第502話 ミスリルの剣を受けてみよう
僕は恐る恐る口を開いた。
「だいたい話は、聞こえてきたんですが、
僕はあなたたちのことを全く知らないんだけど……」
「やっぱり、正規入場なんだね……」
「信じたくなかったけど、納得できないわね」
「あぁ、だろうな。
俺もできないからな。
荻原くんなら向うの神も退治できるだろう。
それなら、チャンスもある!」
「ねぇねぇ。
これ、まだ続くのかな。
そんな過去の人間、どうでもいいでしょ」
彼は、虹色に光るミスリルの長剣をバックから取り出すと鞘から抜き出した。
「セキさんが、やんないなら、俺がやっちゃいますよ」
「ちょっと、待ちなさい!
まだ、話をしてる最中なんだから!!」
「あんたたちは、過去の関係で戦いづらいんでしょ。
だったら、俺が代わりにぱぱっと倒しちゃえば、いいだけだ」
「まて、ヨシハラ!
勝手なまねをするな!!」
彼は、セキと呼ばれたリーダーが片手で制止するのを無視し、僕に向けて剣を構えて斬りこんできた。
僕に向けて向かってくる彼の長剣が薙ぎ払うように、左側から胴に向けて横なぎで斬りこんできていた。僕は、左手で杖を構えるときたるべき剣撃に備えた。
「はん、そんなほっそい木の杖で、俺のミスリルの剣を止められるわけないだろう」
「ヒビキ!
黒い剣でうけなさいよ、さすがのその杖でも耐えられないわ!!」
リイナの悲鳴のような絶叫が聞こえたが、その時には杖に剣が切り込まれていた。ミスリルの剣がバターを市ぐように徐々に杖に吸い込まれ、彼の腕が僕の前を通り過ぎて行った。僕は、その軌道上に黒赤剣の切っ先をむけると、彼は剣筋を止めることができなく、腕と彼の剣は胴体から離れていった。
「ぎゃーー、
腕が、俺の腕が……」
腕の先の剣は、綺麗に二つに切り取られその剣先は僕の後ろに転がっていた。
「僕は、微動だにしてないよ」
「キサツ!
ヨシハラ君を回復してやってくれ!!
一緒に、先に戻っていっていい」
後ろで介護してヨシハラという若手を連れた彼女は、下がりながら承諾していた。
「判りました。
では、復元後彼を連れて戻ります」
「ぜってー、あいつをゆるさねぇ!!!!
俺の腕を……
俺の腕を……!」
「いいから、静かに!!
直ぐに腕は戻るから」
彼女は、彼を連れてどんどんと後ろに下がって行くと何かのスキルを使ったのか、切れた服や剣ごと腕は元通りに戻っていた。
「便利ですねぇ、その部分時間操作スキル。
俺もそっちにすればよかったかな。」
「いいから!話はあとで、
後ろの魔法陣から戻るわよ」
彼は、バックから剣を取り出し彼女に見せないように背中に隠すと女性と共に後ろへ下がって行った。
リーダの彼は、時間稼ぎなのか、落ち着きを取り戻すとこちらに話しかけてきた。
「しかし、どうしてヨシハラ君の剣でその細い杖がきれなかったんだ。
剣のほうが綺麗に二つになってたじゃないか」
彼が見てる先には、割れたミスリルの剣先は無くなっていた。
「それはですね」
僕は、剣をしまい仕込み杖から剣を引き抜いた。鞘だけとなった木の杖には、小さな傷ができていたが引き抜いた真っ黒な剣には、傷一つ付いていなかった。
「な、なんでうちの杖がそんなことになってるのぉ~」
僕は、リイナに告げてなかったことを忘れており、今朝方までのやりとりで一番の絶叫が僕の耳に聞こえてきた。




