第72話 クロムさんの凄さを実感してみよう
「クロムに今後のことを指示しますので、
一緒に付いて来て下さい」
最初に部屋に入った時とはうって違い、
態度がこちらよりになっている。
「はい、判りました」
僕は、素直に従った。
〈あなたって、結構優遇されるべき人だったのね〉
〈そうみたいだね、あんまり実感が沸かないよ〉
〈わたしも〉
お互い顔を合わせながら、
まだ、境遇を理解できずにいた。
直ぐに階下にある、クロムさんがいる個室につき、
オリビアさんは、クロムさんと立ち話をしている。
驚愕の表情が浮かべたり、困ったような表情を浮かべたりしているが、
最後は、覚悟をきめたような表情だ。
「では、ヒビキ様、後は、クロムにお願いしましたので、
何か困ったことがあったら、
クロムに、どんなことでも、おっしゃってくださいね。〉
最後は、深々と一礼すると笑顔のまま、オリビアさんは、
クロムさんの個室を出て行った。
「オリビア様は、書状を作成するため、
自室に戻られました。
私が対応できればよいのですが、
いろんなことを考慮して、作成せねばならないため、
お任せしないといけません。」
一礼し再度頭をあげると
「かくいう私も、このあと、さまざまな対応が控えており、
専任でご対応が行えません。」
さきほどよりも、なお深く頭をさげると。
「若輩もので、ご迷惑をおかけするかもしませんが、
ミカンを世話係にあてさせてもらいます。
彼女より適任のシスターはいるのですが、
初めにあったのも何かの縁なのではないかと思うのです。
御用はすべて、彼女にご相談ください。」
そういって、ドアの外から、別のシスター経由で、
ミカンさんを呼び出した。
「いいことミカン、オリビア様の厳命を伝えるわ。
心してお聞きなさい〉
先ほどの柔和な口調から、かなり厳しい口調に変わった。
周りの空気が冷たくなるような雰囲気を醸し出す。
「リイナ様のご指示は、大司教様の指示と思いなさい。
少しでも、粗相・苦情があった場合は・・・・・・破門!
二度と町に足を踏み入れることを禁じます。
ご相談は、全力をもってご対応しなさい!
いいですね、もう一度言いいますね。
全身全霊をかけて、オリビア様と思ってお世話をしなさい。〉
彼女は、さらに厳しい口調で、会話を締めた。
厳しい口調で接されたためか、オリビアさんと思えというためか、
パニックのため、オロオロしてる
「本気じゃ、ありませんよね?」
小声で、聞きなおしている。
発言によって、真面目な表情から、
三白眼のように鋭い目つきに変わった。
「シャキッとしなさい!!!
いいあなたは、清流教会の代表として、
私やオリビア様の代わりを担うの。
そのあなたがそんな弱気でどうするの。
しっかり大役をこなしなさい」
あまりの怒声に子ネズミのように、
小さくちじこまっっている。
今度は、100点の笑顔にかわり、
みかんさんを見始めた。
「いい。私もオリビア様も、
あなたができないなんて思ってないわ。
むしろ、期待してるし、あなた以上の適任者はいないと
思って、まかせるの。
どんな仕事にも、覚悟をもって接していかなければ、いけないのだから、
責任をもってやりとげなさい。
困ったことがあったら、相談してくればいいから」
やさしい口調に戻りながら、頭をなでた。
これが、鞭と飴の人心掌握術か。
伊達に、大司教候補じゃないだな。
僕は、自分の手にはあまる女性を
初めて見たのかもしれない。




