第537話 英雄は遅れてやってくる
モモは、上空からゆっくりと近づいてくる大きな陸地を訝し気にみると、近くにいたアドアに話しかけた。
「あれは、何なの?」
「さぁ、わかりません。
彼の味方でしょうか?」
「ははん!
どんな敵だって私の相手にはならないわ」
モモが気を発しながら構えていると、大陸の移動は止まり上空から、緑色の光に包まれた一行が降りてきた。
その中には、みんながよく知っている面々がおり、気を許した。そんな様子を知ってか知らずか、集団の中からのんきな声が聞こえてきた。
「みんな、大丈夫かい?」
ヒビキの一声に4人が喜ぶ中、荻原も地面に苦しみながら懐かしい親友の声に喜んだ。
「かっちゃんじゃん。
止めにきたのか?」
「あぁ、シューリン様や魔王様は知り合いだからね。
知り合いの死は嫌じゃないか」
「だから、かっちゃんを絶対すくっ……」
ヒビキは、荻原が何を言わんとしてるか気づき、皆に伝えないようにするため、食い気味に大きな声を出して話を遮った。
「だとしても、そんな彼らの死の上で生きていたくはない」
「それは、かっちゃんのわがままだ!
同じわがままなら、俺だって自由であっていいはずだ!!
そして……お前を救ってみせる!!!!」
「やっぱり、おっくんはかっこいいや。
だからと言って、それを実現はさせない!
僕は僕の全てを使ってでも、止めて見せる!!」
荻原は、なぜに神様との戦闘で邪魔がいくどもはいったのか理解した。これが最後だと確信すると、腰のベルトに指してあった非常用の最後のポーションを自分に振りかけた。
「はははは。
それにしても、あのかっちゃんが……
人見知りで人と接するのが嫌だったかっちゃんが、
こんなに慕われて頼められる人間がいるとはな。
俺は、嬉しぜ!」
「ふふふ、おっくんはなんでもお見通しだね。
全力で挑ませてもらうよ。
卑怯だとはいわせないからね」
「あぁ、こっちも本気を出させてもらうよ!
そこの少女は、おっそろしい剣で襲ってきたし。
そこのピンクは自信過剰だが、こちらの攻撃はまともに当たらないしね。
強い仲間に信頼されてるね」
「ありがとう。
当然かっちゃんが一番強いって思ってるから胸を借りるつもりで行くよ」
「ははは。
おだてても、手加減しないからな。
少しは痛い思いをさせてもらうとしよう!
さぁ、こい!!」
ヒビキは辺りを見渡し、誰も怪我していないことを確認した。
そして、目的の神や冒険者以外は倒そうとはしない荻原に感謝を覚えたが、覚悟を決めると最後の戦闘を始めることにした。




