第525話 神候補
ヒビキが扉から戻ってくるとリイナ以外はまだ、眠ったままだった。体感では数刻の時間を感じていたが、外の景色からまるで立っている様子がなくあれからどれくらいの時間がっ経ったのか、リイナに聞いてみることにした。だが、ヒビキが語るよりもリイナが不思議に思ったことで質問し始めた。
「ヒビキ、早かったわね。
どう?何があったの?」
「シューリン様にいろいろ教わったんだけど……
僕が入ってからどのくらい時間がたったの?」
「ほんの少しよ
それより、何があったのかちゃんと説明してよ。
気になるじゃない?」
「そうなんだ。うん、そうだね」
ヒビキは、どこまで伝えるか一瞬悩んだが、全てを伝えることは彼女には理解することはできないとして、ぼかすことにした。それでも、伝えるべきことが大きく二つあり、それだけでも驚くだろうことは理解していた。
「うん、神様にならないかって言われたよ」
「えー、すごいじゃない。
じゃ、もうヒビキ様って呼ばないといけないのかしら?」
「ふふ。
でも、断ったよ」
「何でよ、もったいないじゃない!
なんだって、やりたい放題でしょ」
「そんなわけないでしょ、
僕には荷が重いよ」
「そうかもしれないけど……」
リイナの驚愕の音量によって、他のみんなも続々と起きだし何事がおきたのかと近寄ってきた。そんな中誰よりも早く近寄ってきたのは、スズネだった。自分の妹とそっくりな彼女をみるとヒビキは悲しさと嬉しさで複雑だった。
それでも、とびっきりの笑顔でやってくる彼女をみると、嬉しさのほうがうわまった。
「あにぃ。
何か起きたの?」
「すぅちゃん、聞いてよ。
ヒビキったら、神様にならないかって言われて断ったのよ」
「えーーー!
あり得ない!あたしだったら、絶対なってるのに」
「だよね、だよね」
二人が悔しがってる中、もう一人の幼馴染の彼女は、違うことを考えていた。
「もう、りっちゃんもすぅちゃんも
ヒビキにも何か考えがあるんだよ。
でも……
そうなったら、今度はヒビキ様って慕わなきゃいけないのかな」
「ユキナまで、変な妄想して」
「私は神様でも今までとかわらく接するがな」
「えぇ、そうでありんすね。
あちきは……うふふ」
「カリナは気持ち悪い笑み浮かべないでよ。
アメリアはいつでもマイペースでありがたいね」
「ヒビキは、ヒビキだからな。
私はいつでもお前の味方だ」
「そんなの当り前じゃない。
ねぇ」
「そうだよ、あたしだって、いっつもあにぃの味方だよ」
「お前はそういうけど、
スズネは僕だけじゃなくみんなの味方だろ」
スズネは、ヒビキの返答に親しみを感じたが、距離が近づいたような遠くなったような複雑な感情を感じた。
「まぁ、そうだけどね、えへへ。
なんか、雰囲気が前と変わった気がする」
「そりゃ、ヒビキだって、いろいろと旅したんだから、当然でしょ」
そんなリイナの援護射撃もユキナがスズネの意見に従ったことで、振出しに戻った。
「すぅちゃんもそう感じる?
私もそんな気がする。塔の時となんか変わった気がする」
「そうでありんすか?
あちきにはいつも通りの素敵な殿方でありんす」
カリナの適当な発言に対し、リイナがいらっとくると噛みつくことにした。
「うっさいわね、あんたは早く帰って魔王様に叱られ解けばいいのよ」
「こわいでありんす」
カリナが怖がった演技をしながらヒビキの後ろにぴったりとくっつき豊かな胸は押しつぶされると、感触がヒビキに伝わり顔がほころんだ」
ヒビキのにやけた顔に更なるイラつきを感じたリイナは、怒りの矛先をカリナにぶつけた。
「何、にやけてるのよ。
それにそこのアホ悪魔早く離れなさいよ!」
「そうだ、まったく」
リイナとアメリアによって強引に二人が離されると、いたずらっぽい笑いの中スズネが同じように抱き着いてきた。
「ふふふ、今度はあたしが背中にくっつばんだ」
ヒビキは、子供の頃の仲の良かったころをを思い出し苦笑いを浮かべた。
「もう、スズネ、子供じゃあるまいし」
「やっぱり、あにぃはなんか変わったね」
振り向いて見つめるヒビキの目には、その後のことを思い出しうっすらと涙が浮かべながら、優しくスズネの頭を撫でた。
「もう、くすぐったいよ、あにぃ、えへへ」
スズネは嬉し気にしていたが、ユキナはヒビキの変化を感じ取っていた。
「やっぱり、シューリン様に会って、
なにか変わったんだね、
私にはわからないけど」
「そうだね。少し神様の力を譲り受けたんだよ。
一応、次期神様候補になったんだ」
「「「「「「えーー」」」」」
「断ったんじゃないの?」
「断ったけど、引いてくれなくてね。
暫定ってことで」
「もう、先にそれをいってよ」
「でも、シューリン様より、早くヒビキの寿命がきそうだけどね」
「そうだな。
竜人はエルフよりも長生きだからな」
「それが、シューリン様がいうには、もうすぐ倒されるだって」
「「「「えーーーーー」」」」
全員が目を丸くして驚愕している中、シューリンを助けにいくため重い口を開くのだった。親友を倒しに行くために。




