第541話 3人の次期魔王候補
そして荻原が転がった先には、みんながくる前に何度と戦ったエレメールがシューリンの矛を持って仁王立ちして立ちふさがっていた。
「私は、ヒビキがすきなの。
ヒビキだけが、私をちゃんと一人の人として扱ってくれたなの。
そんなの、ヒビキだけなの。
それに、父上もヒビキを認めてるしなの♪」
エレメールは、怪力のスキルで自分の敵ではなくなった荻原に向けて上段からの一撃を放った。何とか剣で受けると人間ではとても堪え切れず剣は手からはじけ飛んだ。武器がなくなった荻原見て、エレメールは荻原の頭の上で矛を止めると最後まで振り切らなかった。
荻原は訝し気にしたが、危ういと思い人怪我少ないはずれに距離をとった。その先には、小さな女の子を乗せた一匹の巨大な異様な獣が立ちすくんでいた。全てをヒビキにゆだねると決めたエレメールは、想定以上の攻撃を辞めたが、シルキィとイノのペアは何も考えていなかった。
「わたしぃだって、ヒビキしゃんのみかただよ」
「ソウダ、ソウダ」
「ヒビキシャンはエルフの村では、アメリアを助けた英雄しゃんだしぃね」
「ヒビキハ、オレラノネガイ ヲ カナエサセテ テ クレタ」
イノは、エレメールから逃げこんできた荻原に近づくと、右手を振り下ろした。普通であれば、絶対に届かない一撃だったが、シルキィが右腕だけ巨大化させると何十メートルも大きな右腕になりその真下にいた彼は右腕の陰になった。強大で強力な一撃は、地面にめり込みその一撃のもと、荻原はぺしゃんこになり瀕死となった。
イノ達が右腕を持ち上げ普段の右腕に戻ると、その下には、曲がらない方向に曲がってつぶれている無残な荻原の姿があった。だが、直ぐに荻原の右腕の指輪が光り輝くと全ての怪我が回復し、元の姿に戻った。その時には、光り輝いていた指輪は、身代わりの効果を失い光の粒子へと変わっていった。
ゆっくりと起き上がり、正面で待ち構えていたヒビキに対して荻原が口をひらいた。彼の後ろには、絶世の美女がひっそりと佇んでいた。
「もう、勝てる要素はないな」
「そうでありんすね」
荻原は、武器も防具もなく最初から比べると無残な状態だったが、最後に首輪だけが残っていた。カリナは、リイナを襲った時のように首一閃に攻撃を加え荻原の首輪だけを壊した。
「アチキは、ヒビキ様と一緒にいた時間は短いでありんすが、心が繋がってるでありんす。
ヒビキ様の考えることはなんでも判るでありんすよ」
もじもじとしていたカリナは、正面にいたヒビキの後ろへ移動していた。
「カリナ、ありがとう。
シルキィのは、驚いたけど思っていた以上に、計画通りにいったね」
「ヒビキ様から聞いてたとおりの計画でありんすからね、
従っただけでありんす。
ヒビキ様もオギワラ様と分かち合えるといいでありんすね」
「そうだね」
最後の一言だけヒビキだけにしか聞こえないようにしてくれたことに感謝し、何も装備していない親友に向けて歩き出した。




