第500話 町にはいってみよう
「ヒビキ様はだいたんでありんすね♪」
がしっかりと握りしめていた両手の先には、手にあまる大きさのふくらみがあった。
「ひゃぁ、ごめんなさい」
僕は、急いで手を離してその場を離れた。
「残念でありんす。
もっと、していいでありんすのにぃ……」
「させないわよ!」
彼女が、リイナとにらみ合ってる間に、居心地の悪い僕は見つからないようい先へ先へと進んでいた。
一刻ほど二人の諍いを関わらないようにして、どんどんと先に進んで降っていくと、塔の下にある町が小さく見えてきた。
僕は、何度目かのいざこざの終わったカリナををみて、
「まもなく、着きそうだね」
「そうでありんすね。
飛んだら、もっと早いんでありんす」
「それは、いいや。
やめとくよ」
「ヒビキ様くらいなら、きっちり抱き着いて、上までいけますのに」
「そうかもしれないし、魅力的だけど、
それは、遠慮こうむるよ」
「ふふ、ヒビキのこと判ってないのね。
ヒビキは、空が怖いのよ」
「それは、残念でありんす」
「空を飛んでったら、目立つから絶対駄目だよ!」
「ちぃ。
こっそり抱きかかえて行こうと思ってたでありんす」
僕の予想は当たっており彼女は僕を空への旅へと連れて行こうと考えていたようだ。
やりとりをしている間に、どんどんと町に近づき間もなくゲートへと到達しそうだった。
「ヒビキ、みてみろ」
アメリアはゲートを指さすと、一人の軽装の冒険者が塔へと走って行く姿だった。
「あれが、なんなの?」
アメリアの代わりにリイナが口を開いた。
「わたし達っていうか、その蝙蝠女を見て走ったようだったわ」
「そうなんだ。
ってことは、解放戦線のメンバーかな。
カリナ、見たことある?」
「う~ぬ、そういえば、
あちきを捕まえた時にいた気がするでありんす」
「じゃ、ばれちゃうね。
どうするの?」
「どうやっても追いつかないし、
向こうから接触してくるだろうから、それでもいいかな」
「度胸が据わってるんだが、なんだか。
困ったもんだわ」
「ふふふ
そんなところが素敵でありんす」
こちらに抱き着こうとしてくるカリナを、するりと避けるとその間のリイナが入って邪魔をしていた。
「そうそう、
抱き着かせないわ!」
「まぁまぁ。
それより、急いで塔のほうに向おうよ」
「そうだな」
やり取りの間にゲートまでたどり着くと、今までいった町の中で一番建物が多く2階建て3階建ての建物だらけだった。
ゲートをくぐり街並みに入って行くと、綺麗整頓されていることで迷子になりそうだった。
「綺麗だね、私この町並み好きだよ」
「そう言っていただけると、嬉しいでありんす」
「だよね。
やっぱり、住んでるところを褒められると嬉しいよね」
「でありんすねぇ」
彼女は、先頭を歩き始めると僕らを誘導し始めた。
「こっちでありんす。
塔は中央でありんすが、入り口は港側でありんす」
近づくごとに塔の大きさはとんでもなく広く塔へは直接いけないように人よりも大きな塀で囲まれていて2階だての建物よりも高かった。




