第543話 妹と妹の親友を救うには
シューリンを救ってから、数日が経っていた。親友の荻原が現実へと帰還した後は、飛空城でシューリン様を交えた祝賀会を二日間に亘って開かれた。そして、3日目の夜が明けた時には、シューリン様は、皆に短めにお礼を述べるとその場を後にした。
その姿をみたエレメールは、自分の役目が終わったことを理解すると魔王の補佐をするために自分の地区へと戻って行った。ヒビキはお礼に普段の暮らしができるように弱体化の指輪を渡してあげた。これがどういうものかを理解したエレメールは、飛び上がって喜び、生れて初めて父親以外の人物に思いっきり抱きしめた。弱体化のスキルのおかげで、ヒビキは怪我一つしなかった。そして大事そうに右手を抱えながら、ペテとともに王都へと帰って行った。
それをみていたアンドレアも、自分の仕事があると思い出し大教会へと旅出さねばならなかった。叫びながら嫌がる彼女を戻すため、いやいやながらアンナも一緒に旅立つことなった。一人、また一人と旅立っていくと、シルキィとイノもジーンの子供が生まれることを思い出し戻ることにした。泣き崩れてしゃがんでいたシルキィを口に咥えると強制的にイノは旅立っていった。
残った一同は、水都で行われている祭りがまだ行われていることをモモから聞くと、全員で見に行くことになった。大混雑の中、ひとりヒビキが、夜中の屋台でご飯を食べていると、隣に見知った顔が座ってきた。それは、祝勝会でもこっそり現れた荻原だった。荻原は、祝勝会の時に、一瞬現れて、仮想世界からロストした二人の体がまだ生命維持装置で生きていることを解放戦線から確証してきたのだった。二人が今後どうしたいのかをヒビキに委ねた結果を聞きに再び戻ってきたのだった。
「やぁ、かっちゃん、スズネちゃんとユキナちゃんはどういってた?」
「あぁ、二人に同時に話したことが良かったみたい」
「そっか」
「スズネが泣きながら、ユキナと一緒に生きたいって説いたら、
二人して大号泣して抱き合ってしばらくしたら眠ってたよ」
「で?」
「そして、朝起きたときには、ここを出て現実世界に戻るって決めたみたいだ」
二人に戻る意思があるのかが、一つのポイントでそのためには、現実世界の情報接続の解除をヒビキが行う必要もあった。
「そっか、それでよかったよ。
じゃ、俺は、二人をこっちに運ぶよ」
二人が戻ることを承諾したことで、現実の体を違法接続するため第四エリアのある地域に運びこみ接続しなければならなかった。その面倒な輸送手続きを親友である荻原がしてくれるのだった。
「で、僕が二人をつなぎ合わせればいいんでしょ」
「そだな。
それで、コネクトできれば、半分は成功だな」
普通ではできないNPCから管理対象者への変更は、管理者となったヒビキしかできない芸当だった。
「半分でことは、何が他に残ってるっていうの?」
「かっちゃんは、知らないかもしれないけど、このエリアでは、帰るルートが封じられている。
だが、管理対象者から無くせせれば、異常者として扱われログアウトができるようになる。
それは管理者しかできないが、かっちゃんは権限を貰ってるんだろう」
「うん、譲って貰った。
それで、二人を管理対象者じゃ無くせば戻せれるようになるんだね」
それは、本来なら存在した管理対象者のログアウトは、以前の解放で政府が強制的に無効にしたことで戻るルート違法ログインからの道しかなかった。そのため、正規ログインからの管理対象者から違法ログイン者にすることで仮想世界から離脱できるようになるのだった。
「あぁ、そこまでやれば、二人は戻せるだろうな」
そして、ヒビキは手順を再度思い出すと二人以外も救う方法が分かったのだった。
「そうか、そうだったのか。
じゃ、二人以外にも戻せるの?」
「あぁ、きっと可能だろうな。
そのためには、全員をこっちへと運んでこなきゃいけないけどな」
「じゃ、おっくん、頼めれる?」
「無理だよ。
そこまでのお金は流石にもってないよ。
それにかなり大掛かりな仕事になるよ」
「そうか、せっかくみんなを助けられるかと思ったんだけどね」
そんな様子に呆れながらも流石だと改めて尊敬した。
「今は、助けたかった妹と妹の親友だけで留めておくんだな。
じゃ、今から政府の管理庫に入って、二人を助けだしてきたら、ここに戻ってくるよ」
「うん、よろしく頼むよ、親友」
「はは、かっちゃんに頼まれるのは、スズネちゃんを助けてって泣いてきたとき以来だな」
「もう、過ぎたことじゃないか」
「そっか、そうだな。
あぁ、それと。帰還は、大体一週間はかかるな。ここは5倍の速度で流れているから、一か月過ぎくらいになると思う」
「判った、ここ、水上都市で待ってるよ」
「あぁ、では、行ってくるさ」
ヒビキは大体の流れを理解して安堵すると、親友の今後の行動を聞いてみることにした。




