第491話 モンザさんの話をしてみよう
僕は、モンザさんとの出会いから別れ、そして彼から聞いたこれまで経緯を彼女に話し終わるとそれなりの時間が過ぎていった。外見について、多少盛ったことで彼女の想像する彼ははイケメンで本にでてくるような王子様のように、事実とはおおきく乖離しているはずだった。
「もう、ヒビキったら、かっこよく表現しすぎじゃない?」
「そうなの?」
「そうなのか?」
「ええ、ふぉごにも」
僕はとっさにリイナの口を塞ぐとせっかく想像した師匠の面影を悪くさせるのを辞めさせた。
「いいじゃないか。
人によっては、かっこいいと思ったって」
「それは、絶対にちがぁあはぁ、ははははは」
今度は脇をくすぐると、普段と異なり盛大な笑い声が部屋中に響いた。
「まぁ、いいさ。
で、ここの家には、お風呂がないのか?」
「ないわ。
ここの村の人は、だいたい村のはずれにある露天風呂を使うのよ。
行きたければ、一緒にどう?」
「いいわね」
「僕は、今日は疲れたから、入らずに眠ることにするよ」
「そうなんだ。
ヒビキが来ないのは、残念だけど。
風を浴びて埃まみれだから、
私はいきたい」
「じゃ、女性だけね」
「ゆっくり、入っておいでよ。
僕は、見送りだけして、方角だけ見ようかな」
「判ったわ。
帰ってきて起こすと悪いから、この3階の私の部屋のベッドを使ってね」
彼女は、そういうと奥の部屋にあるキッチンの脇に小さな扉を指さした。
「いいの?
じゃ、遠慮なく使わせてもらうよ」
僕に場所を教えると彼女は3人を誘導するように階段を降りて行った。
「じゃ、行きましょう」
「「あ~い」」
彼女を先頭に階段からゆっくりと降りていくと、最後に降りていた僕に、リイナが一言呟いた。
「鍵を閉めちゃだめだからね」
「うん、判った
ありがとう」
「ありがとう?」
僕は彼女のおかげで、家の鍵はかけないが部屋の扉を開けれないことにすることで、ゆっくりと朝まで眠れることに気が付くことができた。
僕は彼女たちが無事に到着できるように見守ることにした。家を出て四人が暗い夜道の中、山のほうにゆっくりと向かっていってるようだった。明かりを魔法で照らしてくれているおかげで、彼女たちがどう進んでいるのかわかり、家の近くからでもよく分かった。
少し先の小さな小屋に彼女たちが全員入って、小屋に明かりが灯されたのを確認したところで、僕も家へ入り3階へとゆっくりと昇って行った。
久しぶりに、女性の部屋に入れると思うと、眠気が飛んで興奮していたが、中は殺風景で女性らしさのひとかけらも見えなかった。部屋の扉には、ありがたいことに内カギがあったのでこれ幸いと鍵をかけ誰も入ってこれないことを確認するとベッドへと向かった。
それでも、普段使っているであろうベッドに横たわると、いい匂いがして幸せな気分に浸っていると、そのまま眠りに付いて行った。




