


はぁー。


深いため息をつくと。



ポコ。


桜庭が、あたしの頭を軽くこづいてきた。


ため息混じりの呆れ顔。


「いちばんヤバイの、どれよだよ」


「え?」


「いちばんわかんない教科、しょうがねーから教えてやるよ。」


え。


「ホントに⁉︎」


あたしが目を見開くと、桜庭が仕方ないといった様子でわずかにいなずいた。


「やった、ありがとう!助かるぜっ」


やった、やったー!


これで、最悪の事態だけはまぬがれるであろう。


「で、どれ」


「どれ……というか。全部?」


にこっと笑顔で言ってみたのだが。


桜庭がじっと細目になり、ふいっと背を向けた。


「今の話はなし。自力でがんばれ」


オーノー!


「待て待て待てっ」


あたしは桜庭の腕を慌ててつかんで引き止めた。


「そんなツレないこと言うなよ。頼むって。お礼になんかおごるからさっ。な!」


「オレは、女におごってもらわない主義だ」


うぐぐ。


あ、そうだ。


あたしはピンとひらめいた。


「なぁなぁ。今度、バンドの練習見に行ってもいいっ?」


「え?別にいいけど……」


「じゃあさ。その時、なんか差し入れするよ!」


「差し入れ?」


「うんっ。練習してたらお腹も空くだろ?だから、どーんとあたしの手料理かなんか持ってってやるよ。それならお金出しておごるわけじゃないからいいだろ?勉強教えてもらうお礼だけじゃなくて、今までのお詫びやありがとうの気持ちも一緒に込めて」


我ながらいいアイデアじゃん!


「これでどう?」


桜庭の疑わしい目。


「ちょっと。なんだよ、その顔」


「ちゃんと食えんのかよ」


なぬっ?


「失礼なヤツだなっ」


「わかった、わかった。それでOKだ」


「ホント⁉︎」


パッと目を輝かせるあたし。


「ああ。ただし……」


桜庭が耳元に近づいてきて、小声であたしに。


「ちゃんと食えるものな」


だから、失礼だっつーの!


ゴキュ!


「いってぇ!」


あたしは、ふざけて……でもちょっとだけ力を入れて桜庭の足を踏んづけた。










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