第76話 鑑定を唱えてみよう
街中は、お昼を終えた人で来たときよりも、
沢山の人で、溢れかえっていた。
祭り前で、この人の様だと、
当日は、もっと混むんだろう。
「すごいね、人だらけだね、ミカン」
「この辺は、商店も多いですし、今は、祭り前ということで、少し安いですね。
祭りに向けて、最後の買い出しって人も多くいるので、
今が、一番人が多いかもしれません。
祭りになると、出し物があるところは、混雑しますが、
露天は、禁止になりますから、
この場所。出し物がないところは、
かえって歩きやすいです。〉
そういって、ミカンちゃんは、
逸れないように手を繋ぐと、先導し始めた。
「はぐれないよう、手をつなぎましょう。
私のお勧めの出店に連れて行きます」
そういって、後ろをみずに、
ずんずん、人をかき分けて、進んでいった。
僕はその手を離さないようにぎゅっと握った。
しばらく進むと、
ひときわ混雑してる屋台があった。
「私が、買ってきますので、
ここで、待っててくださいね」
僕を、道の端に立たせ
手を放して、人ごみにまぎれていった。
残念。
そういえば、杖がじゃまだな。
僕は、本や杖、帽子を
バックの中にしまった。
食べるのに、てぶくろもじゃまかな。
そう思った僕は、
両手の手袋をはずして、
同じようにバックにしまった。
そういえば、シャルルさんに、
指輪を解呪してもらったんだっけ。
両手を見ながら、そう思うと、
両方の中指に、指輪がはまっていた。
右手は、銀色で、左手は金色の
デザインのない指輪だった。
〈ねぇ、リイナ。両手に指輪なんか、はめてたっけ?〉
〈あったときから、はめてたわよ〉
そうか、自然につけてたから、気づかなかったのかな。
普段は手袋をしてて、外すことがなかったし、
ご飯たべるときも、外さなかったもんな。
〈鑑定の魔法は、どうやればいいの?〉
〈できるかしらねぇ。少しコツがいるのよ。
知りたいと思いながら、発動するのよ〉
なんか、判ったような、判らないような感じだな。
僕は、右手の指輪をじっと見つめながら、
知りたいと念じた。
「鑑定」
しかし、魔法は何も発動しなかった。
〈うまく、いかなかったみたいね、
最初はそんなもんよ、明日、私が見本みせてあげるから、
今度試してみるといいわ〉
一発本番では、うまくいかないな、残念。
しばらくすると、
顔が肉まんでできている、
ミカンちゃんの服装をしている女の子が向かってきた。




