第416話 ゴブ八に再会してみよう
僕が絶望をしていると、ナナさんが目の前を横切り、怒り狂ったリイナを連れて行った。
「リィちゃん、
ちょっとこっちにいらっしゃい」
「ナナねぇ
今は、ナナねぇの話を聞いてる場合じゃ…」
リイナは、全力でその場にいようとしたが、力はナナさんのほうが強かったので、アドアやアンナも連れて、後ろに下がっていった。たまに聞こえる怒声か、幾人かから、聞こえたが、気もそぞろな僕には、誰かまで判断できなかった。
何度かの不服そうな声が聞こえた後、どうやら一応は納得したようで、怒りの表情は少し和らいでこちらに戻ってきた。
「で、いつまで、手を握ってるの、ヒビキ」
僕は、言われてようやく、まだ、アメリアの手を握っていることを理解しすぐに手を離した。
「まだ、握ってていいのだぞ」
「うん、ありがとう。
もう大丈夫だよ」
僕は、どうにか話題を変えたいと思い、目の前の大きな魔物について聞くことにした。
その魔物は、先ほどいたオーガのように筋骨隆々だが、オーガとは大きくことなり、腕が四本あり上半身は更に発達した筋肉が付いていた。
「ねぇ、リイナ、
この魔物は、安全なの?」
「我か、
我は、ゴブリンのゴブ八というものだ」
あまりにもゴブリン要素がなくて疑ったのだが、彼が放った名前に聞き覚えがあった。
「え、
ゴブ八って、あのマイミさんとマホちゃんと一緒にいたゴブリンの名前じゃないの?」
「そうよ、
よく覚えてたわね、ヒビキ。
彼の足に桜貝のネックレスをつけてるわ」
リイナの発言に見てみると確かに彼は、マホが上げたネックレスを首に付けられなくなったものを足に付けていた。
「確かに。あの時のネックレスだな」
アメリアも同じ意見に思えたようだった。
「まぁ、どうやら、悪い魔物じゃないようでしゅね」
「そうだ。
我は、人間の味方だ」
「で、どうして、一緒にいるの?」
「わたしたちが、ゴーレムに苦戦してるとこで、彼に助けてもらったのよ」
「へぇ
ゴブ八は、すごいのね」
「そうでござるな。
その体躯だと、素手でござろう。
モンザ殿と一緒でござるな」
「モンザが誰かは、知らないけど、ゴブ八が自分を進化させてくれた冒険者を知ってるっていうから、付いて来てもらってるのよ」
「そうなんだ。
で、見つかったの?」
「ええ、さっき。
あなたたちが、来る前に発見したんだけど、森の中ににげられちゃった。
で、何者かが空からくるってゴブ八がいうから、私たちは、追いかけるのをいったんやめて、
ここで待ってたのよ」
「そうなんですよ、待ってたら、ヒビキさんだったんですよ。
ねぇ~」
「ねぇ~」
アドアとアンナが楽し気に話している中で、森のほうを指さしていた。
「む、
誰かが、走ってくるぞ」
ゴブ八がゆっくりとした発言で、全員が森を見ていると、藪が揺れ一人の女性冒険者が、転がりながら現れた。
「だ、だれか、たすけて!
な、仲間が何者かに、ころされたの」
僕は、そのシチュエーションと女性冒険者に見覚えがあった。それは、水上都市で僕とぶつかりバジリスクがいると告げた女性だった。
「り、リイナ。
あの女性冒険者って」
「水上都市でぶつかった女の子じゃない」
「知り合いなのか。
彼女が我を、進化させてくれた人だ。
目つきの悪い男の冒険者は死んだようだな」
僕らを見つけて、安堵したのだか、直ぐに驚愕の表情をすると僕のほうに向かってきた。まだ、少し僕らのところに来るまでは、十数メートルほどの距離があった。
「か、かみきくん、
どうして、ここに。
そ、それよりも助けて」
僕には、水上都市でリイナの姿であっただけで、彼女が僕を知るなんてまるで見覚えがなかった。




