第489話 品数の少ない料理をいただいてみよう
二階は二部屋あるだけで、一部屋は8畳くらいの居間とシングルベッドが二つある寝室だった。
「思ってたよりも、広いな」
「そうね、見かけ以上の広さがあるわね」
全員が部屋をぐるっといまわした後、ベッド割でああでもないと揉めている中決まると、一刻が過ぎていった。
「そろそろ、ご飯の時間だね」
「だよね」
みんなのお腹が鳴る音と同時に3階の階段から降りてくる音が聞こえてきた。
「お客さん、料理ができたよぉ」
ドアが勢いよく開け、響き渡る嬉し気な声が部屋にとどろいたが、そこま大きくなくても、目の間に全員が揃っていた。
「いっぱい作ったよ。
冷めないうちに上がってきてな」
「は~い。
じゃ、みんな行こうか」
「あぁ、ぺこぺこだな」
ただ眠っていたアメリアの発言にとても疑問を感じたが、気にしないことにして、三人でゆっくりと階段を上がって行くとおいしそうなにおいがだんだん強く鼻腔をくすぐった。
先頭を登っていたアメリアが振り向くと、嬉し気な声が聞こえてきた。
「お、ヒビキ♪
麺料理があるぞ」
「好きかい?
私もなんだ」
テーブルの上には、4人では食べれそうにないほどの山もりのナポリタンが乗っていた。その隣には、大きさでは負けないぐらいの量のサラダが盛られていた。そして控えめのソーセージが10本ほど小盛りで置かれていた。
「お酒はないのか?」
「ないわね。
私が飲まないから」
「残念だわ」
「あ~、
ちょっと待ってね。
爺が置いて行った酒ならあるわね、飲む?」
「ええ、飲めるものならいただくわ」
「まったく、りぃちゃんは……。
昔はそんなに飲まなかったのに」
「むかしって……
まぁ、いろいろあったのよ」
リイナは、ユキナが石になっていたことを思い出したのか、曇った顔を戻しそれ以上の言葉を控えたようだ。
「そうだよ、
リイナ。
飲まなくたっていいじゃないか。
それより、冷めないうちにおいしそうな料理をいただこう」
彼女は、奥の台所から埃をかぶった数本のワインを持ってくると、一本一本布で拭きながらリイナに渡していった。
リイナは、飲めるのかグラスに少し移し味見をすると、二本以外は廃棄する必要が有りそうだった。
「この二本以外は、駄目そうね。
後でお代に混ぜて請求してちょうだい」
「いくらか判らないわ。
教えてくれる?」
リイナが彼女とお酒の値段を交渉している間に、待ちきれないアメリアは、自分のほうに寄せながら、食べ始めていた。
「うむ、うまいな」
「もう、アメリアったら。
あなただけのものじゃないんだよ」
「これは、私のだ。
君らは、はっぱを先に食べろ」
「きぃ~」
「もう、二人とも、みっともないよ」
二人は、にらみ合いながらも、両方の間にナポリタンを挟むと、我先へと口へ運んでいた。まるで、どちらが多く食べるか競い合ってるようだ。
「……と、このくらいね」
「そうなのね。
わかったわ、助かったわ。
どうもお酒の値段とか、道具の値付けが苦手で」
「よくそれで、やってこれたわね」
「やりたくてやってるわけじゃないのよ」
そういって、彼女は、苦虫を潰したような顔になると、身の上を話し始めた。その様子は、話を聞いてくれる人がいて嬉しそうで昔にそんなことがあったことを思い出した。
そういえば、人がいなくて寂しかったアンリさんもよくしゃべっていたな。
今は、どうしているんだろうか。




