第488話 村で唯一の何かに行ってみよう
ユキナは、暗がりの中、ザジさんの馬車が見えなくなるまで手を振っていた。
「ゆっちゃん、
もういいでしょ。
そろそろ、村にいくよ」
「うぅ、もう少しだけ」
「向こうも暗がりでみえないよ。
さぁ、行こうよ、ユキナ」
「ヒビキがいうなら、しょうがないか」
なんとも納得いかないといった表情のリイナは、返答を聞くと明かりのある村に向けて歩き出した。村は、今まで通った中で一番小さく100人ほども居ないくらいの小ささだった。
「しかし、小さいな。
私の里ほどだな」
「あそこよりは、大きそうだけど……」
「む!
そうかな」
「それはそうと、
店もないしギルドっぽいところもないよ」
「そうね。
あ、でも、あそこの一回りだけ大きな家があるわ。
明かりもがついてるわね」
「そうだね。
いってみようか。
宿だといいな」
僕の返答を聞くと先頭を歩いていたリイナとアメリアは、家に向けて歩き始めた。少しだけ大きな家だったが、近づくとその建物にはいくつもの看板が付いていた。
「すごいわね。
宿にギルドに道具屋の看板がついてるわ。兼務ってことかしら」
「そうなんだ。
それにしては、小さいね」
「あの位でいいんだろうな、
このくらいの規模なら。
里には、宿も店もないからな」
やっぱり、里のほうが小さいんじゃないかな。
建物へリイナが先に入ると小さな店の奥には、小さなカウンターがあり一人の女性が座っていた。
「いらっしゃい。
ってか、なんか用?」
「ええ、ここの宿は泊まれるかしら」
「ああ、2階が空いてるってか、
一部屋しかないし空いてるわ、どうぞ、奥に上がってって」
「そう、よかったわ。
空いてて」
「いっつも、開いてるわ。
使われたことなんて、今回が初めてだわ」
「そ、そうなんだ」
「そりゃ、そうよ
客ってか、人がこないからね、こんな辺境」
アメリアは限界なのか、宿の人に急に話しかけた。
「まあいい。
たべれるところは、あるのか?」
「ないわね、この村じゃ。
いいわ、3階で私が料理を作ってあげるわ。
ちょっとたったら、上がってきて。
さぁ、もう、今日は閉めるかな」
「いいのギルドしめて?」
「どうぜ、客が来ないしね」
そう言って、玄関の扉に鍵を閉めると、2階への階段へと上がって行った。




