第496話 迫りくる敵をみてみよう
アメリアも気づいたようで何かが近づいて来る先を見つめ僕に話しかけてきた。
「あれは、なんだろうな。
どうする、撃ち落とすか?」
「う~ん。
まだ、悪意があるか判らないしね」
「美女ね。
むっ!
私やアメリアよりも大きいわね。
撃ち落としていいわ」
「うん、なるほど、そうだな。
これ以上、美女をヒビキに近づけちゃだめだな」
彼女は一瞬で矢を番えると黒い点に向けて撃ちだした。矢は風切り音と共にふらふらとこちらにむかってくる彼女に当たった。ようにみえたのだが、矢は彼女に当たると跳ね返り、地面へと落ちていった。
「くっ。
扇ではじいたわ。
より胸元がはだけたわ。
ヒビキの前に来る前に、落とすのよ」
「ちょ、ちょっと待ちなよ。
敵がどうかわからないじゃないか。
早くその胸を見……げふんげふん。
会って話を聞いてみようよ」
「敵だったら、やばいな」
「そうよ。
もう敵みたいなものだわ、わたしにとって。
必殺の一撃で倒していいわ」
「もう、りっちゃんはぁ。
でも、あのシルエット、見覚えがあるような」
「ほら、ユキナもああいってるんだから。
ユキナの顔見知りかもしれないでしょ。
いきなり、攻撃しちゃだめだよ。早く拝ませてもら……ゲフンゲフン」
そんな小競り合いをしている中、彼女は僕らにだいぶ近づき目視できるぐらいになると、ふらふらと僕らのすこし前で墜落した。僕らは慌てて駆け寄ったが、道の先は小さな山なりになっているせいか、墜落した彼女の姿を見ることができなかった。
落下地点に到着した僕らは、いつであろう彼女の姿が見えなく、辺りを見回した。その刹那、背中に違和感を感じ、慌てて振り返ると耳元でささやくような甘い声が聞こえてきた。
「誰を探しているでありんす」
僕があわてて振り返ると豊満な胸を押しつぶし柔らかな感触を感じた。
「だいたんでありんすね」
「わぁ、ごめん」
「早く、離れなさいよ」
僕らは、一歩離れると大人っぽい美女が姿を現し、上から下まで見ていた。彼女は、僕よりも一回り大きく、大胆な胸の開いた真っ黒なワンピースのドレスを着ていた。密着しているドレスで外目からでもスタイルの良さがが判り、太もものスリットから除く白い太もももが挑発しているようにもみえた。だが、口からは一筋の血を流し、真っ黒なワンピースには、いたるところにいびつな穴が拡がり、隙間からみえる腕や足に打撲の跡が見えて痛々しかった。
「ユキナ、回復をしてあげて」
「しなくてもいいわ。
その悪魔は、退治したほうが世の為よ」
「そうだな。
私もリイナの意見に一票だ」
「もう、ゆっちゃんたら。
ヒビキ、この人がすぅちゃんと一緒にいた人だよ。
高回復!」
ユキナが、魔法を唱えると緑色の光がまとわりつき傷だらけだった、彼女の傷はどんどんと回復していき、それと同時にせっかくあいていたワンピースの穴も塞がれていった。
「ありがとうでありんす。
あなたは、スズネ殿とおられたシスター様でありんすね」
彼女は、地面に膝間づくと、悲しそうな瞳に涙を浮かべ、僕らに懇願をした。
「あちしの勇者様を!
あちしの魔王様を、お救いくだされ」
その姿は、どんな生き物よりも弱弱しく見え、守ってあげたい気持ちになったのだが、振り向かなくても鬼気迫る美女二人が感じ取れていた。




