第444話 間話 乙女3人旅 3日目 ~誰にだって限界はあるよね?
一刻ほど、あったかいお風呂でまったりした三人は、ギルド職員が大勢で待ってるであろう酒場に向かうことにした。そこは、人だかりで溢れ、3人が入ろうとしても、誰も中に通してくれなかった。
「どうしよう、リイナ姉」
「約束してなきゃ、帰るんだけど。
どうしようかしら」
「ここは、一発、がつんとぶんなぐって」
「そういうわけには、いかないでしょ、もう」
リイナは、自分たちを待ってくれてる人たちを傷つけるのをどうかと思い、考えはじめるとヒビキの笑顔が浮かんだ。きっと、難しく考える必要なんてないのかもしれない。彼女は、そう考えを決めると、アドアに名乗らせることにした。
「皆さん、集まっていただき、ありがとうございます。
私たちは、ここにギルドマスターに呼ばれてきております。
道をあけてください」
彼女の凛とした涼し気なその声は、ざわつく大人達を静かにさせ、跪かせるとギルドマスターまでの道を開けさせた。その様子を見ていたギルドマスターは感心するととともに感動し席を立って拍手をした。
「さすがでございます、アドア様、リイナ様。
おつきの方もこちらに」
三人は、ギルドマスターの前に、アドア、リイナ、アンナの順で座ると、ギルド長が、リイナに対し苦言を言ってきた。
「リイナ様を真ん中にしていただけませんでしょうか?」
「え、わたし、真ん中にいるわよ」
「ねー」
「ははは、ご冗談ばっかり。
エルフのリイナ様も、担がないでください」
外見は、エルフに近いアンナと人間に近いリイナが居て魔法に長けているエルフがリイナだとギルドマスターは誤解していたが、この後の余計な一言が押してはいけないスイッチを押してしまった。
「まったく、二人が優しいからって、ちっこい貧相な外見のあなたが、見事なボディをもつリイナ様のわけないでしょ。
ははっはは」
アドアとアンナは、この後のことを想像し絶望したが、なんとかできないかと、アドアは真面目な表情で詰問した。
「ギルドマスターは、おかしなことをいいますね。
リイナ様は、正面におられますよ、決してエルフだからって隣のアンナがリイナ様のわけないでしょう」
アドアの真面目な表情から、事態の深刻さを即座に理解し真っ青になると、その場で卒倒しそうなギルドマスターの正面にいるリイナは、胸の大きさ判断されたことに理性が吹っ飛び、頭から湯気が出そうなくらい顔が真っ赤になっていた。アンナは、自分だけでも逃げ出そうと席を立とうとしたが、周りはやじ馬で、うまっており席を立つことも難しかった。
リイナは、気持ちを落ち着かせ、バックから魔法の本を取り出すと、昼間に放った巨大隕石の魔法のページの次に書かれたページを開いた。それは、昼の倍以上ある隕石を五月雨で落とす魔法で、絶対に使ってはいけないと何度も何度も師匠に止められた魔法だった。唱え始めたリイナをみて、アドアとアンナが、直ぐに感じ取りアンナが羽交い絞めにして、魔法の本を閉じせアドアが口を手でふさぐことで、呪文の行使を止めさせた。
「リ、リイナ姉
だめだって、落ち着いて!!!」
「リイナ姉さん
みんな死んじゃうって!!」
「ふーふーふー
みんなぶっとばーーーす!
誰一人生かして返さん!!
死して詫びよ!!」
二人の必死な絶叫によって、やじ馬たちは事態の深刻さに気付き我先に逃げ出し酒場は修羅場とかした。リイナの激怒が落ち着いた頃には、真っ青なギルドマスターと死なばもろともと思った副ギルドマスター二名の三名しかその場にいなかった。いつものリイナに戻ったのだが、自分のしたことに気づき、冗談にするしかなかった。
「ほほほ、
ただだか、人を間違えたくらいで、皆殺しにするわけないわよね」
「そ、そ、そうだよね、
リイナ姉」
「だ、だ、だよね、リイナ姉さん。
……
は、はぁあぁ~
は、早くヒビキ兄さんに会いたいね、アドア」
「……そうだね、アンちゃん」
普段怒らない人を怒らせると、どんなことになるのか、ここでようやく二人は身をもって思い知り、やっぱりリイナの相手はヒビキに任せるしかいないのだと思い知った。
それは、ほんの少しの時間だったのだが、ゴモイラージ大陸では、恐怖の鬼神としてリイナの名前は広まり子供が悪さをした時には、リイナが来てお仕置きされるとなったとか、ならなかったとか。




