第503話 覚悟を決めてみよう
リイナは、目を丸くして
「な、なんで、こんなことに。
こんなのになるの、なんで、なんで……」
「あ、うぅ、ご、ごめん。
後でちゃんと話すよ」
だが、リイナは、茫然自失としてその場にくずれたまま、一点をみつめたまま動けていなかった。
その様子をみていたアメリアは、首を振って正面へと身構えた。
「これはだめだな。
あとで、説明しないといけないな」
僕らの様子をみていた初老の男性が無表情のまま、こちらに迫ってきた。
「話している最中悪いのだが、
こちらも、急いで戻らねばならん。
そっちの悪魔を引き渡してもらおう!
それに、ヒビキ君一行は、妹と合わせ客賓として扱わせていただく、
それじゃ、駄目かね?」
僕は、首を横に振ると、
「それはできません。
カリナとは、共にスズネを助けると約束しましたから」
「相変わらず、決めたらひかないな、君は。
俺としては、君とは敵対したくないんだが……
後ろにいるキシマ君もそう思ってる」
彼が後ろに振り向いたところで、カリナがにらみつけたまま口を開いた。
「あちきは、あんたらを許さないでありんす」
カリナは、話の途中で鉄扇を握りしめると、リイナの時よりも早く彼の首に向けて一撃を入れた。
その一撃で確実に首を落としにかかっていると判ったが、彼女の行動を止めるには遅すぎたようだ。鉄扇は的確に首にあたったが、薄皮一枚も傷ついておらず、一切のダメージを負ってる感じがなかった。
「くっ!」
彼の反撃の上段おろしを紙一重で躱すと反対の首に同様に回転しながら、一撃をいれたが反対側も擦り傷一つ付けれていなかった。
次の攻撃が来る前に彼女は、数歩急いで戻ると彼の攻撃は空を裂いた。
「こうなんで、ありんす。
奴には、傷一つ付けれないでありんす」
後ろで考えているユキナが小さく呟いた。
「スキルかな。
聞いたこともないやつなのかも」
「だな、それはありえる。
これは、やっかいだな」
僕らが渋い顔をしていると、一瞬高笑いをした後、戦闘の覚悟をきめたのか、吠え始めた。
「全員がかりで構わんぞ。
さぁ、かかってこい!!」
アメリアは、呼応するように剣を取り出すと彼に向けて走り出した。その姿は、三人のアメリアがいるように見え三つの姿が見え、三方向から上中下と突きをいれようとしていた。
「サンライズトリプルトラスト!」
彼女の必中の一撃は、目にもとまらぬ速度で彼に当たったが、その剣先は一ミリも刺さらないままその場にとどまった。驚愕のアメリア3体をなぎるように横なぎで一撃をいれると、ぎりぎり戻した剣を折られながら数十メートル横に吹っ飛び壁に激突した。
「うぅ……」
「アメリア!」
ユキナが急いで、アメリアに近づいて回復魔法を唱えていた。
「高回復!!
気絶していただけみたい。大丈夫だよ」
いつの間にか上空に飛んでいたカリナが高さを生かした超高高度からの一撃を彼の頭へと叩き込んだ。だが、それでも、身じろぎすらせず傷もついていなかった、彼は、頭で止まっていた鉄扇を握りしめると、彼女ごと地面へとたたきつけ、地面には彼女を中心とした大きな螺旋状のヒビができていた。
「ぐはっ」
「ユキナ、こっちも頼む」
「あ、はい」
ユキナが走ってこっちに向かってくる中、彼は地面にある石を拾うとユキナに向かって投げだした。
「ユキナ、避けろ!」
僕の絶叫も、影でみえなかったのか驚いただけで理由までは理解できなかったようだ。
「えっ!?」
その石は、目にもとまらぬ速度で彼女に突き刺さると、ごろごろと転がりつづけ、やがて塀ぶつかるとその場で気絶していた。
「ユキナ!」
僕が慌てて、ユキナのほうに向かって走っている中、小さな悲鳴が聞こえた。慌てて後ろを振り返ると、彼の足元には、意識を失ったリイナが転がっていた。
「わるいな。
魔法使いに反撃されて、後ろの部下に攻撃されるとまずいんでな」
「さぁ、ヒビキ君。
君以外は、全滅だ。
諦めて投降してくれ。
そうすれば、全員回復して。
この後は、客賓として扱おう。
賢い君なら、今の状況は判断できるだろう」
僕は、絶望のようなこの状況の中、滅されるであろうカリナを一瞬みると彼の言う通りにすることはできないと死地に向かうしかなかった。




