ライブ
「教えて、教えてっ」
さとみもマヤも、おめめがギラギラ。
それでもって、有理絵の話によるとーーーーー。
「来週の日曜日、ここら辺の高校で個人的にバンドやってる人達が集まって、合同ライブをやるらしいのよ。ライブハウス貸し切って。対バンってヤツね。で、うちの学校と、S高と、もうひとつどっかの高校の3校のバンドマンと、それを観に来るお客さん達が一堂に集結するってわけよ」
と、いうわけで。
「チャンスだよ、ひかる。もしかしたらいい人に出会えるかもしれないよっ」
と、有理絵が誘ってきたんだ。
ライブかー。
楽しそうだな。
あたし、イベントやお祭りとか大好きだから。
「きゃー!行く行くっ。絶対行くっ」
「行こっ。健太も卓もみんなでさ!」
「いいねいいね!行こ行こっ」
ノリノリのマヤとさとみと景子。
「ライブかー。おもしろそーじゃん」
お、健太と卓も乗り気だな。
「ーーーよしっ!じゃあ、みんなで思いっ切りはじけちゃおう!」
イェーイ!
あたしが元気よく拳を振り上げると。
「ダメ。ひかるは、今回はおとなしくしてて」
と、ビシッと有理絵のひと言。
「えーー。なんでだよっ。つまんないだろ、それじゃあ」
「いい?ひかるにとってこれはチャンスなの!今回のライブは、踊って騒いではしゃぎに行くんじゃないの。あくまでも出会いを求めての参戦なんだから」
「ライブとは音楽を楽しみに行くものだ。踊って騒いでなんぼだろ」
「そこをぐっと抑えるの!もしかすると、誰か声かけてきてくれたりしてステキな交友関係が広まるかもしれないじゃない。なのに、ひかるのいつものカラオケみたいな暴れまくりのヘッドバンキングしまくりの叫びまくりのあのノリで行ったら。激し過ぎて引かれて誰も近寄ってこないんだから」
うーーーむ。
まぁ、有理絵の意見も一理ある。
大人しくしてなきゃならないのは、ちょっと……いや、物足りないけど。
でも、もしかしたら……。
ホントにステキな人に出会えるってことも、なきにしもあらず。
まぁ王道だけど、優しくてカッコよくて、そしていつでもあたしのことをあたたかーな優しい瞳で包んでくれるような、そんな人にーーー。
これ、あたしの理想のタイプ。
くふふ。
「わかったぜ、有理絵。今回は暴れないで、ちょっとおしとやか路線で参戦するぜ」
「そう!そういうこと。いい?ひかる。間違っても、汗だくになるまで頭振り回して髪も服ベットリでシャウト!……なんてことだけにはならないでよ」
「OK、まかせてよ。できるだけクールを装ってうまいことやるから」
てなわけで。
来週の日曜日に、みんなそろって高校生バンドのライブを観に行くことになったんだ。
なにはともあれ、ワクワクしてきたぞ。
日曜が楽しみだぜ。
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「よっ。お熱いさん、おはようっ」
あたしの前の席のお調子者のクラスメートが、ニコニコ顔で挨拶してきた。
「やってくれるよな。何度でも言いたくなっちまう『2人の愛のエスケープ!!』くぅー。オレは、おまえらを応援するぜっっていうか、オレもしてみてー!」
あたしと桜庭は、顔を見合わせて思わず吹き出した。
そんなカンジで。
あの日以来、さんざんひやかされたり、みんなの視線も痛いくらいだったんだけど、当のあたしと桜庭はへっちゃら。
あの桜庭の『ほっとこーぜ』を聞いてから、ホントに気持ちが楽になっちゃって。
仲いいメンバーはちゃんと事情も知ってるし、おかげでラブレターもピタッと来なくなったし。
むしろ、みんなが勘違いして騒いでいるのを見て、あたしと桜庭2人で楽しんじゃってるくらいだよ。
「しっかし。おまえも相当惚れ込まれてるよな」
「は?」
桜庭が、カバンから何かを取り出して。
「ほら」
あたしの机の上にポンッと置いた。
手紙?
