第540話 遅れてきた助っ人の反撃
モモは、スズネの一撃で上空から手の届く位置まで落ちてきた荻原を見ると自分の出番が来たかと腕を回し始めた。
「ヒビキは、孤独な私に付き合ってくれた唯一の男性だよ。
それにパパ公認の婿候補だし。
えへへ、私はいつだって構わないのだけど」
話しながら顔がにやけながらも、モモの右手と左手のこぶしが回転速度を上げて、右手と左手を中心に竜巻が出来上がっていた。
「今度はくらってもらうわよ!
ハン流最大奥義!
W昇龍竜巻旋風衝!!」
荻原を挟むように現れたその竜巻は、まだ自然落下をしていた彼に向けて放たれた。荻原が気づいた時には、既に逃げるところをなくして包み込んでいた。避けることが困難だと思った彼は、体をまるくまとめ風の当たるところを小さくしたのだが、正面に当たるズボンは荒々しい風の前に風圧で破けていった。
「しまった!これは、まずい!」
荻原が空中に浮いていられたのは、ズボンの空府中浮遊のおかげだった。そのズボンが切り裂かれたことによって空中での維持が困難になり敵がいる地面の真ん中、最前線へと強制的に落ちていった。
落ちてくる荻原に対して、二人の凸凹コンビが自分たちの出番を待っていて、ようやくやってきた出番に心を躍らせていた。
「次は私たちの番だね」
「そうだね、あんちゃん」
アドアとアンナは、出会っ後の大きなスライムに襲われかけたところを必死で助けてくれたところを思い出していた。
「私たちは兄さんがスライムから守ってくれたから、ここにいられるんだよ」
「そうだよね、あのヒビキさんのかっこよさ。
女の子だったら、みんなが好きになっちゃうよね♪」
「そうだよね♪」
二人が仲良く談笑している中、荻原はどうしたらこの窮地を脱することができるか必死に考え、ひとまず最大攻撃となる最大分身をすることにした。4体へと分身した彼は、下で待っているアンナやリイナ、アンドレアに向けて剣を振りかざして落下していた。
アドア一人が4人の分身の一歩前に立ち屈みこむと、技を出す準備が完了した。
「リーディングスワロー!」
アンナは、一気に駆け出し着地直前の4体の足元へ走り抜けると、荻原の後ろへと走り抜け終わった。荻原はなんとかよけようとしたが、彼の剣はぎりぎり届かず、彼女の剣先は狙いどおり靴の底を貫いていた。分身のスキルをもっていた靴が光の粒子へと変わっていくと、分身を支えていた本体も音もなく消えていった。だが、本体であった荻原の剣は、真下にいたアンドレアに向かってせまっていた。
アンドレアは、ちらりと幼馴染のアンナをみて自分が活躍するんだと思うと、ユキナと同じようにシューリンに祈りを唱えた。
「我が神、蒼龍様……
かの物を倒す力を私にお貸しください!
神の息吹!」
アンドレアが口から吹いた息は、たしかにほんの小さなものだったが、その先にいた荻原には突風となり数十何メートル先まで転がっていった。その転がっている最中、つけていた打撃耐性の帽子はその場に転がり、アンドレアの前にぽつんと置かれていた。




