第485話 お昼をさらっと食べてみよう
暫く上下左右に大きく揺れながら走っていた馬車が、少しづつ速度を落としていった。
「まもなくお昼じゃ。
少しお昼には早いが、だいぶ来たからな」
「そうなのね?
目的地の村は近いの?」
「いや、この先は道が細く隣は崖になるからのぉ。
出発した後は数刻休めそうなとこはないのじゃ」
「そうなのね」
「おっと、着いたのじゃぞ。
さっき、ぶりだから
そんなに腹がすい取らんじゃろうが、
少しはいれるのじゃぞ」
「ヒビキ、お疲れだよ。
もう、止まったよ」
「えっ、あぁ、
疲れたぁ~」
僕は、疲れて後ろにふんぞり返った。真後ろにいたリイナが両肩に手を置き揉んでくれた
「おつかれ、ヒビキ。
大変だったわね」
「うん。でも、ユキナが苦しまないで済むんだから、
それに越したことはないな」
「さっすが、りっちゃんの言う通りだね」
「でしょ。
ヒビキが考える事なんて、まるっと判るわよ」
「はいはい。
さ、行こうか」
僕は、まだ眠っていたアメリアを起こすと、外で昼ごはんの準備が終わっていた。
「さぁ、さっさと腹ごしらえしたら、
出発じゃ」
「判りました」
僕らは、急いでなんの料理なのかもわからない食べものを口に入れても、まるで味が判らなかった。
「これ、美味しいね」
「お、嬢ちゃん、あんがとじゃの。
たくさん、タベルトいいのじゃ。
まだ、あるからのぉ」
どうやら、ザジさんとユキナは相性がいいのかもしれない。
アメリアとリイナは、朝ご飯が近かったこともあり、小さめの一皿を食べてご馳走様をしていた。
朝ご飯を一口もたべれていないユキナは、誰よりも食べてザジさんを喜ばせた。
「ふぁぁ、
もう食べれない。
ザジさん、料理じょうずだねぇ」
「そうかいそうかい。
まだ、あるからの。
後でたべるといいそ」
ザジさんは、弁当箱にまとめると、全てユキナに渡していった。
「ありがと。
あとで、お腹空いたら、食べるね」
「そうじゃの。
数刻過ぎれば後は、緩いまっすぐな上り坂じゃから、
荷台にいても、酔いはひどくならんのじゃ」
「そうですか、
よかったね、ユキナ」
「だね、ヒビキ」
「さ、いくじゃの。
途中で大陸酔いも待ってるしのぉ」
僕は、ザジさんのいっていた大陸酔いが普通の乗り物酔いと思っていたが、そうじゃないことをこの後、理解するのだった。




