第512話 初級冒険者を助けてみよう
僕と二人の間にいた邪魔なゴブリン二匹を背面から撫で斬りにして近づいて行った。
倒れている二人が僕らの存在に気がつくと
「大丈夫か、君たち。
手助けさせてほしい」
「ありがとう、助かります」
シスターはすがるような目でこちらを見たが、前線で気を張っていた彼は、ちらりと見た目には、怒りがにじみでていた。
「あんたたちのせいで、こんなことになったんだろう。
どうしてくれるんだ!」
「そうだね、ほんとに申し訳ない」
「いいんです、謝らないでください。
リューイ、素直に手伝ってもらいましょうよ」
「いやだ。俺一人でなんとかできたんだ。
あんたらが、邪魔しなければ!!」
「君の提案になんでも従うよ。
僕らはどうしたらいい?
君の代わりに二人を守るでいいかい?」
「それじゃ、俺がダメージを与えた分がわりに合わない」
「じゃ、半分のゴブリンは僕が討伐する。
そして、2人も僕らで守るでどうかな?」
「それじゃ、ほぼ倒し切ってたゴブリンが半数なんて、納得できない」
彼は、剣を前にゴブリンに威嚇しているだけで、話してる間も一匹たりとも傷つけれていなかった。
「もう、リューイわがままばかっかり。
私達には、まだ早かったのよ。
素直に全部倒してもらいましょうよ」
「いやだ、俺は絶対やれるんだ」
「じゃ、僕が、リーダー以外を倒すから、リーダと君で戦ったらどうだい?」
「りーだーって、どれ?」
僕は大きなため息をつきそうになるのをこらえ目線でリーダーを指した。
「ゴブリンの後ろで一回り大きなやつだ。
あれがこいつら指示してるんだよ、こちらを逃がさないように包囲させてる」
僕が倒した二匹分の穴は、いつの間にか他のゴブリンで塞ぎ、逃げ道はなくなっていた。
「じゃ、それでいいよ、できるか信じられないけどな。
さぁ、あれ以外を倒して見せろよ」
「了解、これで交渉成立だね。
任せてよ」
僕は、剣をしまい魔法の杖をとりだすと、左から順にゴブリンに対し魔法を唱えていった。
「火玉」
左にいた二匹を僕の魔法で倒すと右側から3体のゴブリンがやってきた。
「王佐式片手剣術
背一華葬斬!」
僕は、杖から剣を抜き取りながら膝だけ前にだすと、鞘の反動を利用してすさまじい速さの横斬りがゴブリンを襲った。3体は、斬られたことを意識しないまま一瞬で各々が二つへと別れると、光の粒子へと変わって行った。
「全然、みえなかった……
一瞬で、あんなに……」
それでもゴブリンの勢いは衰えず二匹のゴブリンが正面から襲ってきた。僕は、ペテさんが放った魔法をイメージしゴブリンを後ろへ下がらせることにした。
「炎の掌」
僕は、後ろにそらすつもりで放った魔法は、二匹を吹っ飛ばしつつ燃やし切った。残る5匹になったゴブリンは、一気に僕へ向けて攻めてきた。僕は杖をしまい黒赤剣を取り出すと一匹づつこちらにたどり着く前に倒していった。
リューイという若い冒険者は、少し離れたところで、僕の動きをみながら呟いていたのご聞こえてきた。
「す、すごい。
これが熟練の冒険者なのか……」
僕が、ゴブリンリーダー以外の最後の一匹を倒すとリューイの傍へと近づいた。
「さぁ、君の出番だよ。
最後によろしくね」
彼は我に返ると、ゴブリンリーダに向けて上段を構えて走っていった。そのぎごちなくどかどかと音を立てている様は、あぶなっかしさしか感じられなかった。
「ぼ、ぼくだってやれるんだ。
絶対に倒してやるんだ」
彼のつたない突撃は、ゴブリンリーダがなんなく避け、さがりながら彼の首筋へとさび付いた剣を振り下ろした。
「し、しまった」
僕は、急いで彼に近づき、走りながら彼の尻を強く蹴飛ばすとつんのめりながら前方へと転がって、なんとかゴブリンリーダの攻撃を避けることができた。
「ごめんね、足がつまづいちゃった。
次は、びしっとね」
「うっ!
今度は、手出しすんなよ」
その場に立ち上がると、反対側からよたよたとした歩調でゴブリンリーダーに突撃をしたが、このままでは先ほどと同じく難無く避けられる反撃されるのが明白だった。
僕は、こっそりとゴブリンリーダに近づくと全力で背中を突き飛ばした。バランスを崩しながら勢いよく彼の前につんのめると、剣に吸い込まれるように突き刺さり、光の粒子へと変わって行った。
「いい突撃だったね」
「そ、そうだろ、
あんなの一撃だぜ!」
顔が引きつりながらも、目をおよがせながら仲間へと近づいて行った。
「もう、リューイったら、二人にちゃんとお礼をいいなさい。
お二人のおかげで命を助けていただきました。
ありがとうございました」
ユキナは、全ての戦利品を集めて持ってくると、彼女へ手渡した。
「いいんだよ。誰も怪我しなかったんだから、それが一番だよ」
「いただいていいんですか?
私達たおしていないのに」
「いいんだよ、君たちの敵だったしね」
「そうだよ。
もら、もらっとけばいんだよ」
「もう。
ほんとに助かりました。
じゃ、リューイ、戻りましょう。
みなさんも戻られるなら、一杯おごらせてください」
僕は、手で否定をすると、
「いえ、僕らは、これから上階で用事があるので、ここで」
「わかりました。では、ここで失礼します」
「あ、ありがと」
ヒューイと呼ばれた彼は、恥ずかしそうに小さな声でお礼を述べると魔法使いを抱きかかえて、大部屋の後ろにあった魔法陣に入り3人は地上へと帰って行った。




