第521話 絶望へと陥る
「おぬしは、自分の名前以外は、わかわからないじゃろう?」
「はい、僕は、なんでここにいるのかも、
名前以外何も分かりません」
ヒビキが思い出そうとしても何を思い出せばいいのかもわからなかった。
「だろうじゃな。
それを今から判るようにしてやるのじゃ」
「それは、どうやって?」
ヒビキが質問している最中、シューリンが掌を頭にかざした。シューリンは、DBへの接続権限を解除するとヒビキは、育ってきたこれまでの人生や知っていた覚えていた情報を知ることができるようになった。それによって、ヒビキはこの世界に来た理由を思い出し絶望した。
彼が絶望している中、シューリンは悲し気な表情へとなると全ての質問に答えるため口を開くのだった。
「確認じゃが、君がどうしてここに来たかは、思い出せたのじゃな?」
「ええ、妹を助けたはずだったのに、僕のせいで殺してしまったからです。
そんな自分自身を許せなかったから……
世界に絶望したんです……」
そうここは、政府が管理する自殺志願者が集まるVR空間。2世紀前に作成されたVRゲームを巨額の投資を行い、脳を電子化しアクセスする場所を制限しているのだった。現実世界に疲れた人間を一元管理し、体へは栄養を与えることで生き続け、現実世界の苦悩や過去を忘れさせ、異世界でもう一人の人生を健やかに過ごさせることを目的としていた。
「そうじゃな、仕方あるまい。
誰もそなたを責めるやつはおるまい」
「そうですかね、
僕は、自分自身が許せないです……」
「うむ、判らないでもない。
……まずは、自分をみようかじゃ
ヒビキは、言っている意味が直ぐに想像できた。過去にここから妹を救うため、いろいろと調べたからだった。シューリンが合図をすると、真っ暗な暗闇から近代的な金属の塊を上下左右に広がっている空間へとやってきた。その足元には、何千ものカプセル型の機械があり中には人が多数眠っていた。シューリンが連れて行った先の下には、見覚えのある顔が眠っていた。
「これは、僕ですが?」
「あぁ、隣が最上由香里じゃ、その隣が捧 菜々じゃ。
おぬしも知っておろう」
「えぇ、ナナさんですね。
ナナさんもドロップ組だったんだ。
全然、そんな様子はみえなかったんだけど……」
ヒビキは、リイナの分析したユカリとナナの話を聞いていなかったため、彼女たちの欠点を知らなかった。
「流石のわしでも、彼女たちのプライバシーに入ることを教えるのはためらうのじゃ。
おぬしが知りたいなら、知れるようにすることも可能じゃ」
「大丈夫です。なんか、のぞき見みたいで、どうかと思いますから」
「お主ならそういうだろうと思ってたのじゃ」
そして、ヒビキは、妹を殺さずにどうすれば妹を救うことができたのか聞いてみることにした。
「あ、あのとき、僕の何がいけなかったのですか!。
どうすれば、どうすれば、助けれたのですか?」
「そうじゃな。
第2エリアは、サーバ管理者の全員削除と強制ログイン後のネットワーク切断でのサーバ再起動でみんなを元の現実へと戻せたのじゃ。
あの時は、ネットワーク切断をしなかったため、異常を検知したシステムによって、強制電源オフがかかり、生命装置が切れたのじゃ。そのとき、現場に誰かいれば、何とかなったろうが、誰もいなかったのが災いしたのじゃな。その後は、誰も接続できなくなり、一人も見ることができなくなったのじゃ」
「そうだったんですね。
それに、シューリン様、管理者でもみえないのか……」
「ネットワークが遮断されてるのじゃ。
その地域一帯みえないのじゃ」
ヒビキは、それ以上の内容を聞きたくないと考えたため、別の話題を振ることにした。
「そういえば、第三エリアは、あと一人で解放でしたね」
「そうじゃな、あのサブ管理者がいなくなれば、なりすましで入れるのじゃ。
後は、物理的にネットワークを切断する準備が足らなくてまってたんじゃな、きっと」
「じゃ、僕が彼らを倒さなければ、今回は解放できたんですか?」
「そうじゃな。
その可能性が高かったじゃろう」
「僕はなんてことを……」
「おぬしも見たじゃろう。村や町でたくさん暮らしていたNPC達を。
彼らも、一気にしんでしまうのじゃ、おぬしは彼らを助けたのじゃ」
「そうなんでしょうか……」
「それに、ここに来た人間が戻りたいと思うかも大事だろう」
「そうですね、僕は妹だけしか考えてなかったです……」
「答えは一つだけではない裏と表があるのじゃ」
そして、シューリンは政府が隠したヒビキですら知らない第四エリアで起こった大虐殺を語り始めた。




