第479話 幸せな時間はあっという間に過ぎると知ってみよう
僕は席をたち全員を見回すと眠そうな二人を見つけた。そろそろ、お開きになっても様さそうだった。
「さぁ、そろそろ寝ようか」
「あぁ、そうだな
シルキィ、いくぞ。
おやすみ」
「おやしゅみぃ~」
アメリアは、眠そうなシルキィを抱きかかえ連れて行くと、入り口の近くの部屋に入っていった。
「じゃ、わたしも寝るわ」
「おやすみぃ~」
リイナは、顔を真っ赤にしているユキナに肩を貸して立ち上がらせると、近間のキングベッドがある部屋へとはいっていった。僕もリイナ達より小さめのベッドがある部屋にはいると、直ぐに横になって眠りについた。
なんか今日はいろいろあって、疲れたなぁ
ベッドに横になって明日以降のことを少し考え事をし始めようとしたところで、睡魔には勝てなかった。
ぐっすり眠っていると、前方のベッドが深く沈んだ気がして目が覚めた。うっすらと目を開けるとそこには黄緑色の丸いものが見えていた。誰が前にいるか判ったところで、安心して頭を抱きかかえるとまた眠りに入り始めた。だが、直ぐに背中のほうがより沈んでいた。背中には二つのふくらみがあり、大きすぎず小さすぎないその二つで誰が背中に抱きついているか判った。幸せな気分になるとまた眠りについた。半刻もしないうちに、頭に大きな塊に挟まれた。その柔らかな幸せに挟まれて夢心地になったところで、ふくらはぎに硬い感触の重みがあった。
どうやら、足を枕に眠ろうとしているのかな。
まぁ。大体は、わかったから……
おやすみぃ……
僕は、心の中で全員に三度目のおやすみを挨拶すると、幸せの絶頂のまま眠りについた。だが、その幸せも長くは続かず、一刻もすると扉を叩く音が聞こえてきた。
コンコン
「お客様、ギルドマスター様がいらっしゃいました」
「は、は~い」
僕は目を開けるとそこには、大きな肉の塊、もといユキナが抱きかかえてくれていた。泣く泣くゆっくり外し上半身をあげると幾人かはバランスを崩してベッドから転がり落ちた。
「いたっ」
「うわぁ~」
「ほらほら、迎えが来たようだから、
部屋をでるよ。準備して」
アメリアだけは、起き上がらず再び眠りについていたので、起こすのを諦めおんぶをして部屋から出ることにした。
「もう、アメリアお寝坊しゃんだな」
「まったく、久しぶりだってのに、変わらないのね」
「だね」
僕は、扉を開けてホテルのオーナーをお礼をつげ、全員で付いて行くとホテルを出たところで見覚えのある二人が見えていた。
「お、ヒビキ、来たな。
こいつが、次の村に連れて行ってくれる従者だわさ」
「よ、よろしくじゃぁ」
「よ、よろしくお願いいたします」
僕と目線をあわせないそのおじいちゃんは、僕とチャチャさんが弾劾した元ギルド長のザジさんだった。
そんな様子をみると、屈託なく笑うコンさんが口を開いた。
「ヒビキとは、顔なじみだと思うが、過去は流してよろしく頼むさぁ。
こいつは、この大陸で唯一のペソボア大陸に続くライトハムへの山道を往復したことがある冒険者さぁ」
「うぅ、なんでわしが……
行きたくないのに……」
「うっさい、
それで、水に流すって決めたさね
いうことを聞くさぁね」
「うぅ、わかったのじゃ、
約束通り、村まで送るだけじゃぞ。
その先はは、知らんからな」
「ええ、それで大丈夫です。
帰りは、船で戻りますから」
僕らは、二人との約束を形にすると小さな黄緑色の髪の毛が、一団から一歩外れていた。




