第515話 99階まで一気に登ってみよう
この後も、順調に3人で階段を登って行った。魔法陣のある30階付近が一番冒険者が多かったが、そこを超えるとだんだんと減っていった。それにともなって、それまでの歩みは遅かったがカリナの鉄扇をふる回数が減っっていった。
それでも、だんだんと
「順調だね、
階段を上がるのもつかれてきた」
「カリナが頑張ってるおかげだね。
ありがとう」
「いいでありんす。
さっさと、登り切って二人を救うでありんす」
カリナが笑顔でこちらをみると疲れた様子はなく、まだまだ先へと進めそうだった。
この後、特別なことを起きず、若干の罠をカリナに仕掛けられながらも、二刻ほど塔を登って行くと、カリナが久しぶりに声を出した。
「ここがありきが知る中で、冒険者がきた最長部でありんす」
「へぇ、そこを私たちが超えるんだね♪」
「っていっても、何も冒険してないんだけどね。
でも、ここを超えられない理由がなんかあるの?」
「そうでありんす。
ふふ、巨大なドラゴンがここを守ってるでありんす。
大抵の冒険者はブレスの一撃でやられるでありんす」
「そうなんだ。
へぇ~
戦ってみたい気がするけど、残念だけど今は先を急ごうか?」
「そうだね、すぅちゃんが心配だしね」
「っていっても、もう消したので見ることもできないでありんすけどね」
「う~ん、残念だね。
一目くらいはみたかったね」
ユキナは残念そうなそぶりを見せず楽し気に僕に話してきた。
僕は、ユキナを楽し気にみると、
「ふふ、機会があれば登ってみるのもいいかもね」
「そうでありんすか。
興味がありんすかぁ。
2人が昇ってくるのを楽しみに待ってるでありんす」
ユキナは、カリナの発言を聞いて思うところがあったのか僕に質問してきた。
「そういえば、ヒビキ、この後どうするの?
二人を助けた後」
カリナもユキナのように気になったのか、2人して歩みを止めてこちらを見てきた。
「あちきもそれを聞きたったでありんすよ」
僕は夕方の彼を思い出し、考えていたことを口にだした。
「あぁ、僕を助けてくれた彼が神と魔王を討伐しにいくっていってたから、止めにいこうと思ってる」
ユキナは納得したようだったが、疑問に思ったことがあったのかカリナのほうに顔を向けた。
「そうなんだ。
そうだ、カリナ。
この大陸で元に移動するのって、船しかないの?」
「ユキナ様がいらした陸路もあるでありんすが、
感嘆なのは船でありんすね」
僕は想像どおりの答えに納得するとカリナと話をすることにした。
「やっぱり、その二つしかないのか」
「ふふふ。
そうじゃないでありんよ。
まだ一つあるでありんす」
「なんなの、カリナ。
陸、海ってきたら……もしかして?」
僕がその考えに絶望している中、カリナは言うか言うまいか迷っているようであった。
「我が魔王様なら、塔の頂上にある城を浮かせて移動できるって聞いたことがありんす。
あちきも見たことがないでありんすが……」
「そうなんだ。
それは、乗りたくないなぁ」
「ヒビキは、空の移動嫌いだもんね」
「できれば、船か馬車がいいなぁ……」
「ふふふ」
いくつかの会話が終わり僕らは、再び登り始めた。この後も順調に登っていくと二刻ほどで90階へと昇りついた。
そんなゆっくりな僕らの塔の攻略も、あと少しで頂上へと到達する予定だ。
「あと少しだね」
「そうだね、
間もなく夜も明けそうだし、そろそろ時間も限界がちかいよね」
「ヒビキ様のいうとおりでありんすね。
今までのペースだとあと半刻ほどで頂上でありんすね」
「そうだね。
さぁ、あと少し慎重に進もうか」
「そうでありんすね」
この登頂も最後だと思うと長い間登って疲れた両足も、少し軽くなった気がした。だがその分、この後の一戦を考えると緊張し気持ちが少し重くなった。
それでも、気持ちを切り替え一階一階丁寧に登っていき、計画実行となる99階へとたどり着いた。




