第516話 ヨシワラと戦ってみよう
カリナが、階の壁と魔物を全て無くしのぼり階段だけを残すと、とこちらへ態勢を向き直した。
「さて、この後どうするでありんすか?」
「そうだね、今から彼に攻撃するから、そうしたら彼は、絶対にここにやってくる。
で、彼がここに来たら、ユキナを一階に戻して、リイナとアメリアのところに行って貰って二人を助けださせる」
「うん、なんとなく判った、任しといて」
「でも、ここからどうやって、攻撃するでありんす?
天井を突き抜ける事なんて、むりでありんすよ」
カリナが、不思議そうな顔をしている中、僕は自信満々に答えた。
「まぁ、任しといてよ。
魔王直伝の魔法があるんだから」
「そうなの?
私もみたことない」
ユキナは興味津々に、カリナは訝し気にしている中、僕は魔法のイメージを固めて、彼が寝ていたであろう場所目がけて魔法をはなった。
「魔王呪殺掌!!」
天井付近に魔法陣が現れゆっくりとした呪いの手が天井を突き抜けて、眠っていた彼を掴むと空中へと浮かびあがった。彼は直ぐに目が覚めて振りほどこうとした感触が呪いの手から伝わった。
僕は、ゆっくりと呪いの手を下へと引き抜くと彼の体力の8割を削った感触が伝わってきた。
「どうやら、うまくいったみたいだ」
「そのようでありんすね。
奴が、はしって階段に向かってきてるでありんす。
さて、ユキナ様また後で会いましょう」
「うん、カリナ。
ヒビキも気を付けてね。
上でみんなで待ってるね」
「うん、あとでみんなで会おう!」
僕らの別れが終わるとカリナが直ぐに鉄扇で空中を仰ぎ、傍にいたユキナは光り輝きその場から消え去った。その刹那、階段からはどたどたと駆け出してきたヨシワラやってきた。
「なんだ、あれ。
どうなってんだ。
なんのスキルなんだ。
そんなことは、もういいや。
お前らか、そんなに死に急ぎたいのか。
せっかく、先輩を称えて、見逃してやったっていうのに」
焦っているのか早口でしゃべり終わると、僕らの姿を見たことで、落ち着きを取り戻したのか、最後はゆっくりとこちらに歩いてきた。
それでも、直ぐ近くには近寄らずそこそこの距離で対峙することになった。
「ふん、今度はそうはいかないでありんす。
あなたを倒して、魔王様を救うでありんす」
「ふん、最強のスキルを幾つも持つ俺に攻撃なんか通じないぞ」
自信ありげに呟く彼に僕はしたり顔で語ってやった。
「でも、魔王の掌は、きいたでしょ?
あれは、割合ダメージだからね」
「くっ、卑怯な手を。
だが、二度と同じ手はくらわないぜ。
あんな遅い攻撃!
それに食らったダメージももう元に戻ってるからな!!」
彼は僕らをにらみつけるとバックから剣を取り出しゆっくりとこっちへ歩いてきた。
僕は階段から離れた彼をみると、背中に手を回してカリナに合図を出すと、二人でゆっくりと後ろに下がりながら、彼が使った登り階段を消し去った。彼の視線は、さがっている僕らに夢中で後ろの階段が消え去ったことに気づいている様子はなかった。
「ダメージがないだろうことは、知ってたよ。
だが、君はもう最強じゃない」
「は、馬鹿じゃないのか?
セキさんのスキル見ただろ、お前の最後の一撃みてたぞ、ははん。
少し傷つけたんだから、すごいって褒めてやるよ。
それでも、俺はセキさんを倒したけどな」
彼が奪い取ったスキルだろうが、それでも彼のものだとは思えない僕は、思わず苦笑せずにはいられなかった。
「ふふふ」
「何がおかしい?
俺はお前なんか一撃のもと倒せるんだぞ」
「そうかもね。
君は、ほんとに最強じゃないんだよ。
そう思うんだったら、僕の一撃を受けてみるといいよ?」
「はん、安い挑発しやがって。
まぁ、いいさ。
好きなだけ、攻撃してみればいいだろ。
どうせ、ほんの少しのダメージしか食らわないからな、やってみろよ」
後ろのほうで、カリナが背中を叩いたことで下のフロアの準備が整ったようだ。
僕は魔法のイメージを固めると彼に向けて放った。
「火の玉」
僕の杖から放たれた魔法は、彼に向けて一直線に向かっていった。放った瞬間に後ろを振りむくと、その後ろではカリナが最端まで下がって待っていた。
僕は急いでカリナに向けて走ってむかった。僕とカリナの間には、少しずつ溝ができており徐々に広がって行った。僕は、全力でその溝を飛び越え転がりながらぎりぎりでカリナの足元へと着地することができた。
僕はヨシワラのほうを振り向くと火の玉で全身が火炎にまみれており、結構なダメージをおっているようだった。全身のやけどを負っていたようだが火が消えると、スキルを使い直ぐに全回復していた。
そして、僕らをみて大きな距離が開きだんだんと広がる溝も不審に思いながら、疑問を感じている表情を浮かべていた。
「な、なにが起きてるんだよ!
セキさんは、あんなにダメージを受けていなかったじゃないか。
それに、お前たちは俺を倒しに来たんだろう。
なんで離れてるんだよ!!
この溝はなんなんだよ!!!!」
彼の絶叫で、カリナは心の底から面白かったのか、大きな高笑いがフロア中に広がった。




