第499話 相手の話を聞いてみよう
「ふたりとも、いい加減にしてよ」
二人は、顔を近づけにらみ合うと大きく反対方向へと顔を逸らした。
「「フン!」」
僕は、呆れながらため息をついた後、質問した。
「もう、二人とも……
で、スズネと君の魔王のことを聞きたいんだけど」
「そうでありんすね」
彼女は、悲しそうな顔になると、歩きながらとつとつと話し始めた。
「あちきは、ユキナ様とわかれて、スピードの速いスズネ様に抱えられて、一緒に空を飛んで戻ったでありんす」
「そうか、僕も一度スズネと一緒に空を飛んだよ、早いよね。
で、無事に到着したんだよね」
だが、カリナは悲しそうに横に首を振ると
「それがでありんす。
砂浜に間もなく到着するってところで、大陸酔いにかかったでありんす」
「それじゃ、墜落したの?」
「そうでありんす。
波打ち際で倒れていたところを
解放戦線のメンバーがやってきたでありんす」
「じゃ、二人とも捕まったの?」
「そうじゃないでありんす。
あちきだけでありんす。
連れて行かれそうなところで、暴れた際にスズネ様に助けていただいたでありんすが……
スズネ様はアチキを逃がす代わりに捕まったでありんす。」
「あなたのせいじゃない!」
「もう、りっちゃんたら。
そうなんだ。
それで、すぅちゃんは、どこに連れて行かれたの?」
彼女は、正面にある塔を指さすと徐々に上にあげていった。
「魔王様と一緒に頂上にとらわれてると思うでありんす」
「へん。
あなたの魔王も大したことないのね。
人間に捕らえられるなんて。
ま、あなたも捕まってるから一緒ね、ふふ」
「あちきのことはいいでありんすが、
あちきの偉大な魔王様のことは、聞き捨てならないでありんす!」
彼女は、鉄扇を取り出すと、リイナの首に目掛けて横一線をなぎかけていた。鉄扇の先には、刃がしこまれており、一番端にある刃がリイナの細首で止まっていた。
「もう一言いったら、首を落とすでありんす」
「ふん、そんなことできたのかしら」
リイナの杖は、彼女のお腹にあてられており、いつでも魔法を放つことができそうだった。
「二人とも、止めなよ。
リイナも大人しく話を聞こうよ」
僕は、彼女の鉄扇を持ち彼女のほうに押し返して二人を遠ざけた。
「わかったでありんす。
ヒビキ様がおっしゃるなら、今回は引くでありんす」
「でも、リイナがいうとおり、魔王だったら倒せるんじゃないのかな」
「そのはずでありんすが……
彼女が使うスキルで、力も魔法もスキルも無力化されてるでありんす。
そのうえ、あいつには一番強いやつには、何も聞かなかったでありんす」
「彼女?あいつ?」
「そうでありんす。
解放戦線には、あちきが勝てない奴がいるでありんす」
「そうね、あなたのあんな攻撃じゃね」
「そうでありんすね!」
彼女は、また鉄扇をとりだすと、リイナにとびかかる寸前だった。僕は止めるため必死に彼女にしがみつくと正面のリイナの激高が聞こえてきた。
「ヒビキ、どこを鷲掴みにしてるのよ!」




