第458話 ジル魔王のその後を聞いてみよう
「それって、ジュウベエさん?」
「違うわ……
育ての親じゃなくて、生みの親のほうよ。
わたしは、会ったこともないけどね」
「うむ、そうなのじゃ。
その時にシルキィと両親、それにジーンの旦那のジェシィの4人で、向かったんじゃぞぃ」
「なんで、ジェシィが?」
「向こうの大陸を旅をして知ってるということでジェシィになったんじゃぞ。
そして、無事橋を渡って、ジーンが身を隠していた聖都に行く村の手前で、
冒険者3人に襲われたんじゃぞ」
「その時に、わたしの父が襲ったのね」
「それは違うじゃぞ。
おぬしの父は、赤ん坊を見て、またにしようと提案してくれていたようだが、
仲間には聞き入れてもらえず戦闘になったんじゃぞ。
それでも、おぬしの父は、何とか止めようとしてたと同じように隠れてたジェシィから聞いたのじゃ」
「はぁ、困ったやつだな」
「だが、わしの娘がシルキィを守って、大けがをした時に、ジェシィが受け取ると走ってにげたのじゃぞ。そこに、流れ玉の魔法が加えられそうなところで、おぬしの父親が代わりに攻撃をうけてくれたのじゃぞ。そのおかげで、ジェシィとシルキィは無事に逃げきれたのじゃ」
「じゃ、じゃ、父が攻撃に加わったんじゃないのね」
「そうじゃぞ。
むしろ、助けてくれた恩人じゃぞ。わしの中ではな。
最後に婿殿が二人を倒したが、残念ながら力尽きて二人とも亡くなったのじゃ」
「そうなのか、初めて知った」
「そうじゃな、詳しくは誰にも教えとらんかったからじゃぞ。
ジェシィにも、孫に伝わらんようにお願いしといからじゃぞ」
「じゃ、その時にリイナの父さんも……」
「そうじゃないんじゃぞ。
瀕死だったところを偶然助けたのが、パトリシアだったのじゃぞ」
「へぇ、あの子が」
「ママに聞いてたとおりだわ。
どうして瀕死だったかわ、知らなかったけど。
でも、いい人で、よかった」
僕は、涙目のリイナの頭を一撫ですると、鼻をすんすんとしながら、肩を濡らしていった。
「どうして、その場所パトリシアさんが?」
「うむ、親子の迎えに行ってくれたのじゃが、
その時に、守っていたパトリシアも連れて行ったようなのじゃぞ」
「そうなのね、
ママがジルに守られてたなんて……」
「たまたま見つけることができたとかいってたなぁ。
だが……
だいたいあやつは、ついてない……
ぎりぎり悪いほうにいく運命なのかもしれない、のじゃ。
半年後、思わぬところで、助けた冒険者と対峙することになったんじゃ」
「それって?」
「あやつのダンジョンじゃ。
リイナの父後ろから、不意打ちの一撃で、半死半生の傷を負わせたんだが、
お互いが知り合いだと気づくと、とどめを刺さずに立ち去ったんじゃそうじゃ」
「その時にジル様がぼろぼろのまま教会にきて回復魔法を習うんですか?」
「うむ、そのはずだったはずじゃ。
そっからは、誰とも関わらないと決めたようじゃ。
で、パトリシアからも、距離をとって見守ることもやめたようじゃ」
「だから、リイナが、パトリシアの娘って気づかなかったのかな」
「かもね。
ありがと、ヒビキ♪」
リイナが顔を上げて真っ赤な目をつむり、きつく抱きしめてくると、さっきよりもほっぺたに柔らかい感触があった。
「ジルじゃが、そろそろ、ジーンかパトリシアのどちらかで復活す……
おっ!
間もなくじゃな
さぁ、昔話もおわりじゃぞ。
目的地のジニョーロ町がみえてきたのじゃぞ」
「あぁ、あそこがこの大陸を統一している最大のギルドがあるところだ」
アメリアが振り返りながら、さりげなくほっぺたにキスをして、小さな点に向かって指さした。




