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僕は、この出会いに感謝する!!  作者: 寿々樹ノ葵
第四部 解放戦線から、解放せよ
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第517話 戦わずに勝ってみよう

カリナの高笑いがフロア中に響いている中、一間が空くとフロアには美しい声が聞こえてきた。

「あはははははっ、ふふっ、

 あんしゃは、最初から罠にかかってるでありんす。

 あちきらは、二人を助けるのが目的でありんす。

 あんしゃにゃ、まっっったく、これっっっっぽっちも興味ないでありんす」

「なんだと!

 どういうことだ!」

 まだ笑ってるカリナと血走ってる目の彼を見ながら僕は落ち着いて会話を始めた。

「セキさんだったら、戦うって義理もあったのかもしれないけど……

 君が勝手に攻撃してきただけだろ。

 二人を助けれればそれだけで十分なんだよ」

「だとしてもだ!

 俺を倒さなければ、上にはあがれないぞ。

 最強のこの俺をな!」

 彼は、大声で話すことでようやく落ち着いたのか、カリナを睨みつけながら表情は普段へと戻っていた。


 彼の中心とした床以外がだいぶなくなったのを見た僕は、()()()()と判断し、そろそろ彼に真実を伝えることにした。

「君は、すでに最強ではないんだよ。

 だって、セキさんのスキルは、ここの魔物依存で強くなるんだよ。

 だから、ここの魔物は一階から()()消し去ってきた」


 信じられないのかヨシワラは、口を開けたままぽかんとしていた。

「な、なんだと、

 そ、そんなことできるわけないだろ。

 すべての魔物を消し去るなんて」


 驚いている彼をみてカリナは完全に落ち着き、冷静に応答した。

「あちきは、この塔の管理者でありんす。

 この塔でできないことはないでありんす。

 魔物を消し去ることや床を失くすことなんて簡単でありんす」

「だ、だからと言って!

 い、いや、信じられない。

 だが、この迫ってくるこの溝はなんだ、なんなんだ!

 ま、まさか」

「ふふふ。

 そうでありんす。

 それは、全フロアの床を失くして、一階まで通じる落とし穴でありんす」

「バ、バカな。

 落とし穴なんて、一フロアだけだろ、

 そ、それを、全フロアなんて!

 冒険者だっていただだろ、床をなくすなんてあり得ない!!」

「そのために、わざわざ一階から冒険者に、退出いただいたんだよ。

 どこに君が立ち止まるか判らないからね」


 カリナはにやりとすると最後に彼にトドメをさした。

「ふふふ

 あんしゃは、そこで大人しく真下まで落ちてゆけばいいでありんす」

「な、なんだと

 正々堂々戦え!

 それが、英雄と呼ばれた奴のやることか!!」

 僕は、やれやれといったしぐさをすると

「また、セキさんの時のように負けるかもしれないしね。

 なんたって、君が他にどんなスキルを持ってるか判らないからね」

「ぐぅう」

 あきらめたのか彼は、唸るとその場に屈んだ。彼の足元と僕ら以外の足元までの床はなくなり、間もなく彼の足元も無くなろうとしていた。その刹那、足元もなくなる瞬間に、彼はこちらに向けて飛びこんできた。その勢いは、常人のジャンプ力とは思えないほどで、数十メートルまで広がっていた溝を軽々と飛び越えこちらまでやってくることが直ぐに理解できた。


 彼は、跳躍をしながら笑い出すとこちらに向けて話しかけてきた。

「はは。

 お前の想像通りだ。

 おれのスキルなら、こんなちっぽけな溝なんざ、ひとっとびだ」

「だと思ったよ。

 そんな簡単にはいかないよね」

 僕は、杖から剣を抜きさると向かってくる彼に向けて投げ付けた。全力で投げた仕込み杖は彼の体を通過し、反対側の壁に突き刺さった。彼の胴体を貫いたことで跳躍は若干失速し後数メートルというところで溝へと落ちていくはずだった。だが、彼はスキルを使ったのか、床を復元し傷もあっという間に元に戻っていた。

「ほんとにこのスキルは便利だな、

 体や、フロアまで元に戻せるんだから」

 彼が呟いて飛び立とうとした瞬間に、彼が復元した床はなくなり空中で足を延ばしたまま、まっさかさまに落ちていった。

「復元したら、また消せばいいでありんす」

「うわぁぁぁぁ」

 彼の絶叫を聞きながら、落ちていくのを見ていたがあっという間に暗闇に紛れ姿が見えなくなった。


 しばらく眺めていた僕とカリナだったが、完全に声も途絶えたとこでカリナが口を開いた。

「これで、倒せるでありんすかね」

「さぁ、彼のもってたスキルで死なないかもしれないね」

「どうするでありんすか?

 彼が戻ってきたら」

「ふふふ、心配無用だよ。

 既に、手を打ってあるよ。

 僕らよりも強い人にお願いするように言ってあるよ。

 僕の予想では、喜々としていってくれる思うけどね」

「だれでありんすか?」

 僕は、にこやかな表情を浮かべるだけで答えは言わないことにした。

「さぁ、みんなが待ってるよ、

 頂上に行こうか?」

「はいありんす」

 カリナが、フロアを元に戻し床を作り出すと、上階へとあがる階段をつくりだした。

 僕らは、ゆっくりと階段を登って行くと、少し明かりが見える星空が見えていた。

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