第436話 間話 乙女3人旅 1日目 ~少しは、遠慮してもいいんじゃない?
若いギルドマスターが自信満々で紹介したものは、町で一番のほてるだった。都市の真ん中で大理石で作られた4階建の建物は、この大陸で一番お金がかっている建物で、町一番のほこりだった。そのため、建物を見れば、絶対に感謝すると思っていたのだが、二人は建物も見ずにことわられ、理解できなかった。一番いいホテルの最上級の部屋に比べれば、どの宿も半額以下だったため、懐的にはありがたったため、気持ちは喜んでいいのか素直に受け入れがたかった。リイナは、一番森に近い宿を紹介してもらうと、幾つかあったが、一番森に近いところは、今にも壊れそうなほどの古い作りの宿だった。それでも、寝れれば気にならなかったリイナは、了承したが、アドアはもっと他にあるんじゃないかと心の中で思ったものの口にだしてまで言う気にはならなかった。
どうやら、オーナーは、町の中に住んでおり、客が来たときだけ泊まるようで、誰もいなかった、事情を知るギルド職員が手をまわしてくれることになり、誰も居ない一軒家を借りることになった。
「リイナ姉。
誰もいないけど、綺麗にかたづいてるね」
「そうね。
まぁ、私たちも、一日泊まるだけだったら、広すぎかもね」
二人が話している間に、アンナは一室のベッドに寝かせられると代わる代わるギルド職員がやってきた。それは、いくつかの店から食事を貰ってきたため、続々とギルドマスターへと渡していった。ギルドマスターは、お願いしていた20食分を全て受け取ると、リイナに渡し、ギルド職員と共に町へと帰って行った。そんな中、リイナへと引き渡された食事は、テーブルの上におかれ、いろいろな料理からの香りで、鼻腔をくすぐられるとアンナは覚醒し、二人の前にしょぼしょぼと近づいていった。
「うぅ、剣が、ママの剣が……」
「そんなにしょんぼりしないで。
いい鍛冶屋に会えれば、直せてもらえるかもしれないわよ」
「そっか。
そうかも!
さすが、リイナ姉さん。
安心したら、お腹すいちゃった」
「はは、アンちゃんらしいよ。
さ、ゴブ八さんのところに行って、一緒にご飯にしようよ」
「そうだね。
で、ここはどこ?」
二人が、呆れた様子でこれまでの経緯とゴブ八との関係を説明しながら、既に見えてる森へと歩いて行くと、藪の中ではかくしきれていないゴブ八の巨躯はみえていた。
「ゴブ八、隠れてないわよ」
「いいのだ。
他に人の気配はないからな」
ゴブ八は、悪切れもせず、にこやかにやってくると、3人の前に姿を現した。初めてはっきりとみたアンナは、アドアの背中に隠れたがゴブ八と同じように隠れるには、元が小さく隠れ切れてなかった。
「もう、アンちゃんってば。
食べられないから、出てきてもだいじょうぶだってば」
「困った妹だわ。
胸ばっかりでかくなって」
「そうそう」
二人は、羨ましくアンナを見たが、それでもアンナはまだ、納得できていなかった。
「まぁ、いいわ。
ゴブ八、好きなのを食べていいわ」
リイナは大きなテーブルを置いて、20食分のお弁当をおいてくと、ゴブ八は近くの物から手に取り地べたに座ると素手で食べていった。残る想定で多めにリイナはお願いしたのだったが、ほぼ食事をとってなかったゴブ八の食欲は留まることを知らず、半刻しない間に半分のお弁当がなくなった。
「あー、私の分がなくなるー」
アンナが叫んだことをきに、他の二人も一食だけ手に取り食べ始めたが、3人が食べ終わる前に、残る全ての食べ物がゴブ八のお腹の中に納まった。
「よく、はいるわね。
また、明日の朝、持ってくるわ」
「あぁ、
これで、全力でうごけれる。
朝まで、周りの敵を狩ってこよう」
「ゴブ八さんは、寝なくていいの?」
「我に睡眠は必要ない」
ゴブ八は、立ち上がりぺこりと頭を下げると、森の中にはいっていった。そのすぐ後には、魔物の絶叫が聞こえてきた。
「さぁ、食べ終わったら、
町の中を見ましょう。
運がよかったら、武器屋でアンナの武器の代わりが手にはいるかもしれないしね」
「やっぱり、リイナ姉さんは、優しいね」
「私だって、そのくらいは考えてたよ」
「ほんとに~?」
二人が楽し気に話していることでようやく肩の荷がおりたリイナは、明日から、ゴブ八がきっと助けてくれることで旅の成功を確信し、ヒビキたちが無事でいるか、ほんの少しだけ気になった。ゴブ八の待ち合わせ場所をつげていなかったことに気づくと、森に向かって次の村のゲートであることを告げ、「わかった」と風の声に乗って聞こえたような気がした。




