第417話 虹色カマキリと戦ってみよう
彼女が、一旦立ち止まり、深呼吸し呼吸を整えてると再度落ち着きを取り戻したようで、ゆっくりとこちらに向けて歩き出した。どうやら、知り合いを見つけて喜んでいるような様子だった。
リイナは、僕の横に立つと、不思議そうな表情を浮かべた。
「あれ?
ヒビキ。
知合いなの?」」
「いや、あの時水上都市の時しか知らないし
一方的にしかしらないはずなんだけど……」
だいぶ、体力がもどったようで、手を振りながら小走りでこちらに走ってきた。
「カ、カミキく~ん、ぐふっ」
だが、彼女はあと少しっというところで、お腹から鎌のようなものがでてくると、直ぐに光の粒子へと変わって行った。
直後、ゴブ八がととどろくほどの大きな声で注意が飛んだ。
「魔物がたくさん、囲んでるぞ」
「奥に、進化した魔物がせまってるしゅよ」
空中に血が付いた鎌が浮いており、他は何も見えなかった。だが、鎌だけが、ゆっくりとこちらに近づいて来ていた。
僕らは、何も近づいている様子が見えないまま、海沿いまで、じりじりと下がっていき、最後は、さがるところがなくなった。
「ヒビキ君、
何が起きてるの?」
「どうして彼女は死んだでござるか?」
「わ。わからないよ」
僕は少し考え分析すると、一つの魔法を唱えることにした。
僕は、自分の前方に雲をイメージすると、この前放ったばかりの魔法を唱え始めた。
「雨雲」
前方に雲が現れると黒い雨雲へと変わっていき、徐々に小さな雨が降ってきた。小さな雨が降り注いだことで、何もいなかったように見えていた空間に、カマキリのシルエットが現れてきた。
「あれは、虹色カマキリでしゅ。
全身を周りの景色と同化するでしゅ」
リイナは、アンナを片手で遮ると、前方を見ながら後ろへ下がらせた。
「アンナ
わたしの後ろに隠れてなさい」
「リ、リイナ
全域に雨雲を頼むよ、僕じゃ規模が小さすぎる」
「わかったわ、
わたしに任せといて」
彼女は、杖を両手で握ると真上に向かってつきあげた。
「雨雲!!」
彼女の杖から大量の雲が真上にあがっていき、森を含むこの一面何百メートルにわたってに大きな雨雲が覆うと、僕の小雨とは異なり、大粒の雨がバケツをひっくり返したように、降り注いだ。
彼女の魔法のおかげで、全てのカマキリが浮かび上がり、100匹以上のカマキリがこちらに向けてゆっくりと進んできていた。
「みんな、リイナを守りながら、戦ってほしい。
リイナの魔法が途切れたら、こちらは視認できなくなる!
彼女がこの戦いの生命線だ!!」
「わかったわ」
ナナさんの返事を皮切りに、自然とリイナの周りに円陣が組まれてった。真後ろには、海があり、下がることはできなかったが、逆にカマキリたちが、海から襲ってくることはなさそうだった。
「ヒビキ兄さん、
私用の武器持ってない?
旅の道中で折れちゃって」
「あるよ」
僕は、アンナ用に買ってあったレイピアを出すと、アンナに手渡した。
「さすが、ヒビキ兄さん。
頼りになるわ」
彼女が喜んでいる中、隣にいたアメリアが口を開いた。
「それは、私が妹に作ってあげたレイピアだな」
「今朝、出てきた村で売られていたよ」
「私が居ない間に、里の誰かが売ったんだな。
誰が売ったか想像はつくがな」
「無駄口はあとだ。
くるぞ!」
ゴブ八の声で二人は我に返ると、正面から襲ってくる二匹のカマキリを撃退した。
「「トワイラルフラワー!」」
対峙するカマキリに何度もの突きをいれるといくつもの穴が開き、直ぐに光の粒子へと変わって行った。
「その技は……」
アメリアとアンナが見つめ合う中、他のカマキリたちが、対峙を皮切りに雪崩のように襲ってきた。
「どか~ん、一発やりたいにも
雨では火が消えるでござる。
十字斬!」
エドワードは、上段から襲い掛かってくる鎌を右手の剣で受けると左手の剣で胴体を撫で斬りにし、カマキリは真っ二つになると光の粒子へと変わって行った。
そんな中、ゴブ八は、幾つもの切り傷が体中に付いていた。真ん中で、体制を支えてくれていた彼は、巨体のせいでよけきれるほどの隙間がなく、攻撃を受けてからの反撃で敵を倒していた。人であれば、致命傷になりそうな鎌の攻撃も彼の肌の強さにより、薄皮のみ斬られ筋肉を切断まではいたってなかった。
そんな様子をみたアドアが全体に回復魔法を唱えた。
「領域回復」
緑色の光が全員に降り注ぐと、全ての傷が回復していった。




