第411話 二匹の魔物をみてみよう
二つの陽炎のように揺らめく影を警戒せずに3人で、声を殺しながら、ゆっくりと近づいた。
「あれは、何かしら」
「なんか、戦ってるようでござるな。
金属がぶつかる音がするでござるぞ」
「急いで向かってみよう」
砂で足を取られる中、急いで音がする二つの影に向かていった。二つの影のうち一つは、巨大なトロールで、ミノタウロスかと思うほどの筋骨隆々とした体形をしており、体の一部に、邪魔にならないような見事な防具が装着されていた。相対する相手は、人間かと思っていたが、僕らの倍近いほどの巨体のオーガで、相対するトロールが巨大すぎるため小さくみえただけだった。こちらも、今までで見たオーガの中で、一番強そうに思えた。
僕らは、二つの魔物を遠目から隠れる場所がまるでないように見えたが、小さな岩を発見しその後ろに隠れることにした。
「人間じゃなかったですね」
「そうね、かなりの強さよ」
「どうするでござる。
どっかーんとやっつけるでござるか?」
「避けられたり、打ち返される可能性がありそうだよ」
「残念でござる」
二匹の魔物は、僕らの気づいたようで一度こちらを見たが、そのまま、また、二人で戦いに入って行った。
「やばいわね、あれは。
まったく動きが見えないわ。
エド、みえる?」
「拙者は、見えるでござるよ」
「僕は、動いてないようにしか見えないけど」
僕には、二つの魔物が対峙したままにらみ合ってるように見えたが、どうやら、ナナさんの話では、武器で攻撃しあってるようだ。よく目をこらしてみると、時折トロールに傷がついたかと思うと一瞬で傷が塞がり治って行った。
「それにしても、オーガはよく動くでござる。
今まで見た魔物の中でも、一番早いでござるな。
かろうじてトロールも付いて行ってるでござるが、攻撃は一度もあたってないでござる」
「う~ん、私には、残像しかみえないわね」
「僕には、なんにも動いていないようにしか、見えないですよ」
「これは、まずいわね。
ヒビキ君が動きについていけないないんじゃ。
打つ手がないのかもしれないわね」
「拙者だけで、オーガだけなら、防具を全部抜けば、いい勝負することはできるでござる」
「そんな、防具なしで戦わせられないわよ。
それに、私たちを守りながらになるだろうし、危険しかないわ」
純粋な攻撃力の前に、まったく打つ手もなく、暑い日差しで考えもまとまらないまま一刻ほどたったが、事態は何も変わってなかった。
「今更ですが、これ、どのくらい戦ってると思います?」
「確かに、二匹とも、疲れる感じはうけないわね。
エド、わかる?」
「わからないでござるな。
よく見ると、足元にいくつもの宝玉が転がってるところを見ると……
数日かもしれないでござるな」
エドワードのいうとおり、二人の周りには百をこえる魔玉が転がっており、しばらく魔物をみていないことを考えると、二人で戦いながら向かってきた魔物を退治したんだろう。それを考えると、一日二日といった時間ではないと思われた。
「このまま、待ってても決着がつかなそうね。
かといって、私たちだけじゃ、倒せそうもないし、
どうしよう、ヒビキ君?」
「迂回ですかね。
すこしだけ、回り道をして、砂漠から抜けていきますか?
町についたら、戻ってきて戦いますかね。
リイナなら何とかできるかもしれないですし」
「それしかないわよね」
「あの二匹を残すのはなんか悔しいでござるな」
「脅威になるけど、無理して怪我してもしてもよくないしね」
「判ったでござる
あ、なんか別のなにかが来たような気がするでござるよ」
エドワードが、指さした先には、二匹の魔物が戦ってる奥のほうで、空中に大きな黒い影がこちらに向けてやってきていた。
「よく見えないわね。
状況が、悪化したら、全力で村まで戻る必要があるかもしれないわ」
「そうですね。
何時でも、どうとなるように、身がまえててください!」
大きな黒い影は、空中から降りると、直ぐに弓を構え、長身のシルエットには不愛想な大きな弓を引き絞るギリギリ、ミシミシといった音が聞こえてきた。
「黒い滅殺矢!!!」
僕は、懐かしい彼女の声を聴くと結果を見ないまま、二匹の魔物へと近づいて行った。




