第427話 レンジャーの惨状を見つめてみよう
できないといわれた願いをお願いすることにした。
「僕の願いは一つ、イノさん達を元の姿に戻してほしいんです。
過去に戻すではなく……」
僕の発言を聞くとホイさんは、満足げに口を開いた。
「そうじゃろう。
そうじゃろう。
おぬしの話を、アメリアから、よう聞いとったからな。
きっと、そういう願いをするとお持っとった。
なんなら、孫娘と魔王をあげてもよいのじゃぞ」
僕が断るより先に、リイナが一歩前に出た。
「それは、断るわ」
「なんで、リイナが断るんだよ」
「当然でしょ。
ヒビキは、胸フェチなんだから、
アドアと同一の彼女じゃ満足できないでしょ」
「リイナねぇ、ひどい。
そんなに変わんなないのに!」
アドアが、リイナに詰め寄ってるなか、
「そ、そういう断り方は、ないんじゃないかな」
僕が話していると、シルキィが眉を寄せて文句をいいだした。
「わたしも、もっと、大人になれば、大きくなるでしゅよ」
「むりじゃぞ、
あきらめるのじゃぞ。
わしらの種族じゃ、これ以上成長しないのじゃ」
身内からのとどめの一撃で、その場に崩れ落ちたシルキィにアドアが、涙を流しながら、肩に手をかけていた。
「諦めたら、そこで試合終了だっていってたわ。
まだ、何か手があるかもしれないわ。
二人で探しましょう!」
二人は膝立ちで、間もなく沈みそうな夕日に指さして気持ちを一つにしている中、ホイさんは、イノさん達を呼び寄せた。
「よかったのじゃな。
お前たちの願いは、これで、叶うのじゃ。
大陸を救った勇者の願いじゃ断ることはできんからな」
服から一本のスティックをだすと、呪文を唱え始めた。
長々と唱えた魔法を全て終え杖を頭にあげると、先端から温かみのある光がイノさんたちに降り注いだ。
「それ、元の形に戻るのじゃ!!」
大きな一つの獣だったが、一つ、また一つと小さな光へと分裂していった。その光は大小5つに分かれていった。
「ねぇ、ヒビキ。
三つに分かれるんじゃないの?
わたしには、5つに見えるわ」
「そうね、私にも、5つに見えるわ」
「だよね。
おかしいなぁ」
僕らは、想定していなかった分裂数とこの後の展開が読めず、見守るしかなかった。
そして光り輝きが終わり、徐々に形が整っていくと、想定してた三つの獣が挨拶をしてきた。
「白うさぎのナノ!」
「青蛇のダノ!」
「赤猿のイノ!」
そして、見覚えのなかった虎と蝙蝠が現れた。
「黄虎のトノ!」
「黒蝙蝠のコノ!」
「「「「「5匹揃って」」」」」
「ケノレンジャー!」
「「「「「参上!!」」」」」
彼らは、一番下に虎、その上に猿、ウサギと続き、最後に蝙蝠が乗っていた。蛇は全体に巻き付いていた。
全員が固まっている中、一人の小柄な少女だけが、喜んでいた。
「しゅごいでしゅ、
わたしもまじりたいでしゅ」
シルキィは、強引に猿とウサギの間に顔をつっこむと
「緑髪シルキィのシノ!
六人揃って、ケノレンジャー!」
「お前は、シノじゃなくて、シルキィだぞ」
冷静な突っ込みをしているアメリアを見ながら、僕は、残りの二匹について思い出していた。




