第6話 魔法のカバンを使ってみよう
ぜひぃ、ぜひぃ、疲れた。
一刻ほど、密林の中を走り続けた。
〈もう、大丈夫よ〉
大樹に背中をすりつけて休んでいたら、リイナが声をかけてくれた。
〈ありがとう。
なんとか、無事で逃げ延びれて、よかった〉
安堵の表情を浮かべながら、
感想をのべた。
〈しっかし、あなたがあんなにへっぽこだとは、
思わなかったわ〉
〈うぅ、ずびません〉
息を整えつつ、謝った。
失敗したら素直に謝罪だよね。
逃げまわったせいか、喉がものすごく渇いた。
〈リイナ、この辺に、水を飲めるところは、ある?
走ったから、喉が渇いたよ〉
〈それだったら、バックの中に水筒が入ってるわ〉
そういいながら、指をさした。
このぺったんこのバックの中に物が入ってるとは、
思わなかったな、重さもないし。
そう思いながら、バックを開けてみると、
中は暗闇になっており、奥まで見通すことは、
できなかった。
〈なにこれ?〉
〈そんなことも知らないの。
あなたは、何にもしらないのね。
それは、魔法のバックよ。なんでも入れることができるのよ。
取り出す時は、腕をつっこんで、イメージすると、
イメージに近い物を掴むことができて、取り出すことが
できるのよ〉
〈へぇ、すっごい便利だね。〉
まるで、自分が発明したかのように、
自慢げに話す彼女を見ながら、試してみることにした。
バックの中に腕をつっこみながら、
水筒をイメージした。
最初に魔法瓶をイメージしたけど、駄目か、手に感触はなかった。
竹の水筒をイメージしたけど、それも、駄目。
アラビアで使われるような、皮の水筒をイメージしたら、
手に何かの感触があった、
やったね。
取り出してみると、2Lは入るくらいの皮袋だった。
そこそこ重たい。
それをごくごく半分ほど飲む
うまい、生き返る。
思ってた以上に、水分を欲してたんだと
判るくらいだった。
もしかして、水は、これしかないのかな。
しまった、勢いで、結構飲んじゃった。
今は、完全に道に迷ってるし、
どっかで、川とか見つける必要があるかもしれない。
それよりも、一刻も早く村に戻ったほうがよいかもしれない。
〈あと、パンが一つ、バックにはいってるわ〉
〈もしかして、パン一つしか、食料はないの?〉
〈そうよ。
食事の担当は、一緒に来た冒険者のユカリだったから、
お任せしたのよね。
失敗だったわね。
こうなるって思ってたら、
自分の分を確保しておくんだったわ〉
淡々と語っているためか、
失敗したと思ってるようには、まるで見えなかった
君はお腹が空かないかもしれないけど、こっちは空くんだい。
〈じゃ、急いで引き返して、
二人と合流したほうがいいね〉
〈そうしたほうがいいけど、元の道や方角はわからないし、
間もなく日も暮れると思う。
夜の山は危険だから、
大樹を背に、一晩過ごした方がいいわよ〉
そうか。おとなしく言うことを聞いた方がいいよね。
真っ暗中を歩いて、モンスターに襲われたら、
逃げられないだろうし、方向も判んないよね。
ここは、おとなしく先輩の言うことに、従った方がよさそうだ。
決して、オークが怖いからとか、そんなんじゃないからね。
寝床の準備をしよう、
夜は襲われないといいなぁ。
もう二度と、オークとかに追いかけられたくないよね。
ここで隠れて、明るくなったら、
仲間や村を探しにいこう。
困っても解決しないことは、先送りが一番だ。