第510話 塔を封鎖してみよう
ユキナがのぞき込むようにこちらを見ると楽し気に話しかけてきた。
「ふふ。
りっちゃんも、アメリアもすっごい顔してたね」
同じように反対の腕からカリナも意地悪そうな顔でのぞき込んできた。
「そうでありんすね。
ざまぁ、でありんす」
僕は、呆れたような表情を浮かべると、
「もう、仕方ないじゃないか。
カリナがいないと、この作成は、うまくいかないんだから」
「そうでありんす。
もっと頼ってくれていいでありんす」
二人は僕の両腕にさらにぴったりとくっつくと、大きなふくらみの温かみが強く感じられた。
あの二人じゃ、こうはいかないよな。
僕が天にも昇るような気持ちの中、僕はカリナに向けてお願いした。
「じゃ、塀を封鎖して、誰も入れないようにして」
「わかったでありんす」
ユキナは不思議そうに僕を見つめていた。
「それって、意味あるの?」
「あるかもしれないし、ないかもしれない」
僕の返答で納得はしてなさそうだったが、それでも僕の言うことを聞いてくれるようだった。
「お願いされたで、ありんすから、
さくっとやるでありんす」
僕らが、歩きながら塔がある塀の中に入ったとたんに門が閉まるかのように、地べたから同じくらいの塀が盛り上がり隙間が無く塞がった。
「うん、流石だね。
おみごとだよ」
「ふふふ」
「でも、中には誰もいないね」
「もう深夜だし出るのは魔法陣だろうから、ここは使われないだろうね」
僕の返答でユキナは納得したのか大きく頷いた。
「なるほど」
「じゃ、塔の入口も閉鎖しよう」
「そっちも、塀を閉じれば、もういらないんじゃない」
「確かにそうかも、念には念てやつで」
僕らは、塔の中に入ると一階はいろいろな壁で入り込んでおり、先を見通すには邪魔だった。
「じゃ、壁を全部無くして」
僕の発言をきくとカリナは一瞬真っ白になったのか、口を開いたままだった。
「へ?ほんとになくすでありんすか。
あちきが魔王様に怒られるでありんす」
「ついでに、このフロアの魔物も全部消してね」
絶対に僕が納得してくれないと理解したのか、絶望した表情から吹っ切れた表情へと変わった。
「あっはぁ~
ヒビキ様は、悪魔使いが厳しいでありんす」
そんな様子をユキナは楽し気にみて、うきうきの表情でカリナを見つめていた。
「カリナ、はやくはやく♪
なんか面白そうだよ」
「はぁ、ユキナ様まで」
カリナは、一歩前に出るとうんうんと唸ると、全ての壁は無くなり円柱のフロアを見渡すことができた。
そこには、魔物も冒険者も何もいなかった。
「よし、ここは大丈夫そうだね。
次のフロアに行こうか」
「あっちに階段があるよ」
「じゃ、カリナ、ここに階段移動させて♪」
「悪魔使いがひどいでありんす」
そうはいっても、ちゃんと移動させてくれると、僕らは上の階へと昇って行った。




