第470話 今日の夕食先に行ってみよう
僕が更衣室をでるとオーナーが話しかけてきた。
「どうでしたか?」
「ええ、気持ちよかったです」
僕は、この町で一番美味しい店を聞くと、出てきたみんなを連れて向かって行った。
「この先だって、この大陸で一軒の珍しい砂埃料理だって」
「へぇ、美味しそうね」
「そ、そうかな」
「そうしゃよ」
みんなが、楽し気に会話している中、目的と思われる変わった建物らしきシルエットが見えてきた。
それは、大きな丸く平べったい一階に、二階より上部分が円錐のように真ん中へ上に伸びている建物だった。
「あの建物へんな形しているよ」
「だなぁ。
だが、混雑しているようだ」
「私が行ってくるね」
ユキナが大きな胸を揺らしながら走っていき、店の人に話すと、最後は感動しながら店員が店の奥へと入って行った。僕らは、ゆっくりとユキナに向かって歩き事の顛末を聞くため近づいて行った。
「ゆっちゃん
何、話したの?」
「ちょっと、大陸を救った勇者様のお話を」
「そんな、おとぎ話があるの?」
「何言っているの
ヒビキとリイナの話を、少し盛っただけだよ」
「嫌な予感しかない」
僕とリイナが顔を見合わせ苦い顔をしていると、勇者を崇めるような表情のオーナーがやってきた。
「勇者様御一行様、
お部屋が準備できましたので、
私について来てください」
入口からはよく分からなかったが、中は完全個室のようでいたるところに扉があり、その中を覗き込むことはできないようだ。いくつもの扉の先に目的となる部屋へと誘導された。中には、一人の美女と二人の給仕係が恭しく出迎えてくれた。
「では、勇者さま、
後は、この3人が応対します」
「はい、私、ルルと申します。
何なりとおしゃってください。
勇者様を接客できるなんて、夢のようです」
「あぁ、はい、あははぁ」
大きな部屋に、大きな卓が一つあり、一辺に4人が座れそうな長いすが配置してあった。僕が近くの真ん中に座ると挟むように二人づつギュウギュウに詰めて座った
「ちょっと、みんな狭いよぉ」
「アメリア、離れなさいよ」
「私は、ヒビキに会うのが久しぶりだ、
優遇されてもいいはずだ。
ユキナ、神官なんだから、譲ったらどうだ?」
「私も久しぶりだよ
神の名に従い、私を隣にしなさい!
魔王の孫は、あっちの奥でもいいんじゃない?」
「3人は、しゃっきまで一緒だったんしゃから、
わたし、一人で、どくしぇんしていいはず」
「もう、静かにしてって。
みんなに笑われてるって」
三人の給仕は、愚行を下を向いたり後ろを向いたりしていたが、肩が揺れているところをみると声を殺して笑われていた。僕は、恥ずかしさでいっぱいだった。
「もう、四つの椅子に一人づつ別れてよ、
時間ごとに席を移動するから」
「うぅ、ヒビキが、そういうなら」
「だな、今のままじゃ、隣に座ってるユキナとシルキィが卑怯だからな」
「早い者勝ちだよ、こういうのは」
「そうしゃよ」
四人は渋々ながら納得したのだが、順番をどうするかでまた揉めたため、一緒に居た時間の短い順で納得させることにした。
こんなんじゃ、この先の旅も心配だよ、まったく。




