第440話 間話 乙女3人旅 2日目 ~清流教会で教えるものって民衆の掌握術?
何事もなかったかのように、ギルド職員に会ってアドアの見事な口上により、ギルド職員が泣いて尊敬を集めた。そのすぐ後に、ギルド職員の一人が昼過ぎにおきた隕石騒動で町がパニックになって、もうあんなことはないんでしょうか?と相談されると、全て岩のモンスターのせいにし、もう二度と起きないと高らかに宣言した。リイナは、肩を小さくして、真相を伝えようか悩んでいたのだが、アドアはギルド職員全員に羨望の眼差し見られているため、相談することもできなかった。そんなアドアは、嘘も方便だし、二度とおきないことは事実でしょと、真実はうやむやにすると決めていた。そういった割り切りと心象操作がまさに清流教会の暗部と同一の思想なんだが、アドアも含め誰もそのことに気が付くことはなかった。
またも英雄扱いで凱旋することになり、全ての飲食と宿を無料だけでいいとアドアがいうと、ギルドマスターは、大陸を破壊するほどの敵をこんな安いクエスト料ですむなんてと、この町のギルドマスターも喜んでいた。そして報告が、大陸で一番偉いギルドマスターに事の顛末が伝わり、国賓扱いするようにと指示がでるまでには、二~三日かかるのだった。その反対側でも、チャチャさんのおじいさんが言及されギルドマスターから外されるのも間もなくといったところだった。
町一番、大陸二番のホテルのスィートルームを今回も断り、町の離れの宿を教えてもらうと三人だけで向かっていった。
今回の宿は、一軒家貸し切りではなく、いくつかのコテージの一軒だけだったが、ギルドマスターの行為で一画全てをリイナ達のために借り受けてくれた。宿がきまると、オーナーからギルドに連絡が入り、次への救援物資と100食分のお弁当が運び込まれていった。すべての物資がおわり、コテージでゆっくりしていると、ギルドマスターがやってきて、どうしても直接話を聞きたいという申し入れがきた。断り辛い状況でアドアに任せると、二人はコテージを出て町に向かって歩いて行った。姿が見えなくなり、周りに人影が無くなると、リイナとアンナは、ゴブ八にご飯を渡すため、コテージを後にした。そのころ、100人は入る酒場で、階段を台にして、アドアが最初よりも大幅に物語を語ると、ギルド食員だけでなく待ち人や冒険者からも、笑い泣き恐怖、最後は拍手の雨の中、台を降りていた。だが、アンコールの声は鳴りやまず、違う話を踏まえるとやがてヒビキの話になり、新たなヒーロー像がこの町でうまれるのだった。
アドアが、100人以上の人間を感動させている頃、町の外に向かって歩いていた二人は、お腹をすかせていなかったゴブ八の元にやってきた。
「リイナ、アンナ。こっちだ。
さっき、貰った分は、食べきった。
まだ少したべれる」
「わかったわ」
アンナは、5食ぶんをゴブ八に渡すと、それだけで、十分であると二人に伝えた。いままで毎食食事をとれてなかったことを考えれば、あるだけで十分だった。
「ありがと。
おいしそうだ」
「ふふふ
朝も、またやってくるわ」
「うむ、ありがたい。
そうだ、さっき。
我を進化してくれた冒険者二人をあっちのほうで見かけた。
どうやら、虫を進化させていたようだ」
「え、まじで?」
「つかまえられなかったの?」
「町の中ではいれなかった」
「そっか、じゃ、しかたないね。
でも、姉さん、まだ、町にいるってことだよね」
「そうね。
このあと、ギルド職員にさがしてもらおう」
「で、どんな人なの?」
アンナは気軽に聞いたが、ゴブリンのゴブ八から情報を得るのは難しく、一つ一つの装備や姿をゆっくりと聞いて行くと時間だけが、どんどんと過ぎ去っていった。町に着いたときは、夕刻に向かうころだったが、話を聞き終わった時には、星空に変わっていた。
「だいたいわかったわ。
ちょっと探してもらうわ」
「わかった」
アンナは、この後武器屋に向かおうと思っていたが、諦めざるを得なかった。