なんかイヤな予感しかしないぞ。
「見てみろよ」
言われて、あたしは折りたたんである手紙を開いた。
『桜庭センパイ、本当に立花センパイのことが好きなんですか?軽い気持ちや遊びなら、すぐに別れて下さい』
げっ。
「な……なにこれっ」
「立花のファンの誰かだろ。名前は書いてねーけど」
しらっとした顔の桜庭。
これが男からの手紙だと思いたいが、これは明らかに女子の字だっ。
誰だ?小林ゆきちゃん?
それとも他の誰か?
どっちにしても、お、恐ろしい……。
「ごめん。桜庭……」
「なんでおまえが謝んだよ」
「だって、なんか桜庭が悪く言われたみたいで。気分悪くしただろ。ごめんな」
あたしがそう言うと、桜庭がふっと笑ったの。
「だから。オレは全然かまってねーって言っただろ。まぁ、ぶっちゃけ『立花すげー』とは思ったけど」
桜庭の笑い顔につられて、あたしも笑顔になる。
「全然すごくないけどな。でも実はさ、おかげさまでここ最近、下駄箱にラブレター入ってないんだ」
こしょっと耳打ちすると。
「だろ?効果的めんだぜ」
2人でクスクス笑っちゃった。
その日の放課後。
有理絵やさとみ達と『パフェ食べ行こー』ってことになって、学校帰りに近くのファミレスに寄ったんだ。
「ーーーお待たせいたしました。フルーツパフェのお客様」
「はい!」
コトン。
あたしの目の前に、色とりどりのにぎやかなフルーツパフェが置かれた。
美味しそーーー。
「いっただっきまーす」
パクン。
ああ、幸せ。
みんなできゃいきゃいパフェを食べていたら、マヤが切り出した。
「そういやさ。あたしふと思ったんだけど。最近、ひかると桜庭仲いいよねー」
「あたしも思った!」
「同感。なんかぁ、いいカンジなんだよね。ホントにつき合ってるっぽいっていうか」
ニヤニヤするみんな。
ちょっと、ちょっと。
「別に仲いいわけじゃないよ。フツウにしゃべってるだけ。席も隣だし。確かに最初はちょっと苦手だったんだけど。話してみたら、けっこうしゃべりやすくて意外といいヤツだったよ」
「でも。ひかるとぐらいだよ?桜庭が女子とあんなにしゃべるのなんて。案外、桜庭もその気あったりして!」
マヤの声のトーンが上がる。
出た出た。
また先走る。
「あにょねー。何度も言ってるけど、ないから。そんなの」
あたしの言葉に有理絵がニヤリとじと目気味で言った。
「わかんないわよー。男と女なんて、いつどこでどうなるか」
「「そうそう」」
重なるみんなの声。
「だから、ないっちゅーに。だって考えてみなよ。女とほとんどしゃべらない桜庭があたしとしゃべるってことは。つまり、あたしを女というより、男友達とお同じような感覚で見てるってことなんだよ」
ふふん。
我ながらわかりやすい説明。
「まぁ……。そうとも取れるけど」
「でも、なんか違うような……」
と、さとみと景子。
「違わないってば。だって、あたしだって桜庭としゃべってると、健太や卓といるような清々しさを感じるもん」
そう、清々しい友情を感じるのだ。
「あ、キウイめーっけ」
パクン。
幸せ顔になってたら。
「ダーメだこりゃ」
有理絵の声。
「?」
みんなの呆れ顔おに気づかぬまま、大好きなフルーツを見つけては喜び、夢中で食べ続けるあたしなのであった。
その後、2時間ほどファミレスでおしゃべりをして解散。
方向が一緒の有理絵とあたしは、帰り道の途中にある本屋にぶらりと立ち寄った。




