第530話 新しい喜び
半日が過ぎ、飛空上はゆったりと島に向かってヒビキ一行は向かっていたが、上空の寒空の中いつまでも外にいるわけにもいかなかったため、城の中に入って到着を待っていた。
大きな居間に入ると、カリナがキッチンにいきあたたかな飲み物を準備してくれた。みんなは、カリナが入れてくれた紅茶をのみ心と体を温めていった。
「ヒビキ、まだなの?
もう着いてもいいんじゃない?」
「全然だよ、リイナ。
まだ、半分だね。
この様子だと、あと半日、夜明けくらいになりそうだね」
「あにぃ、これおっそいよ。
あたしだけでも先に行こうかな。
シューリン様が心配なんでしょ?」
「だめだよ。
みんなバラバラで行ったら各個撃破されちゃうよ。
それにシューリン様の戦いの邪魔になっちゃうしさ」
「そうかなぁ、
あたしだって、強いんだよ」
「知ってるよ、すぅちゃん。
でも、せっかく一緒にいるんだから、
またバラバラだと、寂しいよ」
「うぅ、ゆっちゃんが言うなら一緒にいるよ」
カリナは、全員に飲み物をふるまうとポットを置いてキッチンへとでみんなのごはんを作るため、向かっていた。いつも一人でもくもくと二人分の食事を作っていたが、今日はたくさんの人間がいると思うと腕をふるまえると喜んでいた。そんな中、味見としょうしてシルキィとイノさん達がやってきた。可愛らしいシルキィが目を輝かせて料理をみていると、カリナは興味深々オのシルキィに味見と称して一口あげると、飛び上がって喜んでいた。そんなシルキィの態度にますます喜びを感じると、料理ができあがるごとに一口づつあげ餌付していった。
カリナがシルキィが餌付けされている間に、なかなか戻ってこないアメリアが心配して様子を見にやってきた。たまたま、カリナが作っていた〆のうどんの生地を見ると食べるために交渉し、いくらでも作ってあげるといわれ仲直りすることになった。彼女が片手間でアメリアの料理を作っていたが、料理ができあがることに言われていなかったが、二人が食堂へと運んでいった。
カリナもいつもは一人で作っていた料理を手伝ってもらうことで一緒に作る楽しみも見出した。その後作った料理を嬉し気に食べる二人をみて、料理を作る楽しみを再確認していた。
それでも、全員が食べきれないほどの料理の品を作り終えた。
そのすべてを、二人で食堂へと運び終えると、食事ができた旨を伝えるため、シルキィとアメリアがみんなを迎えにやってきた。時刻は、夕焼けに差し掛かり外からの風景は町の明るさしかみえなくなっていた。
そんな薄暗い中、とびきり明るい声が部屋に響いた。
「さぁ、みなしゃん、カリナっちがつくったおいしいごひゃんができってるよぉ」
「あぁ、カリナの美味い料理がたくさんある。
冷める前にいこう♪」
「うん、じゃ、みんな行こうか」
「「うん」」
スズネとユキナが仲良く返事をしている中、リイナだけが心から素直に返事ができなかった。それでもいつもと違い心から喜んでいる姿のカリナをみると自分が情けなく感じ、敵視することはもう止めると誓ったのだった。




