第539話 アメリアとユキナ、最後は勇者が〆るのだ!
魔王ですら瀕死に陥るリイナの魔法は、人間である荻原には耐え切れなかった。だが高魔法耐性のスキルが付いた上着には一度だけ自分を身代わりに死亡ダメージを身代わりするスキルが付いていた。魔法を食らうと同時に上着は、彼の身代わりとなり霧散しリイナの魔法と共に消え去った。
「何が起きた?」
「むしろこっちが聞きたいくらいだわ」
荻原は。慌ててその場から離れて安全地帯と思った上空へと逃げ出した。上空からの攻撃へと切り替えることで、一撃離脱で安全に参加してくるであろうメンバーを減らそうと考えたのだ。
そんな中、みんなの後ろで黙々と準備をしていたエルフが口を開いた。
「次は私だな。
私はヒビキがこの世界に来た時から、一緒にいるからな」
「アメリアは、わたしについてただけでしょ」
「もう、リイナ、邪魔しないであげなよ」
リイナがちゃちゃを入れると、ヒビキは手と口で制止しアメリアに笑いかけた。
「ふふ。
ヒビキは私を呪いから解放してくれるきっかけを作ってくれた。
とても感謝している。もちろん、リイナもな」
アメリアに素直に感謝されるとチャチャをいれた自分に恥じて彼女のほうを見ることができなかった。
そんな様子から、真面目な顔に戻ると、リイナの魔法を放つ前から弓を足で引き必殺の一撃の準備が完了していた。既に2メートルを超える矢が番えており、いつでも放てる準備はしていたが、荻原が上空で制止すると狙いを定め直して解き放った。
辺りには耳を劈くほどの空気を切り裂く音が聞こえ、荻原目掛けて放たれた必殺の一撃は、目で追うことはとても困難な速度だった。
荻原は一瞬で光ったそれを何となく下半身を上げることでぎりぎり避けることができた。完全回避をもつ荻原のマントと必中をもつ弓はどちらが勝つかは神であるシューリンですら判断きなかった。残念ながら矢は当たらず荻原は無事だったが、完全回避のスキルをもったマントは、穴を明けられ光の粒子へと変わって行った。
「なんだ、マントがなくなった……
一体何が起きてるのか、全く分からない……」
荻原が困惑している中、下では次の攻撃を行うため、若い巨乳のシスターが準備していた。
「うふふ、次は私だよ。
私もヒビキに石から解放されてるから、感謝してるよ。
それに、私も特訓してきたからね、みてて!
ユキナが目を瞑ってシューリンを想うと、困惑している荻原のさらに上空では、徐々に雷雲が拡がっていった。
「今度は、何が起きるっていうんだ!」
「我が神、蒼龍様……
かの物を倒す力を私にお貸しください!
神の雷!」
暗くなった全域に、即に数本もの稲光が入り込み轟音が轟くと、上空にいた荻原目掛けて雷が落ちていった。これはやばいと思った荻原は右手に持っていた剣を雷雲に向けて投げ飛ばした。雷は途中で何本もの雷雲が剣に落ち負荷に耐え切れなくなると爆散した。その爆発の威力で、雷雲も吹き飛ばし余りの眩しさに全員が目を瞑った。
そんな中、雷雲よりさらに上空で構えていたヒビキの妹が満を持して登場した。
「次はあたしだよね。
あにぃは、魔王になっあたしを呪いから解放してくれたし、一緒にいて話も聞いてくれた。
会った時からあたしはあにぃを信じてる!
だから、あにぃの敵はあたしの敵だよ!」
残念ながらその猛々しい声は、雷雲の爆散による轟音で、神の候補であるヒビキにしか聞こえなかった。口上がおわると爆散している雷雲に向かって突っ込んでいった。
雷雲の雲が爆散した中を勢いよく落下してくる物体があった。荻原はよく見えず目を細めてみているとヒビキが追いかけていた妹の顔だった。だが、気が付いた時には既にスズネの剣が目の前に会った。
「スズネ突撃3!」
超上空からの落下速度を交えた一撃は、認識した時には斬り終わり全てを突き切る、まさに必殺の一撃だった。だが、荻原はかろうじて正面に刃を向けるとスズネの剣は二つへと斬り別れ、斬り別れた先の剣は、荻原のコピーを生み出すスキルをもった手袋は切り刻まれていた。
スズネは自分の腕が切れないところで、軌道修正し地面へと華麗に着地した。着地したときには、真っ二つになって光の粒子となった剣をみて泣いていた。
「うへぇ~ん
あにぃ、壊れちゃった」
ヒビキの隣でウソ泣きしているスズネの頭をなでて慰めていた。
「よしよし、今度作ってあげるから」
「約束だよぉ」
同じように荻原もコピーをする手袋を失くして上空にいったのは間違いだったのかもしれないと後悔していた。




