第426話 ホイ魔王の身上を聞いてみよう
魔王のおじいちゃまは様子を察し、話を変えることにしたようだ。
「まぁ、直ぐにしなくても、時がきてしたくなったらで、いいじゃろう。
ふぉっふぉっふぉ」
「そうよね。
それがいわ。
別に急ぐ必要ないんでしょ」
「うんだお」
「ソウダナ」
ナナさんとイノさん達は、事を先延ばしにすることで、一旦は結論をだしたことにしたいようだった。
その返答に満足げな魔王が口を開き、さらに別の話題へと移って行った。
「そうじゃ、そうじゃ。
大陸の掃除ありがとじゃぞ。
何か、願いを叶えてさしあげるじゃぞ」
「それは、どんな願いでもですか?」
「そうじゃ、そうじゃ。
じゃが、全員でひとつじゃぞ。
申し訳ないんじゃが、全員分を叶えるほど魔力がないんじゃ」
悲し気に話すおじいちゃまの横で、シルキィが寂しそうに口を開いた。
「おじいしゃまが、凄い願いを叶えると魔力が枯渇して、
いなくなってしやまうんじゃないかと不安なのぉ」
「そんなことがあるんですか?」
「まぁのぉ。
ありえるぞい。
一回引退しとるしのぉ」
「そうなんですか?」
僕が不思議そうに尋ねると、ホイ魔王の隣にいたアメリアが代わりに答えてくれた。
「そうなんだ。
30年前にシルキィの親、ホイさんの息子が魔王を引きついだんだ。
そして、その10年後に、彼女 シルキィが生まれたんだが、一年もしないうちに、冒険者の挑戦を受けて、討伐されたらしいんだ」
「それは、寂しいわね」
言いにくそうな魔王とシルキィに変わって以前に話を聞いていたアメリアが説明してくれたんだと思い、以前のマイペースな彼女とは違った一面が見えた気がした。
「しょうがないの。
しょれが、魔王の宿命しゃのだから」
「で、まだ子供のシルキィには早いってことで、
また、ホイさんが、復帰したのだそうだ」
「そうなんだね、じゃ、私の胸を大きくしてもらうのは、だめそう」
「私の剣を元に戻してもらうのは……
新しい剣を、ヒビキ兄さんからもらったからいいか」
アンナが、真っ二つに折れた剣をホイさんの前に出すと、手を一振りすることで、光り輝き、一瞬で元の剣に戻った。
「これは、サービスじゃ」
「あーーー!
アンナだけずっこ」
「嬢ちゃんも、体形を先にも昔にも帰れるがどうするじゃね。
……その様子じゃ、
増える余地も減る余地もなさそうじゃな」
ホイが言うように、まっ平の胸が数年もどろうが、お腹周り以外は減りも増えもしなさそうだった。一瞬怒りで切れそうになっていたが、僕が見ているのが判ると火に油を注いだようだった。
「ヒビキさん、
みないでもらえないかな!!」
「ごめん。
リイナは何かある?」
「わたしは、ヒビキにまかせるわ」
「私もエドも、ヒビキ君に任せるわ。
まぁ、大体どんな願いをいうか判るけどね、
ねー、リィちゃん」
「ですね、ナナねぇ」
「拙者は、まったく判らないでござるが、
願いは自分で叶えるから、ヒビキ殿に任せるでござるよ」
僕は、みんなの信頼をたる願いとなるんだろうかと不安に思いながらも、一つの願いだけが頭に浮かび、魔王に叶えてもらうことにした。




