第428話 別れの話を聞いてみよう
「そうか、そもそも、体がサルのイノさんじゃなくて寅のトノさんのだったん。
それに、山から落とされたときに、空中で制御されたときの羽がこうもりだったっけ」
「そうね。
そういえば、ヒビキ君のいうとおりだわ」
「それにしても、山から落とされるとか、相変わらず空と相性が悪いわね」
リイナが話している中、顎を手で擦りながら、ぼそっとエドワードが呟いた。
「拙者は、知ってたでござるよ。
聞いてたでござるから」
僕とナナさんが、耳に聞こえるとエドワードを冷たい目で見ていた。直ぐに二人の視線から、事態を察し、視線をそらした。
だがその先では、ホイさんが光の粒子に変わって行った。
「お、おじいしゃまが……
うわぁ~ん」
サルの頭の上で、シルキィが大粒の涙を流していくと、どんどんと光へとかわっていき、既に姿は見えず光しか入ってこなかった。
「どうやら、お別れのようだね」
僕の一言が終わると、全員が悲しみにつつまれていき、全員が視線を下におろした。
そして、光は全て霧散していったあと、声が聞こえてきた。
「どうやら、まだ消滅せんかったようじゃな」
みんなが慌てて声の聞こえた先を見ると、消えた光の後には、前よりも元気なホイさんへと切り替わっていた。
「元気になってませんか?
てか、若返ってません?」
「そうじゃな、
なんでじゃろうな。
気にするでないぞ。
ははは、ほれ!
ご褒美じゃ」
杖をぼくらに向けるとシルキィを除く全員の右腕が光輝いた。僕は、右腕をみると最後のマークとなるクローバーが浮かび上がってきた。そんな様子をシルキィは初めて見ていたため、目を見開いてのぞき込んでいた。
「すごいでしゅね。
全部がそろってるなんて、初めてでしゅ」
「流石、ヒビキね。
全員の魔王に認められるなんてね」
「これで、どんな望みも叶えられるんでしょ。
ヒビキ兄さん、何を望むの?」
「特にないなぁ」
「そうじゃな。
考えとくとよいぞ。
行きたくなったら、シューリン様と会うには、大陸からつながってるは橋でいけるぞい。
印が揃ってることで、その橋を渡ることができるぞい」
「そうなんですね。
使うことがあるのかなぁ」
僕は、ふと考えたが、特にこれといった願いを思い浮かべることができなかった。何か大事な何かがあった気がするが、全く思い出すことはできなかった。
エドワードは、真面目な顔をすると、絞り出すように話始めた。
「ヒビキ殿、
大陸の魔物も片付いたようでござるから、
拙者は、ベラセモタ大陸に戻ってモーリス王に事の顛末を報告にいくでござる」
「まだ、ゆっくりしてれば、いいじゃないか。
明日朝でも、いいんじゃないの?」
「きっと、今がきりがいいでござる。
明日になったら、別れが辛くなるでござるから
イノ殿、モンザ殿に学んだでござる」
「そう。
寂しくなるね……」
エドワードと硬い握手をすると、思いつめた表情で、ナナさんの前に歩き、片膝を立てた。
その様子に全員が固唾をのみ、二人の女の子は両手を組んで前のめりで見つめていた。
それは、厳かなシーンに見え、とてもとても大事なことがこれから始めるのだと期待せずには入れれなかった。




