第522話 真実はほろ苦い
シューリンが微笑みから、真顔に戻り覚悟を決めてヒビキに話しかけた。これから告げる真実が、マイナスの事実しかなくプラスの要素がまるでなかったからだ。
「お主も少しは欠片を聞いているじゃろう。
エスサハカ大陸の男性への呪いじゃ」
「ええ、他の大陸から攻め込まれたから、ジルが呪いをかけたって話ですよね。
でも、僕が聞いた話では、他の大陸からせめられそうな要素なんてまるでなかったと思います」
「そのとおりじゃ。
そんな話はないのじゃ、事実はこの大陸にはまるで関係がなかった話なのじゃ。
実際は、第二エリアのサーバ陥落。
ヒビキとオギワラの二人によって起きた管理者殲滅によるのっとり対策が失敗したのじゃ。
新Versionで使用した薬剤があわなかったことで、XY染色体は全員死亡したのじゃ。
それでも、4大陸全てではなかっただけましじゃがな」
「……ぼくのせいですか?」
「それは違うな。
急遽いれると判断した奴のせいじゃな。
もっと慎重に対応していればそんなことありえなかったのじゃ」
「ぼ、ぼくは、そんなこと初耳です」
「だろうな、政府はひたがくしにしたからな」
「じゃ、耳伝えの呪いのせいじゃないんですね>」
「そうじゃ。
そこは、魔王全員を含めて決めて呪いにせいということにしたのじゃ」
「そうだったんですね。
でも、おじいちゃん魔王はしらなかったようですね……」
「そこのころは、奴は引退しておったからな。
知らんでも仕方がないのじゃ」
ヒビキはとりあえず納得したことでこの話を終え、どうしても聞きたい話題へと変わっていった。
「このエリアでは、どうすれば、みんなが解放されるんですか。
僕は、全員を解放したいんです!」
「それは無理じゃ。
第3エリア、、さっきまで、おぬしがいたとこじゃ。
そこまでは、先ほどのやり方でもどれたのじゃが、
シンVerによって、こちらからの出口は完全に封じられているのじゃ」
ヒビキが絶句したが、それでもあきらめることができなかった。
「でも、なにか、なにか手段が、手段があるんじゃ……ないんですか!」
「わしが考え付く中にはないのじゃ。
解放戦線なら、考え着くかもしれんがの。
流石にわからんのじゃ。
儂がわからんだけで何かあるかもしれない」
絶望しているヒビキだったが、救えなかった妹だけは何とかできないのか、シューリンにすがった。
「じゃ、じゃあ。
スズネもユキナも元の世界に戻せないのですか?」
シューリンは、スズネもユキナも本来のDBでないことを告げ残酷な現実をつげるのだった。
「そうじゃ。
おぬしが妹のスズネを助けにきたことは知ってる、のじゃ。
じゃが、スズネもユキナも本物ではない、本物からコピーしたまがいものじゃ」
「そうですよね」
ヒビキは、自分が救うことができなかった現実を思いだし胸が詰まる思いだった。
「あぁ、解放戦線にいたおぬしも知っているように、ここのプレイヤーではない。
プレイヤーのDBをコピーしたNPCじゃ」
「……そうですよね」
「NPCのコピーデジタルブレインでは、本体との接点がないから第三エリアであったとしてもむりじゃ」
解放戦線で得た知識をフル活用してもちっともアイデアがでなかった。
「えぇ、そうですね。
少し夢を見ただけです……」
そして、ヒビキがどうしてこの世界にきたのか、本当に知りたかったスズネの理由を知るのだった。
「それでも、おぬしが知りたがっていたスズネがここに来た理由はだいたい推測できたじゃろう」
そしてヒビキは、子供のころからスズネと仲のよかったユキナを思い出した。
「えぇ、親友のユキナをこの仮想世界から救うためなんでしょ?」
「そうじゃ。
ユキナがここに来た理由はふせとくとして、
スズネがきた理由は、親友を救うためじゃ、ユキナをこの世界から現実へと連れ戻すためじゃ」
「まったく、何も考え無しで、政府が推進した仮想世界のシステム”SWTH”通称 自己価格システムへいくんだから、困った妹です」
「おぬしのいうとおりじゃな。
ここへの接続の際に、全てのアクセスを制限され、親友のことも忘れてしまうというのに」
「昔から、なんにも考え無しで突っ込んでいくんだから……」
シューリンはヒビキと共に苦笑をすると、スズネについて語り始めた。妹の評価が高いことに悲しみの中、ほんの少しだけ嬉しさを感じた。




