第487話 大陸酔いを経験してみよう
全員が乗ったのを確認するとザジさんは、再び出発した。彼が、言っていたとおり道はだいぶよくなり、揺れはほとんど感じられなかった。
「そろそろやって来るぞ。
倒れてもよいように準備しとくのじゃ」
いっているそばから、ザジさんの背中がまるくなり力が抜けていくのをみていると僕も意識を失った。
どのくらい気を失っていたが判らないが、ザジさんの声で起こされた。
「さぁ、もう通り過ぎたのじゃ」
意識をしっかりと取り戻してから辺りを見回すと、同じようにリイナとユキナも目を覚ましかけていた。ザジさんの言う通り意識を失っていあようで、馬車の後ろから見える景色が変わっていた。
「それにしても、これはなんなの」
「うむ、なんじゃろうな。
毎度通るたびに意識を失くすのじゃ。
馬はどうやら影響はないのじゃ。
そういうもんなんじゃろうな」
「そうなんだ」
ユキナの質問にだけは、真面目に返すザジさんに呆れながらも、どういうことかと考えたがまるで答えがまとまらなかった。
その後は、特に問題が起きることもなく、ゆったりとした時間が流れながら、道を進んで行った。
「陽が落ちたわね」
「そうだねぇ
りっちゃん」
二人がいうように、陽が落ちかけ暗くなっていく山道を登って進んでいた時、ザジさん越しに見える風景に、小さな明かりが見えてきた。
「ねぇ、ザジさん
あれが、目的地なの?」
「そうじゃよ、お嬢ちゃん。
あと、一刻しないぐらいで、到達できるじゃろう」
「了解です」
僕の返答にはまるで興味を示さずに答えず、馬車を動かしていった。彼が言うように、半刻をすぎたぐらいで明りは最初見た時よりも大きくなり、まもなく村が見えて来るようだった。
「まもなくだね」
「そうね、
移動だけで、疲れちゃったわね」
「そうか?
ぜんぜん疲れてないぞ」
さっきまで、がっつり眠っていたアメリアが夜になり起き始めたようだった。
たぶん、お腹が空いたんだと思う。
僕らが荷馬車で話をしている間に、馬車は進むごとにゆっくりと速度を落とし村に到着したようだった。
「お待たせしたのぉ
到着したのじゃ。
さぁ、降りた降りた」
「はい♪
ザジさんも、お疲れ様」
「おう、ありがとうじゃの」
「ほんとに、長旅ありがとうございました」
「ああ、頼まれたからしょうがなくな。
じゃあな」
ザジさんは、雑に返答すると馬車をくるりと一回転すると来た道へゆっくりと動き始めた。その様子をみていたユキナは、ザジさんに近寄って行った。
「もう、いっちゃうの?」
「そうじゃ。
今から出れば、明け方には町に戻れるからな」
「明日まで、一緒でもいいのに……」
「そいつと一緒は嫌じゃからな」
「そうなんだ、残念。
じゃ、ザジさん、気を付けて」
「ありがとじゃのう。
またのう~」
「「また~」」
僕らが見守る中、ザジさんの馬車はまっくらな夜道へ進んでいった。




