第432話 間話 乙女3人旅 0日目 ~アドアが必要なのは、こういう時のため?
ビージアンの村にたどり着いた3人だったが、ギルド職員以外は、みんなが恐怖の表情で見ていた。それは、村に入る直前に海から襲い掛かってきた巨大タコの魔物が居た。何度も村に襲いにきていたが入れず諦めて沖から睨んでいたタコを、リイナ達がみつけて、魔法の風で空中に持ち上げると火炎玉一発で焼きタコにして討伐したことで、魔物よりも恐怖の対象となっていた。
それでも、ギルドマスターは、心を落ち着かせながら、3人に近寄り話しかけざるを得なかった。
「物資の輸送ありがとうございます。
それに、タ・タコの討伐も。
みんなきょ、恐怖怯えておりました」
「ここら辺の魔物は、たぶん全て退治したと思うわ」
「多分じゃ……
心配ですね……」
リイナは、発言をきくとそうかもしれないと思い探すことにした。
「そう?わかったわ、
ちょっと、待ってて、
探知!」
モンテバから、ビージアンまでのエリアを、巨大な敵を探索しある一定以上の大きさの魔物は引っかからなかった。かなりの大きさの範囲で、普通の魔術師であれば、そこまでの範囲を探索することができないのだが、最上級の魔導士であるリイナのみにしかできない芸当だった。
「いなそうね」
「もしかして、ここまでのエリア、全部を調べたんですが?
そんなことが、できるわけ……」
ギルドマスターが否定的な顔をすると、直ぐにアンドレアは意図を理解し一歩前にでて、凛とした態度で対峙した。
「何をいってるんですか。
村に入る際の魔物もみたでしょう。
初級魔法ですら、リイナ様に掛かれば必殺になるのです」
断固たる口調で発言をすると、彼女よりも年のうえのギルドマスターや職員も、直ぐに頭を垂れた。
「も、もうしわけございませんでした。
おっしゃる通りでございます。
我々では、一体も倒すことはできませんでした。
報酬と呼ぶには、小さすぎますが、今晩の宿も食事も、この村で最上級のものを準備しておりますので、
ご自由にお使いください」
「ええ、心遣い、ありがとうございます。
あとは、我々だけで充分ですので、みなさんお下がりいただき、
明日以降に、民に物資の配布や安心である旨の通知の方法をご検討ください」
「はい、誠にありがとうございました。
お疑いをかけ、すみませんでした」
全員が居なくなるのを見届けると、大きなため息をついたアンドレアの後ろから、様子を窺っていた二人が声を掛けた。
「やっぱり、アドアは、こういうのが得意ね。
私や、姉さんじゃ、あんな上手に誘導できないよ」
「そうよね。
ヒビキがいれば、任せちゃうし、人前での発言はちょっと苦手だわ」
「もう、二人がそうなんだから、
私がやらなきゃいけなくなるんですよ!」
「まだ、口調が戻ってないよ
ははは」
三人は、お互い顔を見合わせ笑い合うと勧められた店での最高の海鮮料理に舌鼓をうち、ガールズトークで盛り上がりながら、村一番のいい部屋で新しい日を迎えた。




