第480話 シルキィを見送ってみよう
シルキィは、少し離れて笑顔でこちらを向くと、
「みなしゃん、気を付けていってらっしゃいませ
わたしぃは、おじいしゃま、迎えにいってきましゅ」
「うん、シルキィも頑張ってね」
「そうだぞ!
シルキィの双肩に、
この大陸の未来がかかってるからな」
「そうさね。
今日が大陸の新しい未来が始めるさね」
「えへへ♪
じゃ、みんな、また来てね」
シルキィは、こちらを見つめながら軽く手を振りながら魔法を唱えると、緑の風に包まれ徐々に上空に上がって後ろに下がって行った。僕らは、緑の渦が無くなるまで、大きく手を振り小さくなっていった。
僕らの感傷的な状況を全く気にしないザジさんの声が後ろから聞こえた。
「さて、行くのじゃよ。
こっちじゃ」
声に従い振り向くとザジさんは、こちらを見ることもなく、砂漠とは逆側の山のほうにゆっくりよ歩いていた。僕らの近くでコンさんがやれやれといったジェスチャーをした後、
「さ、後は、ザジに任せるわさ。
こっちはこっちで、後人ひと踏ん張りわさ。
4人とも、元気でな」
「はい。
コンさんも、遷都がんばってください」
「ああさ」
どんどん歩いていったザジさんの姿はだいぶ小さくなっていた。
「さ、急いで追いつこう!」
「そうね」
いつの間にか、隣で歩いているリイナを見て、後ろのユキナとアメリアを見ると、最初の冒険を思い出し懐かしが心を包んだ。
「少し離れたから、ちょっと少し早くするよ」
「あぁ」
後ろから、アメリアは返事をしてくれたが、ユキナは小走りで追いつて来るのに必死で返事ができる余裕はなさそうだった。
「ま、待って」
「あぁ、ごめん」
僕は、さっきより少し速度を落として彼女が付いてこられるようにした。
「ゆっちゃん、歩かな過ぎなんだよ」
「りっちゃんだって……
そっか、大陸中歩きだったんだっけ」
「え、あ、……うん」
なんか歯切れの悪い回答だったが、リイナがどうやって大陸を楽に移動したのか、想像できなかった。
話題を変えたかったのか、リイナは遠くにいたザジさんを指さした。
「そんなことより。
あの馬車のようね」
「そうだな。
結構小ぶりだな」
「あー、ほんとだ。
4人で乗ると一杯だね」
「ようやく来たのじゃな。
遅いのじゃ。
さぁ、さっそく、出発するのじゃぞ」
「判りました。お願いします」
僕らは、今朝方みんなで眠っていたキングベットよりも小さい荷台に交互に座ると、ザジさんは一人分しかない馭者台に座って、体の小さな馬のお尻をたたき、山への細い道を登らせ始めた。
その道は悪くがたがたと馬車を大きく揺らし、さらに曲がりくねった道で右往左往もすると乗り心地は最悪だった。
ユキナは、出発直後から真っ青な顔で死にかけていた。
「だいじょうぶ?
ゆっちゃん」
「だめ、吐きそう」
「吐いたほうが楽になるぞ
ふぁぁ~」
心配しているようで、特に気にも留めていないアメリアは、縦、横の揺れなど関係なく眠り始めた。最初のうちは心配していたリイナも、アメリアの寝息に誘われたのか、同じように眠り始めた。
恨めしそうに見ていたユキナだったが、今はもう限界のためか、目を瞑り僕の手を握って早く時間が過ぎるのを待ってるようだった。
まだ一刻もすぎてないけど、ユキナは大丈夫だろうか、不安だ。




