第83話 巨大なカメさんの話をきいてみよう
「この奥にも教会があります。
北部と違い、工房やギルドはありませんが、
ホテルや飲食店がその分多数あります。
商店は、珍しい物が多く置いてありますよ〉
そういって、
あっちこっちと指をさしている。
下腹部の都市は、網の目状に広がっており、
床は、蛇腹のようできていた。
ひとつ、ひとつに隙間があるためか、
足をとられて、歩きにくい。
建物は、十条一間の小さな平屋が多く、
コテージのような感じで、部屋を貸し出しているらしい。
それよりも目を引いたのは、
一番大きな建物、
正面にある船というより、
島というか、
亀だろう。
「あれ、なに?」
僕は、あまりの大きさの亀に口は空きっぱなしだ。
「うふふ。
とうとう、見ちゃいましたね。
あれが、貿易船 アスピドケロン号です」
驚いていている僕をみて、とても楽しげだ。
「あれを見せて、驚かせたかったんですが、
大成功です。
この依頼を受けた甲斐がありました」
いたずらっ子のような目をしながら、
こちらをみてる。
「あれは、船なの?」
二人で近づいていくが、
亀の大きさが大きくなっていかない。
「むしろ村といってもいいかもしれません。
数千人は、暮らしているみたいです。
あれに乗って、遠い大陸から、
3か月かけてやってくるんです。
海は危険ですから、
あれぐらいじゃないと、
遠出なんて、できないんだと思いますよ。」
あまりにも、大きすぎるのか、
その後、いくら歩いてもシルエットが大きくなることはなかった。
「どうやったら、あんなのを使役できるの?」
「一子相伝で引き継ぐらしいですよ。
今の船長は、300代目とか、400代目とか、
あったこともありませんが。
その説には、1000年以上前に、初代は、小さな亀を飼育して
あそこまで、大きくしたとか、
いわれてますが、本当かどうか」
「じゃ、ミカンちゃんも、カメを飼ってみるいいかもね」
「それもいいかもしれませんね。
今度から、見つけたら、育ててみます」
どうやら、カメ好きらしい。




