第536話 打撃は効かない
荻原が左右の攻撃を繰り返したが、モモはどちらもを軽いステップで躱していった。いら立った荻原は、大きな振りで攻撃するも更に簡単に躱されるとと少しよろけてしまった。ここがチャンスと思ったモモは、一気に決めるため、対個の最大の必殺技を出すのだった。
「ハン流格闘術 最終奥義
風連撃打柳!」
それは、一撃一撃を確実に当てていき、徐々に力を込めた連打を繰り替えす技だったが、必中の最初の基軸が避けられ技は発動する前に不発に終わった。
モモは、これまでの異常な躱し方から、想像が確信へと変わった。
「あんた、躱す系のスキルを持ってるよね?」
「ふふ、よくわかったな。
この短い期間で」
「当り前よ、私は天才拳士なんだから!」
密着していたモモに対して、荻原は剣柄でモモの背中に打撃を加えようとしたが、足で防ぐと勢いと利用して器用に反対側へと回り込んだ。
「ふふ、抜群の躱しでも、
密着して放つこの技は避けようがないわ。
ハン流格闘術奥義!
山崩峰打!!」
背中に手を付けた状態から振動を繰り返し、内部を崩壊させるその技は絶対に回避できるわけはなく、確実にダメージを与えるものだった。だが、荻原は、何事もなく受けきると背中にいるモモに肘鉄をくりだした。モモは、背中に当てていないほうの腕でガードをするとアンナがいる方向へと前転しながら軽やかに戻って行った。
「あんな口上述べてたのに、倒せてないよ」
「おかしい、打撃が効かない……」
「そりゃそうじゃないの?
攻撃を絶対回避するスキルを持ってるんだから、打撃を防ぐ何かを持ってても、可笑しくないんじゃない?」
「そうじゃなきゃ、神に挑むなんてことしないか……
なるほどね」
「君たちは、すごいね。
あっという間にこちらの手を見破って来るね。
シューリンが戻って来て群れる前になんとかしといたほうがいいかな」
二体に分身をすると各々で攻撃をしかけた。アンアは武器もなく後ろに下がって避けるしかなかった。もう一方のモモも、反撃しようにも絶対回避され、かすらせることすらできなかった。入り乱れた先頭の中、数撃もするとお互いが交差し相手が切り替わった。アンナは今までと変わらず避けることに全神経を集中して対応していた。だが入れ替わったモモの相手は、分身でスキルをもっていないことでみぞおちに当たり、悶絶したところで本体へと投げ飛ばした。荻原は半死半生の分身をしっかりと抱きかかえると、モモはその上から奥義を出した。
「ハン流格闘術 奥義!山崩峰遠打!!」
先ほどよりも奥深くに振動をつきぬけさせることで、二体ともにダメージを与える予定だったが、本体へはぴくりともダメージがいかなかった。技が出終わると分身体は光の粒子にかわり、分身のダメージ分が荻原へとのしかかった。荻原がバックからポーションを取り出そうと手を伸ばした時に、存在を忘れていたアンナが再び元に戻ったレイピアでバックを貫きポーションを取り出すことはできなくなった。
「んぐっ。
やってくれたな」
「少しは、やるじゃない、アンナ」
「当然でしょ、モモだけに活躍させない」
あまりの怒りに3体の分身体を作り出すと、モモは本体がアンナに三体が襲い掛かった。
「だ、だ、だ、
無理だって、また壊れちゃうよ」
慌ててさっきよりも早く後ろへ下がると、真っ白な下着姿のお姫様がシューリンの武器を持ってやってきた。襲い掛かってきた3体の分身を目にもとまらぬ横一閃で攻撃すると一瞬で光の粒子へと変わった。
「ひ、姫様助かりました。
シューリン様は?」
「いいなの」
アンナは、水で透き通って見るに堪えない姿のエレメールに顔が引きつっていた。遅れてやってきたアドアに近づいていった。
「シューリン様は、完全回復ってわけにはいかないけど、肉体は回復したよ。
でも、疲労とマナ枯渇で疲れ切って今は眠りについてるよ」
「そうなの。
ペテは、私の一撃で気絶してるだけなの」
「えぇ、うん。
わかりました。
3人が仲良く話している中で、荻原のダメージはかなり深刻だった。分身の分のダメージは瀕死に近く、気を抜くとその場に膝まづきそうだった。目もうつろになる中、正面には最強の拳士笑みを浮かべ、海からは壊れない武器をもって襲い掛かってる少女と騎士にシスターがゆっくりとこっちへ歩いて来ていた。急に影を差して、反対側の上空を見上げると、あり得ないような巨大な大陸が空からこちらに向けて飛んできていた。




